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▼ アメリカ遠征釣行 その8 夜ストライパー編 2015年9月25日
- ジャンル:日記/一般
- (area-釣行記-)
アメリカ遠征釣行 その8 夜ストライパー編 2015年9月24日
アメリカ遠征釣行 その0 準備編はこちらから
24日の深夜の23時。
俺と健さんは部屋の外に同時に出た。
午前中のブルーフィッシュ船の疲れはほとんどない。
15日にアメリカに来て以来、天候に恵まれる日が多かったが、この日はそれまでで一番の晴れた空が広がっていた。
頭上には満月まであと2日ほどだろうか、少しだけ欠けた上弦の月が浮かんでいる。
普段の満月以上に輝きながら俺たちを照らしてた。
そうか、日本なら今回の満月は十五夜だな。
そんなことを思いながら車を出発させる。
車は20分ほど走ったところで、ケープコッド北側の湾に注ぐ河川の河口に着いた。
暗闇の中で待っていたガイドはスティーブと名乗った。
今までのこちらの国のガイドはみんな太っ腹な感じの風貌をしていたが、彼は極端に痩せ、自然科学者みたいな、詩人のようなオーラを醸し出している。
声も小さく柔らかい感じで喋る人である。
彼はすでにカヤックを三艇、岸辺に降ろしていた。
カヤックで釣りをするの?
と聞くと、これで沖のサンドバーに一気に行った方が楽ちんらしい。
歩いて行くととても遠いよ、と。
カヤックを渡船に使う。
なんてワクワクするんだ。
行った先がどのような状況か色々と話を聞き、道具を絞りこんでタックルをロッドに積み込む。
ロッドは可能なら1本にしてくれ、とスティーブは言う。
狙う魚はストライパー。
昨日までは状況も良く、60cm前後を中心にたくさん釣れたらしい。
運が良ければ80cm以上も狙えると。
まさにシーバスフィッシングのような感じ(笑)
俺は悩んだけど、ダイワのシーバス用パックロッドを選んだ。
健さんがカヤックに先に乗り込んで出発する。
俺もカヤックに乗り込んで、2人の後を追う。
(そういう点で前の日にカヤックを借りて乗っておいて大正解だった。いきなり夜にカヤックで知らない海に漕ぎ出すのは怖いだろうなと)
この日は気持ちが悪い位、静かな夜だった。
風は全くの無風。
月明かりだけが静かに降り注ぐ。
鏡のようになった水面に月がそのままの形で映り込む。
その海面の月を揺らすのは俺たち三艇のカヤックの波紋のみ。
ギコギコとオールと艇体が擦れる音だけが、月明かりの下の静寂に響いている。
先頭を行くスティーブは何かを待っているのだろうか。
やけに静かにゆっくりと漕ぎ続けた。
たまに漕ぐのを止めて浮かんだままでいる。
スティーブが漕ぐのを止めると、やがて追いつく俺たちも漕ぐのを止める。
スティーブが静かに漕ぎ出せば、俺たちも静かに漕ぎ出す。
スティーブは停止している間は、耳を澄ましてストライパーの捕食音を探しているようであった。
もしかしたら、この神聖さすら感じさせるこの夜に、俺たち3人の波長が合うのを待っていたのかもしれない。
テンションが高かった俺も健さんもいつしか無口になり、3人で黙々と静かにオールを漕いだ。
俺は最後尾で眩しいほどの月を眺めながら漕いでいた。
カヤックが進めば、月は同じスピードでついてくる。
カヤックを止めれば、月も止まる。
月は俺たちの頭上で音も無く輝く。
この目で見える美しさに、カメラの性能が本当に追いついていかない。
それほど美しい。
人生で5本の指に入る美しい夜だった。
ふと気付いたのは、カヤックが流されるスピード。
いつのまにか、流れの中に入ったようだ。
漕いでもないのに、カヤックは確実に流れている。
漕いでもないのに、月が追いかけてくる。
俺は漕ぐのを止めて、ずっと追いかけてくる月を眺めていた。
耳に聞こえる音は皆無。
ふと思う。
俺たちはこの海のどこにいるんだろう?
iPhoneの地図マップが現在地を示す。
自然でできた河口のシャロー帯の、流心の右岸側を俺たちは流れているようだ。
最後のサンドバーに向かっているのだろう。
まさに、富津や盤津の釣り。
それはスズキと同じようにストライパーの聖地なのだろう。
干潟の大きさも三番瀬が2つくらいあるような大きさのイメージを持った。
そして正味40分ほどの静かな航海が終わり、大きく遅れた俺は月明かりの下のわずかなシルエットを追って、オールを漕いだ。
やがて2人の陰が大きくなったと思ったら、スティーブはもうカヤックを下りて干上がった馬の瀬の上に立っていた。
そこは三日月形に干上がっており、河口の最後のサンドバーであり、その馬の背が沖に向かって伸び続けていることは、海から来るわずかな波の盛り上がりで十分に理解できた。
流心の方に目をこらすとかなり速い流れが右から左へとかっ飛んでいる。
ライトを付けると、ベイトがかなりいる。
手で掬うと、イカナゴのような7cmほどの魚。
はやる気持ちを抑えながら、月明かりに照らされた流心に目を凝らして、流れの動きやシャローの形を頭に入れていく。
ガイドのスティーブが横で説明してくれているのだけど、彼の英語は本当にさっぱり分からない。
だけど、言葉は不要だった。
だって、俺はスズキ釣りのプロだから。
まだ人生で一度も釣ったことのないストライパーなのに、魚の位置やレンジ、バイトの出方まで全てが脳内にイメージできていた。
俺はBlooowin!80Sをスナップに結び、キャストを始めた。
投げてBlooowin!から伝わる情報で、さらに状況を把握していく。
日本で普段から俺がやっている釣りと全く一緒。
いや、この場所は日本のどこかの河口であり、俺は今シーバスを狙っているのだ、という錯覚を起こすほど俺にとっては馴染んでいる肌感覚が身を包んでいく。
ほどなく、Blooowin!80Sに最初のバイト。
が、乗らなかった。
少しラインを張りすぎていた。
次のキャスト、ややラインを馴染ませて、ロッドティップの角度を意識してBlooowin!を流す。
トン!
ラインがたるんでいるので、少し曇りの掛かったバイトが竿先に伝わる。
アワセを入れたロッドが満月のように曲がる。
ゴバシャ!
ストライパーが水面を割った。
一度っきりのエラ洗いの後は、シャローで走り回るファイト。
そして、程なく、俺の足元に横たわる。
60弱の魚体。
人生初のストライプドバスをキャッチし、少しハイテンションに健さんとハイタッチして、記念撮影。
美しい魚。
まだ1バイトだが、シーバスよりはバイトが小さかった。
そして、口の周りはシーバスより柔らかい印象を持った。
フッキングは良さそうな感じ。
西に傾いてきた月に海面が照らされて、昼間ほどではないものの状況把握がしやすい。
潮の引き具合、サンドバーの砂とか貝殻、海藻の要素から、今が下げ8分くらいである事を知った。
となると、下げの時合いはもうすぐ終わるだろうし、返しの上げ潮の時合いは凄いことになるのかもしれない。
Blooowin!80Sを流していくと、数投後。
すぐに2本目。
流心からシャローに繋がるブレイクはけっこう遠い。
40mほど先なので、Blooowin!80Sくらいだとしっかりと投げ込まないと届かない。
そこからカケアガリを流す。
置くように流すのはBlooowin!140Sと変わらない。
60後半。
最近はNarage50はエサですね、とお客さんによく言われるんだけど、俺はそう思わないんだよ。
なぜかというと、Blooowin!80Sの方がもっとエサかと思うくらい反応が良いからだ。
しっかり飛んで、しっかり泳ぐ。
兄貴のBlooowin!140Sが作った信頼は確実に引き継がれている。
潮の透明度は抜群に高く、月明かりは明るい。
魚は数十匹の気配をイメージできたけど、状況はデーゲームと同じようなものだ。
あっという間にスレた。
満月、澄み潮の干潟の釣りは難しい。
だけど、その状況が難しいのはこいつが発売されたら終わりになるかもしれない。
Shalldus20。
今月発売のシーマガや地球丸ムックで明らかになっちゃったんだけど、まだこのルアーの詳細はその本を読んだ人だけのものにしておく(笑)
Shalldus20はすごかった。
一度はスレきった魚に再度スイッチを入れて、立て続けに3本キャッチ。
Blooowin!80Sのフォローベイトとして完全に機能した。
遠目に健さんが苦戦しているのが見えたので、一度様子を見に行く。
健さんは1本しか持っていけないロッドチョイスを間違えたようだった。
10kgストライパーをイメージして硬めの竿をカヤックに積んだが、現場に着いてみればベイトがイカナゴ7cmくらいの大きさで、投げるルアーが小さい必要があった。
小さいルアーが無い!と叫んでいたので、Blooowin!80Sを貸した。
数分もしないうちに、遠くから「イエス!」「イエス!」という声が聞こえてくるようになったので、安心して俺も釣り続けた。
スティーブは最初は俺たちにつきっきりで、俺が掛けた魚のランディングを手伝おうとし、リリースを代行しようとした。
普段、彼がどんなお客さんを相手にしているかわからないけど、日本のシーバスアングラーはリリース上手なアングラーでもある。
俺や健さんの手際の良さと、魚をほとんど傷つけずにリリースしていくスタイルに「Beautifull,Beautifull」とつぶやきながら感心してくれていた。
最後の方は俺たちはほったらかしで干潟を徘徊していた。
10本くらい釣ったところで潮が下げ止まった。
そこで、一度小用をしにカヤックに戻る。
すっかりと干上がった干潟のカヤックの上に座り、お菓子を食べて栄養補給。
下げ止まりの証は、月が地平線を越えた証。
これからの上げに備えて体力回復をしながら、月光をすっかり失ったこの夜に目を慣らしていく。
ふと空を見上げると、満天の星空。
月が沈んで風が海の方から吹き始めた。
潮が動かす空気の動き。
それは上げ潮が始まる合図。
干潟の内側を覗けば、潮だまりには満天の星空がそのまま映っている。
遠くの街灯り以外、光も無い。
スティーブも健さんもどこにいるのかわからなくなった。
俺は干潟に立ち尽くして、人生で一番ではないかと思う星空を楽しんでいた。
やがて、上げ潮が動き出した合図のライズ音で、俺は再びロッドを持った。
魚は下げ潮の時とそんなに入れ替わっていないようで、Shalldus20にもスレている感じを持つ。
SNECON90Sにチェンジする。
月明かりを失い、漆黒の闇の中でSNECON90Sのチャートカラーは、強烈なバイトを次々と引っ張り出す。
最大の70弱を釣ったところで、健さんが沖の方から戻ってきたので写真を撮ってもらう。
風はいっきに風速7m/s近い感じで吹いている。
シャローは波っけが出てきて、たまに油断するとしぶきをかぶるようになった。
魚の活性は増すばかり。
怖いのはカメラで、静かな夜だったので防水カメラでは無い方を持ってきてしまったので、壊さないように慎重に撮影しながら撮影。
日本から遠く離れたアメリカの端っこで、俺は荒川の上げ返しの釣りをそのまましていた。
流し方は全く一緒。
少しのバイトの違い、少しのフッキングの違い、少しのファイトの違いを楽しみながら、ひたすらに掛けまくった。
あるタイミングで、ふっとベイトが消えた。
シャローに向かって移動をし始めたのだろうか。
それと共にバイトも減っていった。
いつの間にかスティーブが戻ってきた。
移動しようと言う。
永遠にも続いて欲しい最高の夜もいずれ明ける。
それが近いことを知り、俺は釣りを止めて周りを眺めていた。
まだ干潟のほとんどが干上がっているのだろう。
スティーブはオールを漕ぐこともほとんどなく、俺たちは風任せに岸に向かって流されるだけ。
空を見上げる。
満点の星空。
ペガサス座に双子座、ペルセウス座が頭上で輝く。
海面にも星空。
360度全てが星に包まれて、まるで宇宙空間にいるみたいな感覚すら覚えるほど美しい夜。
言葉が出なかった。
子供の頃、生まれ育った団地の11階のベランダで夜はずっと空を眺めていた。
祖母に天体望遠鏡を買ってもらって、宇宙ばかりを覗いていた。
宇宙を感じるのが好きだった。
夜が明けるまでの最後の30分間。
人生で一番宇宙を感じた瞬間だった。
涙がこぼれていた。
やがて、東の空で2つの星が輝き出す。
木星と金星だ。
いよいよ夜が明ける。
太陽の熱気が大気を抑え込んだのだろうか。
あんなに強く吹いていた海風がスッと止んだ。
また音の無い世界が3人を包む。
誰一人、音を立てない。
遠くで鳥と虫の鳴く声だけが聞こえてくる夜明け。
流され着いたのは南側のシャロー。
スティーブはカヤックを岸に寄せて、カヤックから降りた。
そして俺たちを振り返り、「ラストゲーム」と微笑んだ。
俺はこの夜、初めて彼の瞳を見た気がした。
常に自然の中にいる人特有の美しい瞳をしていた。
美しい夜明けの釣り。
上げ潮の流れにベイトの気配。
ふと、彼がどこかを指差した。
対岸のシャローにわずかなベイトの動揺。
この人は俺と同じレベルでアングルを知っている。
俺はShalldus20を投げ込んだ。
この日最後のストライパーが水面を割った。
駆けつけてきた健さんもすかさずキャストして一本釣る。
これにてこの日の釣りは終了。
帰りの距離は想像が付かなかった。
どこをどう流されたのか。
だけど、携帯を取り出して位置を確認することはしたくなかった。
「どこまでも漕ぎましょう。」
しかし、漕ぎ出したらすぐ側に、出発した場所という、これぞ名ガイドというべきマジック。
俺たちは時計回りに干潟を一周していた。
カヤックから降りて、俺は潮に満たされていく干潟を眺めていた。
ここには必ず戻ってくる。
俺はそう思って、この日の釣りを終えた。
その9へ続く
アメリカ遠征釣行 その0 準備編はこちらから
アメリカ遠征釣行 その0 準備編はこちらから
24日の深夜の23時。
俺と健さんは部屋の外に同時に出た。
午前中のブルーフィッシュ船の疲れはほとんどない。
15日にアメリカに来て以来、天候に恵まれる日が多かったが、この日はそれまでで一番の晴れた空が広がっていた。
頭上には満月まであと2日ほどだろうか、少しだけ欠けた上弦の月が浮かんでいる。
普段の満月以上に輝きながら俺たちを照らしてた。
そうか、日本なら今回の満月は十五夜だな。
そんなことを思いながら車を出発させる。
車は20分ほど走ったところで、ケープコッド北側の湾に注ぐ河川の河口に着いた。
暗闇の中で待っていたガイドはスティーブと名乗った。
今までのこちらの国のガイドはみんな太っ腹な感じの風貌をしていたが、彼は極端に痩せ、自然科学者みたいな、詩人のようなオーラを醸し出している。
声も小さく柔らかい感じで喋る人である。
彼はすでにカヤックを三艇、岸辺に降ろしていた。
カヤックで釣りをするの?
と聞くと、これで沖のサンドバーに一気に行った方が楽ちんらしい。
歩いて行くととても遠いよ、と。
カヤックを渡船に使う。
なんてワクワクするんだ。
行った先がどのような状況か色々と話を聞き、道具を絞りこんでタックルをロッドに積み込む。
ロッドは可能なら1本にしてくれ、とスティーブは言う。
狙う魚はストライパー。
昨日までは状況も良く、60cm前後を中心にたくさん釣れたらしい。
運が良ければ80cm以上も狙えると。
まさにシーバスフィッシングのような感じ(笑)
俺は悩んだけど、ダイワのシーバス用パックロッドを選んだ。
健さんがカヤックに先に乗り込んで出発する。
俺もカヤックに乗り込んで、2人の後を追う。
(そういう点で前の日にカヤックを借りて乗っておいて大正解だった。いきなり夜にカヤックで知らない海に漕ぎ出すのは怖いだろうなと)
この日は気持ちが悪い位、静かな夜だった。
風は全くの無風。
月明かりだけが静かに降り注ぐ。
鏡のようになった水面に月がそのままの形で映り込む。
その海面の月を揺らすのは俺たち三艇のカヤックの波紋のみ。
ギコギコとオールと艇体が擦れる音だけが、月明かりの下の静寂に響いている。
先頭を行くスティーブは何かを待っているのだろうか。
やけに静かにゆっくりと漕ぎ続けた。
たまに漕ぐのを止めて浮かんだままでいる。
スティーブが漕ぐのを止めると、やがて追いつく俺たちも漕ぐのを止める。
スティーブが静かに漕ぎ出せば、俺たちも静かに漕ぎ出す。
スティーブは停止している間は、耳を澄ましてストライパーの捕食音を探しているようであった。
もしかしたら、この神聖さすら感じさせるこの夜に、俺たち3人の波長が合うのを待っていたのかもしれない。
テンションが高かった俺も健さんもいつしか無口になり、3人で黙々と静かにオールを漕いだ。
俺は最後尾で眩しいほどの月を眺めながら漕いでいた。
カヤックが進めば、月は同じスピードでついてくる。
カヤックを止めれば、月も止まる。
月は俺たちの頭上で音も無く輝く。
この目で見える美しさに、カメラの性能が本当に追いついていかない。
それほど美しい。
人生で5本の指に入る美しい夜だった。
ふと気付いたのは、カヤックが流されるスピード。
いつのまにか、流れの中に入ったようだ。
漕いでもないのに、カヤックは確実に流れている。
漕いでもないのに、月が追いかけてくる。
俺は漕ぐのを止めて、ずっと追いかけてくる月を眺めていた。
耳に聞こえる音は皆無。
ふと思う。
俺たちはこの海のどこにいるんだろう?
iPhoneの地図マップが現在地を示す。
自然でできた河口のシャロー帯の、流心の右岸側を俺たちは流れているようだ。
最後のサンドバーに向かっているのだろう。
まさに、富津や盤津の釣り。
それはスズキと同じようにストライパーの聖地なのだろう。
干潟の大きさも三番瀬が2つくらいあるような大きさのイメージを持った。
そして正味40分ほどの静かな航海が終わり、大きく遅れた俺は月明かりの下のわずかなシルエットを追って、オールを漕いだ。
やがて2人の陰が大きくなったと思ったら、スティーブはもうカヤックを下りて干上がった馬の瀬の上に立っていた。
そこは三日月形に干上がっており、河口の最後のサンドバーであり、その馬の背が沖に向かって伸び続けていることは、海から来るわずかな波の盛り上がりで十分に理解できた。
流心の方に目をこらすとかなり速い流れが右から左へとかっ飛んでいる。
ライトを付けると、ベイトがかなりいる。
手で掬うと、イカナゴのような7cmほどの魚。
はやる気持ちを抑えながら、月明かりに照らされた流心に目を凝らして、流れの動きやシャローの形を頭に入れていく。
ガイドのスティーブが横で説明してくれているのだけど、彼の英語は本当にさっぱり分からない。
だけど、言葉は不要だった。
だって、俺はスズキ釣りのプロだから。
まだ人生で一度も釣ったことのないストライパーなのに、魚の位置やレンジ、バイトの出方まで全てが脳内にイメージできていた。
俺はBlooowin!80Sをスナップに結び、キャストを始めた。
投げてBlooowin!から伝わる情報で、さらに状況を把握していく。
日本で普段から俺がやっている釣りと全く一緒。
いや、この場所は日本のどこかの河口であり、俺は今シーバスを狙っているのだ、という錯覚を起こすほど俺にとっては馴染んでいる肌感覚が身を包んでいく。
ほどなく、Blooowin!80Sに最初のバイト。
が、乗らなかった。
少しラインを張りすぎていた。
次のキャスト、ややラインを馴染ませて、ロッドティップの角度を意識してBlooowin!を流す。
トン!
ラインがたるんでいるので、少し曇りの掛かったバイトが竿先に伝わる。
アワセを入れたロッドが満月のように曲がる。
ゴバシャ!
ストライパーが水面を割った。
一度っきりのエラ洗いの後は、シャローで走り回るファイト。
そして、程なく、俺の足元に横たわる。
60弱の魚体。
人生初のストライプドバスをキャッチし、少しハイテンションに健さんとハイタッチして、記念撮影。
美しい魚。
まだ1バイトだが、シーバスよりはバイトが小さかった。
そして、口の周りはシーバスより柔らかい印象を持った。
フッキングは良さそうな感じ。
西に傾いてきた月に海面が照らされて、昼間ほどではないものの状況把握がしやすい。
潮の引き具合、サンドバーの砂とか貝殻、海藻の要素から、今が下げ8分くらいである事を知った。
となると、下げの時合いはもうすぐ終わるだろうし、返しの上げ潮の時合いは凄いことになるのかもしれない。
Blooowin!80Sを流していくと、数投後。
すぐに2本目。
流心からシャローに繋がるブレイクはけっこう遠い。
40mほど先なので、Blooowin!80Sくらいだとしっかりと投げ込まないと届かない。
そこからカケアガリを流す。
置くように流すのはBlooowin!140Sと変わらない。
60後半。
最近はNarage50はエサですね、とお客さんによく言われるんだけど、俺はそう思わないんだよ。
なぜかというと、Blooowin!80Sの方がもっとエサかと思うくらい反応が良いからだ。
しっかり飛んで、しっかり泳ぐ。
兄貴のBlooowin!140Sが作った信頼は確実に引き継がれている。
潮の透明度は抜群に高く、月明かりは明るい。
魚は数十匹の気配をイメージできたけど、状況はデーゲームと同じようなものだ。
あっという間にスレた。
満月、澄み潮の干潟の釣りは難しい。
だけど、その状況が難しいのはこいつが発売されたら終わりになるかもしれない。
Shalldus20。
今月発売のシーマガや地球丸ムックで明らかになっちゃったんだけど、まだこのルアーの詳細はその本を読んだ人だけのものにしておく(笑)
Shalldus20はすごかった。
一度はスレきった魚に再度スイッチを入れて、立て続けに3本キャッチ。
Blooowin!80Sのフォローベイトとして完全に機能した。
遠目に健さんが苦戦しているのが見えたので、一度様子を見に行く。
健さんは1本しか持っていけないロッドチョイスを間違えたようだった。
10kgストライパーをイメージして硬めの竿をカヤックに積んだが、現場に着いてみればベイトがイカナゴ7cmくらいの大きさで、投げるルアーが小さい必要があった。
小さいルアーが無い!と叫んでいたので、Blooowin!80Sを貸した。
数分もしないうちに、遠くから「イエス!」「イエス!」という声が聞こえてくるようになったので、安心して俺も釣り続けた。
スティーブは最初は俺たちにつきっきりで、俺が掛けた魚のランディングを手伝おうとし、リリースを代行しようとした。
普段、彼がどんなお客さんを相手にしているかわからないけど、日本のシーバスアングラーはリリース上手なアングラーでもある。
俺や健さんの手際の良さと、魚をほとんど傷つけずにリリースしていくスタイルに「Beautifull,Beautifull」とつぶやきながら感心してくれていた。
最後の方は俺たちはほったらかしで干潟を徘徊していた。
10本くらい釣ったところで潮が下げ止まった。
そこで、一度小用をしにカヤックに戻る。
すっかりと干上がった干潟のカヤックの上に座り、お菓子を食べて栄養補給。
下げ止まりの証は、月が地平線を越えた証。
これからの上げに備えて体力回復をしながら、月光をすっかり失ったこの夜に目を慣らしていく。
ふと空を見上げると、満天の星空。
月が沈んで風が海の方から吹き始めた。
潮が動かす空気の動き。
それは上げ潮が始まる合図。
干潟の内側を覗けば、潮だまりには満天の星空がそのまま映っている。
遠くの街灯り以外、光も無い。
スティーブも健さんもどこにいるのかわからなくなった。
俺は干潟に立ち尽くして、人生で一番ではないかと思う星空を楽しんでいた。
やがて、上げ潮が動き出した合図のライズ音で、俺は再びロッドを持った。
魚は下げ潮の時とそんなに入れ替わっていないようで、Shalldus20にもスレている感じを持つ。
SNECON90Sにチェンジする。
月明かりを失い、漆黒の闇の中でSNECON90Sのチャートカラーは、強烈なバイトを次々と引っ張り出す。
最大の70弱を釣ったところで、健さんが沖の方から戻ってきたので写真を撮ってもらう。
風はいっきに風速7m/s近い感じで吹いている。
シャローは波っけが出てきて、たまに油断するとしぶきをかぶるようになった。
魚の活性は増すばかり。
怖いのはカメラで、静かな夜だったので防水カメラでは無い方を持ってきてしまったので、壊さないように慎重に撮影しながら撮影。
日本から遠く離れたアメリカの端っこで、俺は荒川の上げ返しの釣りをそのまましていた。
流し方は全く一緒。
少しのバイトの違い、少しのフッキングの違い、少しのファイトの違いを楽しみながら、ひたすらに掛けまくった。
あるタイミングで、ふっとベイトが消えた。
シャローに向かって移動をし始めたのだろうか。
それと共にバイトも減っていった。
いつの間にかスティーブが戻ってきた。
移動しようと言う。
永遠にも続いて欲しい最高の夜もいずれ明ける。
それが近いことを知り、俺は釣りを止めて周りを眺めていた。
まだ干潟のほとんどが干上がっているのだろう。
スティーブはオールを漕ぐこともほとんどなく、俺たちは風任せに岸に向かって流されるだけ。
空を見上げる。
満点の星空。
ペガサス座に双子座、ペルセウス座が頭上で輝く。
海面にも星空。
360度全てが星に包まれて、まるで宇宙空間にいるみたいな感覚すら覚えるほど美しい夜。
言葉が出なかった。
子供の頃、生まれ育った団地の11階のベランダで夜はずっと空を眺めていた。
祖母に天体望遠鏡を買ってもらって、宇宙ばかりを覗いていた。
宇宙を感じるのが好きだった。
夜が明けるまでの最後の30分間。
人生で一番宇宙を感じた瞬間だった。
涙がこぼれていた。
やがて、東の空で2つの星が輝き出す。
木星と金星だ。
いよいよ夜が明ける。
太陽の熱気が大気を抑え込んだのだろうか。
あんなに強く吹いていた海風がスッと止んだ。
また音の無い世界が3人を包む。
誰一人、音を立てない。
遠くで鳥と虫の鳴く声だけが聞こえてくる夜明け。
流され着いたのは南側のシャロー。
スティーブはカヤックを岸に寄せて、カヤックから降りた。
そして俺たちを振り返り、「ラストゲーム」と微笑んだ。
俺はこの夜、初めて彼の瞳を見た気がした。
常に自然の中にいる人特有の美しい瞳をしていた。
美しい夜明けの釣り。
上げ潮の流れにベイトの気配。
ふと、彼がどこかを指差した。
対岸のシャローにわずかなベイトの動揺。
この人は俺と同じレベルでアングルを知っている。
俺はShalldus20を投げ込んだ。
この日最後のストライパーが水面を割った。
駆けつけてきた健さんもすかさずキャストして一本釣る。
これにてこの日の釣りは終了。
帰りの距離は想像が付かなかった。
どこをどう流されたのか。
だけど、携帯を取り出して位置を確認することはしたくなかった。
「どこまでも漕ぎましょう。」
しかし、漕ぎ出したらすぐ側に、出発した場所という、これぞ名ガイドというべきマジック。
俺たちは時計回りに干潟を一周していた。
カヤックから降りて、俺は潮に満たされていく干潟を眺めていた。
ここには必ず戻ってくる。
俺はそう思って、この日の釣りを終えた。
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