▼ アラスカ釣行2012 その5
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アラスカ釣行2012 その5
その1はこちらから
PCの方はBGMをこちらからどうぞ。
アラスカ釣行4日目。
疲れの見える僕達であったが、ようやく丸一日釣りができる日が訪れた。
チキンスープとピザをささっと平らげて出発。

と、来るがどうせBradは1時間近く遅刻してくる。
スターバックスのインスタントコーヒーを飲んで、しばし談笑の時間。

30分遅れでロッジを出たが、Bradはそれを読み超したようにその1時間後にやってきた。
それでもこの日は今までよりフィッシングタイムが3時間ほど多い。
上流に行くか、初日や昨日と同じコースで行くか。
僕らに選択肢が委ねられた。
上はどうかとBradに聞くと、「上はラフティングが最高だ。」、と言う。
僕らは下を選んだ。
河に着いて驚いたのは、セメント色の濁りだった。
どうやら前日に上流の方で降った雨により、かなりの濁りが入っているようだった。
濁りが入ってどうなんだろう、とBradに訪ねると、より難しくなるという事だった。
魚にとって濁りでエサが見えなくなるから、と言う。

流れゆく途中、前日から良さそうだったポイントに上がる。

が、やってみると良さそうなポイントの前の流れが速く、ラインが流れに持っていかれて、ピンで仕掛けをそこに流し込むことができない。
広く長い河の中にキングサーモンが立ち寄る場所は無数あるのだと思う。
しかし、そこに釣り人が仕掛けを流し込め、ランディングができる地形。
となると、何十マイルに3つ4つという少なさになってしまう。
僕らはまたボートに乗った。

最終日、あと1本は釣りたい、そして40ポンド超えを目指したいと一番気合いが入っていたのはビコウさん。

必死にやっていたが、無情にも先に掛けたのはケンさん。
が、これは150m下流まで走られた末にラインブレイク。
見たこともないサイズか、大型のスレ掛かりか。
いずれにせよ、ここのキングサーモンは流れの中の釣りのため、走らせたらおしまいである。
僕は今日もアピアのロッドで挑んだ。
パワーバランスはシイラロッドのソルティガ70Sの方がこの釣りには向いている。
が、9フィート7インチという長さは、僕らが立ち寄るポイントで他の2人が攻めることができないピンポイントに仕掛けを流し込むために必要だった。流れにラインを持っていかれないためにロッドの長さが必要だった。
そんなピンポイントを2つほど見つけていた。
その一つ。そこは一日を通して他のガイドのお客さんも、おそらく攻められないはずのやや沖側のピン。
だから魚がスレていない証拠に、通すと1発で喰うのだ。
そこにピンで送り込む技術。
風と流れで毎投変わるので、着水点もとても大事、ティップの高さコントロールもかなりのキモだ。
しかし、通せば1発。
30mほど先の流れの中の大岩の裏がまさにそのポイント。
それに対し、その15mほど上流に仕掛けを撃ち込み、流れと風で動くラインをコントロールしながら流し込んでいく。
30投ほどしてようやく良いコースに乗った感じ。
だから、喰う前には予感が走る。
アタリはとても小さい。実際は大きいのだが、強い流れがラインに与えるノイズでなかなか判断できない事が多い。
予感がなければ、そこで合わせられない。
ヌン
ドン!
見事にヒットした。

流れに乗って走っていくキングサーモンをバッドパワーで止める。
下流の方に走れないとわかると、魚が流心に入ろうとする。
それでも走らせない、エラの中に水を通させない。
そのギリギリがドラグ設定値で15kgくらいだ。
そんなファイトをしていると5分もしないでバテてくるので、一気に寄せる。


どうだろ、25か30ポンドくらい。

やがて午後になり、雲が薄くなり、青空が見えだした。
アラスカの短い夏が、活動を始める。

生命が喜びを爆発させ、一生懸命に生きる時間がやってくる。
僕らも、その瞬間を共に生きた。
ビコウさんは、最後、自分の可能性に掛けていた。

僕はキングサーモンのエサ釣りを終わりにした。
その直前にボートに行った際に、エサのイクラが袋の中にもう無かったのである。
新しい袋はあるのか、という質問に、Bradは陽気に「Nothing!」と親指を突き出した。
呆れ果てる感じだけど、もうこれがBradという人間なのである。
ついでに言えば、仕掛けの間のフロートももう無いよね?と聞くと、まだあるぞ、とビコウさんの仕掛けボックスを指差す始末。
ボート内のゴミも数日分がどっさり足元に転がっている。
Bradはどこまでもいい加減だった。
それに、ルアーでは釣ることができなかったけど、この河の流れの速さでは無理だと判断していた。
この河の数十マイル上流に湖があるらしい。
Bradが所有する水上飛行機で行くその湖ではスプーンでキングサーモンが狙えるという。
そこにいつか、シーライドを手に行ってみよう。
Bradのものではない飛行機で。
そんなことを思いながら、蚊がうなるほど飛ぶ森の中を散策する。

ケンさんも最後のキングサーモンの釣りを楽しんでいた。

そして僕もシーライドで何とかならんかと。

みんな、ビコウさんの奇跡を待っていた時間。
本人以外には、とてもいい時間が過ぎていた。
もちろん本人もいい時間だったと思うが。
僕には空を見上げる余裕があり、アラスカが初めて見せた太陽と青空に色々なことを考えていた。

6月に雪が溶けて10月に雪に閉ざされるアラスカ。
そのたった3ヶ月ちょっとの夏を、全ての生き物が精一杯に生きている。
葉っぱ一枚一枚に生きる喜びが宿って見える。

その中で生まれ育ったBradはどこまでも陽気な男だった。

最後10分、僕もケンさんも釣りを辞め、ビコウさんに全てを託したその瞬間。
Bradはケンさんのロッドを手に取り、おもむろにビコウさんの仕掛けにかぶせるスーパーアップクロスでキャストする。

そしてオマツリ・・・。
そして時間切れ。
最後に記念撮影。
アラスカの河、キングサーモン、Alan、Brad、みんなありがとう。

で、ビコウさんはもう数投投げた。(気持ちはとてもわかる)


午後7時くらい。まだ陽光眩しい時間にBradがちょいと見晴らしの良いポイントに連れて行ってくれた。





そして夕食は今日もサケだった。
セージとバターをたっぷりと振りかけてバター焼きにして、

缶詰のトマトソースをガバッと掛ける。

ロッジでの最後の夕食、僕らは大いに食べ、大いに飲んで、大いに語った。
人生の夢、釣り人の夢、女の話、酒の話、鮭の話。

途中で輪廻の話になった。
ケ 「輪廻で魂が生まれ変わるのはいいが、イワシやニシンになるなんてとても耐えられないって思ってたんだ。だけど、キングサーモンになるのなら、次は魚に生まれ変わるのも悪くないと思うんだ。」
ケンさんは続ける。
ケ 「まあ俺も年を取ったんだな。これもサトリって言うのかね。」
ビ 「全然違うと思います。」
僕とビコウさんでワインを4本空ける頃、ビコウさんは何かを言いながらベッドの上に転がり込み、そのまますぐに寝息を立てた。

ケンさんは、その30分前から完全に酔っ払いになっていた。
何を話していたかは僕の記憶の中にとどめておこう。
お酒に強い僕は、一人でもう1本ワインを飲んで、ようやく冷蔵庫のビール以外の酒が無くなった。
そして僕もベッドの上に転がった。
結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味を持つのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。
by 星野道夫 [旅をする木」
キングサーモンの釣りは全員が魚をキャッチすることができた。
釣れただけ良いと思った方がいいのだろう。
この4日間で釣れずに肩を落として帰る釣り人を何人も見ていた。
その6へ続く
その1はこちらから
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アラスカ釣行4日目。
疲れの見える僕達であったが、ようやく丸一日釣りができる日が訪れた。
チキンスープとピザをささっと平らげて出発。

と、来るがどうせBradは1時間近く遅刻してくる。
スターバックスのインスタントコーヒーを飲んで、しばし談笑の時間。

30分遅れでロッジを出たが、Bradはそれを読み超したようにその1時間後にやってきた。
それでもこの日は今までよりフィッシングタイムが3時間ほど多い。
上流に行くか、初日や昨日と同じコースで行くか。
僕らに選択肢が委ねられた。
上はどうかとBradに聞くと、「上はラフティングが最高だ。」、と言う。
僕らは下を選んだ。
河に着いて驚いたのは、セメント色の濁りだった。
どうやら前日に上流の方で降った雨により、かなりの濁りが入っているようだった。
濁りが入ってどうなんだろう、とBradに訪ねると、より難しくなるという事だった。
魚にとって濁りでエサが見えなくなるから、と言う。

流れゆく途中、前日から良さそうだったポイントに上がる。

が、やってみると良さそうなポイントの前の流れが速く、ラインが流れに持っていかれて、ピンで仕掛けをそこに流し込むことができない。
広く長い河の中にキングサーモンが立ち寄る場所は無数あるのだと思う。
しかし、そこに釣り人が仕掛けを流し込め、ランディングができる地形。
となると、何十マイルに3つ4つという少なさになってしまう。
僕らはまたボートに乗った。

最終日、あと1本は釣りたい、そして40ポンド超えを目指したいと一番気合いが入っていたのはビコウさん。

必死にやっていたが、無情にも先に掛けたのはケンさん。
が、これは150m下流まで走られた末にラインブレイク。
見たこともないサイズか、大型のスレ掛かりか。
いずれにせよ、ここのキングサーモンは流れの中の釣りのため、走らせたらおしまいである。
僕は今日もアピアのロッドで挑んだ。
パワーバランスはシイラロッドのソルティガ70Sの方がこの釣りには向いている。
が、9フィート7インチという長さは、僕らが立ち寄るポイントで他の2人が攻めることができないピンポイントに仕掛けを流し込むために必要だった。流れにラインを持っていかれないためにロッドの長さが必要だった。
そんなピンポイントを2つほど見つけていた。
その一つ。そこは一日を通して他のガイドのお客さんも、おそらく攻められないはずのやや沖側のピン。
だから魚がスレていない証拠に、通すと1発で喰うのだ。
そこにピンで送り込む技術。
風と流れで毎投変わるので、着水点もとても大事、ティップの高さコントロールもかなりのキモだ。
しかし、通せば1発。
30mほど先の流れの中の大岩の裏がまさにそのポイント。
それに対し、その15mほど上流に仕掛けを撃ち込み、流れと風で動くラインをコントロールしながら流し込んでいく。
30投ほどしてようやく良いコースに乗った感じ。
だから、喰う前には予感が走る。
アタリはとても小さい。実際は大きいのだが、強い流れがラインに与えるノイズでなかなか判断できない事が多い。
予感がなければ、そこで合わせられない。
ヌン
ドン!
見事にヒットした。

流れに乗って走っていくキングサーモンをバッドパワーで止める。
下流の方に走れないとわかると、魚が流心に入ろうとする。
それでも走らせない、エラの中に水を通させない。
そのギリギリがドラグ設定値で15kgくらいだ。
そんなファイトをしていると5分もしないでバテてくるので、一気に寄せる。


どうだろ、25か30ポンドくらい。

やがて午後になり、雲が薄くなり、青空が見えだした。
アラスカの短い夏が、活動を始める。

生命が喜びを爆発させ、一生懸命に生きる時間がやってくる。
僕らも、その瞬間を共に生きた。
ビコウさんは、最後、自分の可能性に掛けていた。

僕はキングサーモンのエサ釣りを終わりにした。
その直前にボートに行った際に、エサのイクラが袋の中にもう無かったのである。
新しい袋はあるのか、という質問に、Bradは陽気に「Nothing!」と親指を突き出した。
呆れ果てる感じだけど、もうこれがBradという人間なのである。
ついでに言えば、仕掛けの間のフロートももう無いよね?と聞くと、まだあるぞ、とビコウさんの仕掛けボックスを指差す始末。
ボート内のゴミも数日分がどっさり足元に転がっている。
Bradはどこまでもいい加減だった。
それに、ルアーでは釣ることができなかったけど、この河の流れの速さでは無理だと判断していた。
この河の数十マイル上流に湖があるらしい。
Bradが所有する水上飛行機で行くその湖ではスプーンでキングサーモンが狙えるという。
そこにいつか、シーライドを手に行ってみよう。
Bradのものではない飛行機で。
そんなことを思いながら、蚊がうなるほど飛ぶ森の中を散策する。

ケンさんも最後のキングサーモンの釣りを楽しんでいた。

そして僕もシーライドで何とかならんかと。

みんな、ビコウさんの奇跡を待っていた時間。
本人以外には、とてもいい時間が過ぎていた。
もちろん本人もいい時間だったと思うが。
僕には空を見上げる余裕があり、アラスカが初めて見せた太陽と青空に色々なことを考えていた。

6月に雪が溶けて10月に雪に閉ざされるアラスカ。
そのたった3ヶ月ちょっとの夏を、全ての生き物が精一杯に生きている。
葉っぱ一枚一枚に生きる喜びが宿って見える。

その中で生まれ育ったBradはどこまでも陽気な男だった。

最後10分、僕もケンさんも釣りを辞め、ビコウさんに全てを託したその瞬間。
Bradはケンさんのロッドを手に取り、おもむろにビコウさんの仕掛けにかぶせるスーパーアップクロスでキャストする。

そしてオマツリ・・・。
そして時間切れ。
最後に記念撮影。
アラスカの河、キングサーモン、Alan、Brad、みんなありがとう。

で、ビコウさんはもう数投投げた。(気持ちはとてもわかる)


午後7時くらい。まだ陽光眩しい時間にBradがちょいと見晴らしの良いポイントに連れて行ってくれた。





そして夕食は今日もサケだった。
セージとバターをたっぷりと振りかけてバター焼きにして、

缶詰のトマトソースをガバッと掛ける。

ロッジでの最後の夕食、僕らは大いに食べ、大いに飲んで、大いに語った。
人生の夢、釣り人の夢、女の話、酒の話、鮭の話。

途中で輪廻の話になった。
ケ 「輪廻で魂が生まれ変わるのはいいが、イワシやニシンになるなんてとても耐えられないって思ってたんだ。だけど、キングサーモンになるのなら、次は魚に生まれ変わるのも悪くないと思うんだ。」
ケンさんは続ける。
ケ 「まあ俺も年を取ったんだな。これもサトリって言うのかね。」
ビ 「全然違うと思います。」
僕とビコウさんでワインを4本空ける頃、ビコウさんは何かを言いながらベッドの上に転がり込み、そのまますぐに寝息を立てた。

ケンさんは、その30分前から完全に酔っ払いになっていた。
何を話していたかは僕の記憶の中にとどめておこう。
お酒に強い僕は、一人でもう1本ワインを飲んで、ようやく冷蔵庫のビール以外の酒が無くなった。
そして僕もベッドの上に転がった。
結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味を持つのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。
by 星野道夫 [旅をする木」
キングサーモンの釣りは全員が魚をキャッチすることができた。
釣れただけ良いと思った方がいいのだろう。
この4日間で釣れずに肩を落として帰る釣り人を何人も見ていた。
その6へ続く
- 2012年8月6日
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