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春の夜の嵐と稚鮎

朝起きた時、昼食を取る時、仕事の休憩時間…いや、仕事中にも、何度も何度も風速と雨雲レーダーを確かめる。
 
"稚鮎の便りを聞きたい"とこの河川中流域に通い続け、もうひと月が経過した。

潮回りも良く、思い描く降雨量という条件もクリアするが、気にかかる要因がひとつある。
 
"最大瞬間風速は10メートル超えであろう風の存在"
 
人々が家の窓をピシャリと閉め静かに時を過ごす春の夜の嵐に、横殴りの雨が吹き荒れるフィールドに立ち続ける。

過去の実績からくる推測と、期待にも似た僅かな確信を持って。
外灯が作り出す視界の僅か外でエラ洗いを魅せた鱸は、忘れられない感触のみを残し去っていった。

もう一度やり直せたら…珍しくネガティブな思考がよぎる。
 
またこの鱸を掛けれるのなら、それは今年の春じゃなくてまた来年の春で良い。
 
スロウに刻むメトロノームはフィールドの季節の進行を横目に、春の夜の嵐の三日間を回顧する。
 
 
■ 春の夜の嵐 一日目 ~執念の一匹~

南東よりの風6~7メートル。
車から降りてその風に身を打たせてみると、どう考えてももっと吹いているだろうと思う程のバッドコンディション。
 
それでもフィールドに立つと決めていた。例えファーストキャストで釣りにならないとわかっていたとしても、だ。
そそくさと支度を整え橋の下に入ると、あいにく雨が降り始め次第に強さを増していった。
 
思った以上に風は強く、一投目にチョイスしたスウィングウォブラー85Sは大きくはらんだPEラインの軌道をなぞり、水面を一度も潜ることなく滑走した。
想定外の中の想定内とでも言おうか。何も焦ることはない。

すぐに浮かんだ次の一手を打つために、ルアーを手繰り寄せようとロッドを立てるが、肝心のルアーは手の届かない目線の先から一向にこっちに寄ろうとしない。
「さすがに風が強すぎるだろう…」思わず苦笑いしながら、風に煽られるルアーに勢いをつけて手繰り寄せた。
 
満潮からの下げの流れの向きに対して、今日の南東の風は真逆となる。
水面の浮遊物は上流へと逆流を見せるが、ルアーを沈めてティップを水面ギリギリに持ってくれば僅かだがちゃんと下流へ流れていることがわかる。
 
時折吹く突風で、一度水面についておきながらなお吹きあがるPEライン。
その軌道は、流れに逆らい上流へとルアーを遡上させるほど。
次第に強さを増した雨は、とうとう手に負えない程の雨量をまとってフィールドを叩いた。

外灯に照らされた雨粒はほぼ真横に吹き、橋下から上流側へ数メートル出た立ち位置にも関わらず身体が雨に濡れることはない。
それでも集中力が途切れることがなかったのは、このひと月で去年の鱸の年間釣獲数の約半数を得ることができ、この明暗に鱸が着くピンをイメージ出来ていたからだろう。
 
ただこの状況下でうまくその狙いにアジャスト出来たかと言われれば、それはとても厳しいものだったとしか言いようがない。
 
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"明確なバイトはあったように思うがスレ掛かりのようになってしまったセイゴ(ヒットルアー:フィンバックミノー75Sライトモデル)"
 
実釣開始序盤で釣れた一匹のセイゴといくつかのバイトを持って、春の夜の嵐一日目の釣りを終えた。

 

■ 春の夜の嵐 二日目 ~唸るドラグ~

北西の風、6~7メートル。
一日目と打って変わって真逆の風が、二日目のフィールドに吹き荒れた。

昨夜の雨が少し効いたようで濁りが入り、風さえ除けばグッドコンディションに思える。
下げの流れと全く同じ方向に吹く風もあいまって、水面の浮遊物は急ぎ足で下流へと消えてゆく。
良い流れかな?と思いつつも、一投目は冷静に狙いのピンをワザと大きく外した上流側へ。
 
「やっぱりそうか」
 
早く見える流れは風の影響を受けた水面のみ。水中はいつも通りの緩い流れが、どっしりと腰を据えて広がっている。
ここから時合いの終わりまで、呼吸を繰り返すように何度か良い流れが生まれる。
ひと月通い込んだ経験というデータが、その時を待てと自分自身に訴えかける。
 
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"この日一匹目のフッコサイズは、安定のクレイジーツイスター80Sトワイライト"
 
流れが強くなるタイミングを見逃さず護岸よりの明暗で出た一匹目に、この強風の中キャッチできたことに少し安堵する。

いつも通りの釣りをしようものなら風ではらんだPEラインが簡単に橋脚に触れてしまうから、それならと手前の明暗を丁寧に攻めていたらバシュっとバイトが出た。
 
寄せてくる段階では感じなかったがランディング直前でフッコクラスであることが分かり、ここのアベレージからするとまぁまぁ良いサイズに嬉しくなる。
ただ、この時点でいつもと少し違うんじゃないかと疑問に思っておけば…
 
トワイライトで釣れたから、今度は稚アユにカラーチェンジ。
ピリピリと引いてきたクレイジーツイスターが明暗の境に差し掛かった時、明確ではありながら重量の小さいバイトが手元に伝わってきた。
 
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"カラーによるバイトの差を感じられずにいられなかった稚鮎カラーで、遂に念願のキャッチ"
 
稚鮎カラーでのキャッチは、ひとりガッツポーズをする程の嬉しさがあった。

そして一番美味しいと思っている明暗の境のピン、僅かに流しながら引いてきたクレイジーツイスターにこの日のハイライトとなる明確なバイトが襲った。
 
このフィールドコンディションの中、不用意にラインを出すことはしたくない。ロッドは寝かしたまま立ち位置を上流側へ移す。

ドラグはまだ緩めずリールのハンドルをグリグリと巻くと、思いのほか自分の立つ上流側へと大人しく水中を移動してくる。
大きくはないのか?と思うが、アワセ直後のエラ洗いがないことが気に掛かる。
 
目の前に差し掛かるタイミング、突っ込みでフックアウトを防ぐためにドラグを僅かに緩める。
姿が見える…と思ったその刹那、目の前を通過すると一気に上流側へ走り始めた。

ファイト中に把握したサイズ感とは相反する引きに呆気にとられ、そんな自分のことなどお構いなしに唸るドラグ!
 
"ドラグが響くんじゃない、唸るんだ"
 
ロッドの曲がりとドラグの唸りを、一瞬楽しむ間があった。

だが次に魚が走るのをやめた時、「ブツッ」とフックが外れるような感触が伝わる。
その感触が合図だったかのように、止まったと思ったそいつは間髪入れずに再び走り出す。
 
嫌な感触が残る中、そいつはお構いなしにグングンと力強く走る。
ティップから伸びるラインの角度を見て、もうそろそろ来そう…と感じた次の瞬間、橋の外灯が照らす明かりの輪郭の僅かに外で、ゴボゴボと重量感のある初めてのエラ洗い。
暗闇の中で僅かに白く浮かび上がる飛沫に必死で目を凝らしたつもりだが、残された記憶に魚体は写っていなかった。

最後は「ブツッ!」という大きく確かな感触が手に残り、強風吹き荒れるフィールドに立っていることを思い出す。
回収したクレイジーツイスター80S稚アユのフックは伸びてはいない。
ラインを手で引っ張り出してみると、いつもより少しドラグが強いままだった。
 
 
■ 春の夜の嵐 三日目 ~ついに届いた稚鮎の便り~

北西の風3~4メートル。
実際のフィールドで感じる風はこれよりもさらに弱い印象で、今までの風からすればそよ風に等しいコンディションだった。

初日に降った雨の影響は少なく、潮位による時合いだけに期待するといった状況。
ただこの日最も期待していたのは、魚を釣ることでもなく穏やかになる風でもなかった。
 
"一か月待ち続けた稚鮎の便りが、この嵐を皮切りにやってくるんじゃないか"ということ。
 
この日、あらゆる手を尽くしたが鱸をキャッチすることが出来ずに終わった。
過去を振り返っても仕方がないが、前日のフックアウトの感触がふとした瞬間に思い起こされ、その都度「あれはバラしちゃいけない魚だったんだ」と呪文のように何度も繰り返す自分がいる。
 
ひと月通う中で自然と身についたメトロノームは、リズムを刻む速度を静かに落としていったような気がした。


三日間続いた春の夜の嵐。
鹿児島だけでなく、日本全国を巻き込んだ春の嵐。
 
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橋下の暗がり、護岸よりの水面に波紋が広がる。
近付いてその暗闇の中必死で目を凝らすが、姿は確認できない。
 
少し迷ったが、他にアングラーはいないしこの後も来るとは思えない。
この場所が潰れるかもしれないが、思い切ってライトを点灯させた。
 
光に驚きキラキラと逃げる魚。サイズは4センチ~5センチ程か。
その泳ぎは目視で正確には捉えることすらさせてもらえない素早さを纏い、小さいながら逞しさも感じる。
 
ノーフィッシュに終わった最終日、悔しいながらもやりきった三日間を振り返りながらの帰路は充実感に満たされていた。
通い始めて6年経つこの川のこのエリアに、今年もちゃんと"稚鮎の便りは届いた"のだから。
 
 
【タックル&ウェア】
[ロッド]ZENAQ PLAISIR ANSWER PA89 -Technical Surfer-
[リール]SHIMANO 18 STELLA 3000MHG
[メインライン]SUNLINE CAREER HIGH6 0.8号(12lb.class)
[リーダー]SUNLINE STATE CLUTCH SHOCK LEADER NYLON 16lb.
[キャップ]1989Luresフラットキャップ(OTTO)
[バッグ]SHIMANO XEFO・タフウエストバック
[ライフジャケット]DAIWA 膨張式ライフジャケット(腰巻きタイプ)
 
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