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▼ 【出張釣行旅】トカラ列島 中之島-後編- 〜魚の命を奪うラインブレイク〜
- ジャンル:釣行記
- (DAIWA -ダイワ-, HARBOR -港湾-, GT -ジャイアントトレバリー- etc., 10Parabellum -イチマル パラベラム-, Beams RIPLOUT 7.8ML, Cork -コルク-, ZILLION SVTW 1016SV-SH, Pazdesign -パズデザイン-, 離島出張釣行旅, Fishman -フィッシュマン-, Handmade Lure -ハンドメイドルアー-, SUNLINE -サンライン-, DAY -デイゲーム-, 13Monsterleg -イチサン モンスターレッグ-)
「ラインブレイク」
釣り人がそれに対峙した時、ふたつの人間に分かれると思う
ラインが切れるくらいの大物を掛けたぞ、と自慢気に思う人
己の未熟さのせいでラインブレイクしてしまった、と後悔の念に駆られる人
無論、僕は後者と思う質だが、それを評価するのは今後の技術向上への取り組みと実績を認められた時だけだと考える
ただひとつ確かなのは、口元にゴミを付け、取ることが出来ずにもがき苦しむその命は、もうこの海を泳いでいないかもしれない、という現実のみである
前編はこちら↓
【出張釣行旅】トカラ列島 中之島-前編- 〜初めてとなるトカラの海〜
トカラ列島中之島、2日目の朝。
朦朧とする意識の向こう側で鳴る携帯のアラームの音を完全に止めたのは、本当なら朝日と共にフィールドに立ち、朝マヅメはとうに終えているはずの時間だった。
前日の夜更かしが貴重な朝の釣りが出来るチャンスを失ってしまったことを後悔しつつも、民宿の女将さんの「朝食の時間ですよ」の一言で気持ちを切り替える。
食事を取りながらふと思うのは、トカラの自然を前にして、こうして食事が取れることや寝床があることがどれだけ幸せなことか、ということ。
同じ民宿に泊まった他の客が帰りのフェリーまでの時間を潰す為まったりしている中、急ぎ足で荷物をまとめる。
女将さんに感謝の気持ちを伝え宿を出ると、眼下に広がる昨日よりも少し穏やかになった海を見ながら借りている車で坂道を下った。
【まず向かったのは昨日ファーストバイトがあったフェリー乗り場周辺エリア】
少し波は落ち着いたものの相変わらず風は強い。
そして厄介なことに、昨日は背負えた風が今日は向かい風に変わっている。
フェリーが到着する予定時刻はam10:20頃。
限られた時間の中でストレスを感じる釣りは避けるべきと思い、昨日根魚の食い上げバイトがあった堤防へ移動することにしたが、そこでは反応は得られなかった。
【根魚が飛び出してきた岩は干潮前後ということもあり露出していた】
googleマップで航空写真を確認しつつ次打つべきポイントを模索するが…移動したところで時間だけが過ぎていくだろう。
移動で得るものは少ないだろうと判断したならばやる事はひとつ。
港内をランガンし、今後のことも踏まえて実際の目で潮の流れやストラクチャーを調査するのみ。
ワンキャスト毎に大きく移動し、良さげな根のストラクチャーがあるところのみ2〜3投し様子を伺う。
魚からの反応がなくとも次のストラクチャーは出るんじゃないか、という期待感でどんどんと先へ進んでいく。
【堤防と言えどロッドを置いて胸元から目線ほどある段差を乗り越えなければならない箇所もある】
ランガンし始めてからルアーはずっとハンドメイドルアーの"10Parabellum-イチマルパラベラム-"のチャートカラー。
昨日の根魚のバイトを得たのもこのルアーで、他のカラーで一通りチェックした後このカラーに戻すと、再びチェイスがあったりもした。
偶然かどうかはわからないが、反応を得たことは確かなのでこれで通すことにした。
足元のストラクチャーをジャークで探り反応がなければ、少し沖にキャストして再びジャークで探る。
時折タダ巻きも織り交ぜるがとにかくルアーを魚に気付かせることが先決と思い、ほとんど繰り返しジャークで探っていた。
足元まできっちりと泳がせたいところではあるが、7.8フィートのリプラウトでは長さが足りないと感じる程高さのある堤防で、ハンドメイドミノー10Parabellumが水面を滑り始めるかどうかといったギリギリのところ…
その時は唐突にやってきた。
足元のストラクチャーの切れ目から、一瞬でルアーに迫る"物体"が見えた。
反射的に左手で握っているロッドのバッド部分を右手でも支えたその刹那ーー。
言葉に言い表せない激しいバイトの衝撃音と共に、リプラウトはバッド部分からほぼ真下にぶち曲がり、根魚を意識してドラグはmaxまで締めきっていたジリオンのスプールから、信じられないスピードでPEラインが放出されていく。
次に聞こえたのはパーンという聞き慣れない大きな音だった。
リプラウトのガイドにラインは絡みつき、ジリオンのスプールはPEラインが食い込んでいた。
ラインブレイク。
たった数秒前に起こった出来事を思い出そうとするが、ワンシーンだけどうしてもボヤける。
ストラクチャーの切れ目を左から物凄いスピードで迫ってきた"そいつ"は、激しい衝撃音と共に足元のスリットに勢い良く走った。
その時見ていたはずのバイトシーンと魚体なのに、どうしてもこのシーンがボヤけてしまう。
想像も予想も幾分出来ていたのに、実際にその場面に対峙してみると、"チャンスがきた喜び"と同時に、"それを上回るような恐怖"も感じた。
魚に対してはじめて感じた恐怖感に、僕は堤防の上に座り込むとしばらくの間震えていた。
ラインブレイクの原因はその切断部から推測するに、PEラインとリーダーの結束部だと判断した。
シーバス釣りを始めて4〜5年経つが魚とのファイトでの結束部からのラインブレイクは一度もない。
特にベイトタックルに変えて2号前後のPEラインを使い始めてから、その気配すらも全く感じてなかった。
でもそれはただの過信ということであり、いくら悔やんでも取り返しのつかない「魚の口にルアーとラインを付けたままとなるラインブレイク」を引き起こしてしまった。
ルアーというゴミを口元から取ろうと、魚は岩に体を擦り付け傷付いていくかもしれない。
掛かり所が悪くダメージが蓄積し、そのまま死ぬかもしれない。
「ラインブレイクはその魚の死を意味する」
己の釣りの未熟さ故に"ルアーフィッシングという遊び"でひとつの命を奪ってしまったかもしれないと思うと、悔やんでも悔やみきれなかった。
このまま釣りをするか、ロッドを仕舞うか。
しばらくどうするか悩んだ末に、釣りを続行することに決めた。
残されたのはあと僅かな時間だが、もっとトカラの海を知りたい。
そしてもしもう一度チャンスがあるならば、今度は獲れるであろう策も浮かんだ。
本当に釣り人の我儘でしかないが、それを全力で試したい。
PEラインとリーダーの結束締め込み時には締めリングを使うが、締め込み前の編み込みで人差し指が切れた。
気持ちが先行してしまっているかのよう。
深呼吸をして冷静になるように自分に言い聞かす。
立ち位置を堤防の先端付近にとる。
足元のストラクチャーが先程よりも少ないエリア。
そして。もしチャンスがあるなら出来るだけ沖で掛けてダイレクトにラインに負荷が掛かるのを避け、魚の体力を少しでも沖で奪いたいところ。
反応のある10Parabellumをキャストしジャークで探ってくると、驚きの光景を目にする。
…10Parabellumのすぐ後ろを、2〜3匹のカスミアジがとんでもなく速いS字を描きながらチェイスしている!
魚の鼻っ面までルアーは来ているが、ピックアップ直前でUターンしていく。
明らかに見切っており、ルアーを馬鹿にするかのようにただ遊んでいるだけのようにも見えた。
だが追尾してくる魚体を見て、気持ちの面でもさらに気合いが入る。
次の一投もまた驚いた。
着水直後の巻き始めで、ガンッ!という衝撃だけが手元まで伝わった。
回収したルアーを見てみると、何か付いている。
【10Parabellumのボディに3つの穴が空き、その真ん中に何か刺さってる】
【青い棘のようなもの…魚の歯?】
一体この海は何が起こっているというのか。
その後足元を悠々と泳いでいく大きな影はどう見てもロウニンアジだし、カスミアジには相変わらずルアーを馬鹿にされながら遊ばれ続けた。
結局その後ヒットすることはなく、僕の初めてとなるトカラ釣行は終了となった。
トカラの海の大きさを知り、己の釣りの未熟さを知った今回の「トカラ列島中之島出張釣行旅」。
"ラインブレイク"というルアーマンとして恥ずべき事を隠さずこうしてログに書き留めたのは、ひとつの命を無駄に奪ってしまったかもしれない現実を受け止めると同時に、自分への戒めの為でもある。
こうして全ての人が読めるブログに書いておきながら、今後成長なくして同じ過ちを繰り返したのなら僕はそれまでの人間だったということ。
そうならない為に考えた結果として、この形を選んだ。
本当に自分勝手で我儘な考えであるが、もう一度チャンスがあるのなら次こそは獲りたい。
もう一度、いや何度でも挑戦したいと思える、初めて知ったトカラの海であった。
【tackle data】
Rod:Fishman Beams RIPLOUT 7.8ML
Reel:DAIWA ZILLION SVTW 1016SV-SHL
Line:SUNLINE CAREER HIGH6 1.7号(30lb.)
Leader:SUNLINE CUT IN SHOCK LEADER FLUOROCARBON 30lb.(#7)
Lure:10Parabellum,Cork,13Monsterleg …all handmade lures
【wear & tool data】
Cap:Pazdesign フラットバイザーIII
Life jacket:DAIWA ウエストタイプ ライフベスト
Camera:Nikon COOLPIX A900
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- 2018年4月29日
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