アラスカ釣行2012 その4

アラスカ釣行2012 その4








その1はこちらから




PCの方はBGMをどうぞ。







大河の中のキングサーモンが脳裏に描けるようになった僕は、かなり的確に河の中の一点に向けて仕掛けを流せるようになった。

魚さえいれば、魚の目の前にルアーを持って行くことができる。

これが確信となったので、エサ仕掛けからシーライドへとチェンジした。

そして2時間、かなりやりこんだが全くバイトが出せない。

先ほどのケンさんのヒットでルアーフィッシングで釣るという目標に対して気持ちが折れ、再度エサ釣り仕掛けに戻すことにした。


15分ほどやっていると、まさに速い流れからすっと抜けた深いたるみの底で強烈なバイト。


アワせると魚が走り出すが、先ほどのものでもない。





2本目キャッチ。20ポンドくらい。



まだ今日、一度も魚のバイトを取れていないTomはいよいよナーバスな感じだったが、僕が魚を出した場所を譲って攻め出すと5分もしないでヒット。


Bradはいつものようにガイドの仕事をしないで、マウンテンデューをグビグビと飲む。

わかっててやってるんだが、Tomの表情を見る限りでは、結構むかついていたと思う。


しかし、ランディングしなければやがて魚は浮いてくる。

小型だけど、嬉しい笑顔。


全ては、魚を必要以上に暴れさせないためのことなんだろう。

なるべく弱らせ、さっと写真を撮って、さっと針を外す。

元気なうちにランディングすると、大暴れしているうちに自分で自分の頭を激しく石などにぶつけて痛めてしまう。

それをさせないための、ランディングしないガイドなんだろう。





BradはTomのヒットを待っていたかのようにストップフィッシングを告げた。





キングサーモン釣行4日間のうちの半分が終わった。


鬼才、赤塚健一は自信満々だった。(いつものことだが)


ビコウさんは、慣れない海外での会話で少しストレスを感じているようだったが、持ち前の強い心でしっかりとした釣りを展開していた。


僕はもうすっかりと満足して、純粋に極北での釣りを楽しんでいた。





帰り道、近くのスーパーによって僕らはビールを買った。

帰りの車の中で、まずは全員がキングサーモンを釣り上げたお祝いをしていたのだった。

その時、Bradの車がパトカーに止められた。

どうやら、牽引するトレーラーの後部ランプが付いていないようだった。

色々と弁明しているようだったが、反則切符を切られてしまう。

僕らはそれを他人事のように見ていたが、警察官は僕らの手にあるビール瓶を見たとたんに、表情を変えて僕らのところに来た。


ビール瓶を没収し、中身を全て捨てながら、手錠を出し、この場で逮捕されるか、罰金1人200ドル払うか選べ、みたいなことをいわれる。

後に知ることになるが、アメリカでは車中で運転手以外も飲酒をしてはいけないのだ。

僕らは、「知らなかった。」、という形で逃げを打ったが、ここはアメリカである。

Bradは警察官の前で、
「まさか飲むとは思わなかったんだ。」

みたいな顔をして会話している。

僕らはむしろ、Bradに飲む前に教えてくれよ、という想いで成り行きを見守っていたが、Bradなりに色々と弁明してくれたらしく、600ドルの罰金を目をつぶる代わりに、キングサーモンのライセンスのサイン欄にサインが無いなどの軽微な違反で片付けてくれることになったようだ。(これも先に確認しろよって話だが)




夜は僕の釣ったキングサーモンをバター焼きにした。高台の上で摘んだセージをたっぷりと掛けて。












3日目。

月曜日ということもあるんだろう、他の客は無く、僕ら3人だけになった。

毎朝見事に遅刻してくるBradは、今日は2時間も遅刻してきたのに、まったく悪びれもせず、僕らをジープに早く乗るようにせかす。

しかし、この待っている間に僕はショップの片隅で30%ディート配合の虫除けを手に入れた。

これの効きの良さにはすこぶる驚いた。






天気はどんよりとしていて、今にも雨が降り出しそうな空だ。



Bradは昨日の交通違反もすっかり夜のお酒と共に飲み干したんだろう。

僕らが罰金の支払いに警察署に行く際に、「You are lucky!」

なんていう、なんの慰めにもならない言葉をしきりに掛けてくる。


罰金の支払いを終えた後は、山の上へ向かう。


そして、本日もネットを積んでいないボートは、初日と同じコースへと漕ぎ出した。





Bradはなぜか、釣りエサに生イクラを用意してきた。

Bradは今日まで乾燥イクラを多用してきた。

他のガイドが生イクラで乾燥イクラに勝る釣果をあげていても乾燥イクラを通した。

最初は、乾燥イクラ派なのかと思っていたが、単にめんどくさがって持ってこないだけのようだと気付くのに2日と掛からなかった。

ここ数日は、明らかに生イクラに軍配があがっていた。

実は僕の最初の1本は、近くのガイドに生イクラをもらったのである。

が、生イクラは持ちが悪い。

乾燥イクラが30分近いキャスト&リトリーブに耐えられるのに対し、生イクラはその半分くらいしか持たない。

が、よほど香りがいいのか、バイトは生イクラに集中していた。




生イクラを手に入れた僕たちはポイントに入るなり、そこにいるキングサーモンを全て掛けるのごとく、ヒットさせる。





まずはケンさん。

ケンさんのロッドメーカー「BEAMS」の710MHを曲げてランディングされたのは30ポンドほど。






もうすっかりサマになってる。

ちなみに40ポンド以下の魚については重さを計測していない。

水からあげて写真を撮ったらすぐにリリースすることをBradが要求したからだ。

重さについては、全てBradが判断した。

ちなみにおおよそ5ポンド単位であり、ほぼ20ポンド、ほぼ25ポンドみたいな言い方をした。

ただ、結構いい加減で、

「さっきの30ポンドよりずいぶん大きい30ポンドだな。」

とのビコウさんの声はBradには届くわけも無い。








その後、1時間近い、沈黙が続いた。

僕もエサ釣りを辞めて、シーライドやミノーでどうにか喰わせられないかとあーだこーだと試したが、まるでバイトが無い。

僕らは移動を促したが、Bradはキングサーモンは次から次へとこの瀬に入ってきており、場所を移動するよりここでサケの回遊を待つべきだという。

全くもって言うことが信頼できないBradだが、これについては、おそらくBradの言う通りだということで、僕は昼寝を決め込んだ。





夏のアラスカの夜は白夜に限りなく近い。

午後11時くらいになると薄暗くなるが、それは日本の薄暮くらいのものであり、午後3時以降は急にまた明るくなってくる。

夜8時くらいではまだ全然昼間なので、ついつい釣りすぎるし、飲み過ぎる。

そして朝が早いので寝不足になるのだ。

だから、昼寝が必要だった。




この30%DEETの虫除けのおかげで、自分の周囲に蚊が30匹以上飛んでいても、気にせずに寝る事ができる。

もちろん、この虫除けスプレー、最終日にありったけ買い込んで日本に持ち帰ったのは言うまでも無い。







1時間ほどして起きると、小雨が降り出していた。

二人に聞くと何にもアタリが無いとのこと。






こういう時は昼寝から復帰した人が釣るものである。

本日メインで使っていたロッドは、アピアのショアジギロッド、ブラックライン97MH。

シーライドが付いていたはずなんだが、Bradが生イクラのエサ釣り仕掛けに変えていた。

ということで、投げ初めて数分。





大石の裏側を転がした直後に、ヌンという小さいバイト。

確信を持ってアワセを叩き込む。

ガツンとフックアップ。

その瞬間、キングは流心に向かっていきなり走り出した。

それを97MHで溜める、と書けばかっこいいんだが実際は思いっきりのされてロッドがまっすぐになる。

ドラグ設定は15kg近い。

97MHというロッドの長さの先端に、その重さが掛かるのだ。

実際、感覚的にだが40kg近いリフティングパワーを必要とする。




それをするには足場が悪すぎる。

土や泥の前下がりの地形であり、目の前にはホームに入ってくる時の電車のようなスピードで激流が流れている。

力を入れると足を滑らせて転落するリスクがある。

が、掛かってしまった魚を獲るためには勝負しか無い。





慌ててロッドをしっかりと持ち直し、ロッドを立てる。

ブラックラインはきしみを上げて15kgを受け止める。

ドラグが滑り出し、魚は下流へ走っていく。

水面を豪快にキングが割って派手なジャンプをする。


キングサーモンはヒットすると何発もジャンプし、その大きな巨体を見せてくれる。



まさに、BlueBlueのスタッフ、たつろーが葛西橋から落ちたような水しぶきが上がる。


↓たつろー








「こいつは獲るぞ!」

と気合いを入れ直し、追いアワセを一発入れると、なんとバレる。


思わず、天を仰ぐ。



今のは昨日のと同じくらいあった感じだったが、、、。










気を取り直してまたキャスト再開。


数分で再度ヒット。

パターンがわかってきた。

今度はあんまり強い引きでは無い。




といっても、15kgのドラグ加重を身体に預けても寄ってこないくらいの引きではあるのだが、、、





↑小さいので棍棒は無し。






それでも35ポンド。






その後、1時間以上誰もバイトが無いので下流に移動。

次のポイント。

ここは下流が広く、一発掛けても少しは走らせる余裕がある場所。



魚がいれば食わせる自信が出てきた僕が早々に魚を掛ける。












ほぼ25ポンド。

激流の中の10kg近い魚を1cmもドラグを出されずにランディング、即リリース。

ブラックライン、いいパワーと良好な感度。いい仕上がり。








で、15分ほど沈黙が続く。

また昼寝でも決め込もうかと思った矢先にケンさんヒット!

掛かるなり、キングは上流に走っていく。

村「上流に走るスズキはでかいっすよ。サケは知らんけど。」


ケ「おう、サケもでかいのは上流に走るんだよな。」




キングはひとしきり上流に上がると、一転して沖側に走っていった。

流れが強いので魚はその勢いで下流へ走っていく。

健さんは親指ドラグを多用しながら、魚を上手に誘導しているが、相当摩擦で熱いらしい。

「あちちちちっちちいちちちちちちちちちいちちち」

と叫びながらファイトしている。




見ていただけのBradがそろそろ潮時と感じたのだろう。

マウンテンデューをグビグビッと飲んでボートから立ち上がった。


そろそろ、ランディングかな。


こんなでかいの、Bradはどうするんだろうかと思っていたら、下流にいた他のガイドがどでかいタモ網を持って駆けつけてくれた。


Bradは親指出してグーとか言ってて、まああれだ。

Bradとガイドはタイミングを計っている。





ケンさんの寄せに合わせて二人が網を差し出す。

魚が重くて底に触れるので、これ以上寄らないところに。

ガイドが網ですくおうとしたが底に魚体が付いているので、網で押す形になっている。


で、見事に網にフックだけ引っかけ、すっと魚が外れる。

魚は弱っていてシャローでまだ横倒し。

たまたま、迫真の写真を撮ろうと沖側に立ち込んでいた僕の目の前にサケがフラフラッとやってきた。

逃がしてなるものかと、棍棒ばりのキックキックキックキックキック!!!






無事にランディング! (俺偉い!)


その後は、岸際で水中に戻ろうとするキングと、逃がしてなるものかと格闘するガイドとケンさん。

激しく泥が飛び散るのだが、キャノンの赤帯レンズを守りたい僕はとっとと避難。





そして!!





ぐおおおおおおおおおおおおっ!




いやーかっこいいっす。こんな感じ。









なんと47ポンド!



ビコウさんも何発かチャンスがあったが、獲りきれなかった。


帰りの車は不思議な雰囲気。

最終日の明日に掛けるビコウさんの熱い気持ち、なんとなく終わった感の漂うケンさんと僕。

いつもと変わらない陽気なBrad。

その4人での道中、Bradから提案。

夕食を一緒にしないか、と。





ということで、ちょっと寄り道。

途中、Bradが街を走りながら、ホテルやレストラン、お土産屋、マンション、工場を指さし、あれは俺のものだと言っている。

ほんとかよ、と思ったが、ケンさんがありゃウソだなと。

確かに、だったらフィッシングガイドなんてやってないよね。

という事に。




Bradの行きつけのお店に。



まずはBARで乾杯。


ここの名物は、1ドル札にサインをして、天井に張るんだとか。



僕らの名前もアラスカの地に遺された。




次に、その横のレストランへ。

ここでようやく女性発見(笑)

男臭い旅も悪くないが、彩りは欲しいものよね。

18歳の超美人。


健さんも相当気に入ったようだが、Bradのメロメロぶりには笑った。


夕食はハンバーグ。写真はサラダ。メイン料理は撮るのを忘れた。



そして、ホテルに戻るなり爆睡。

身体からは旅の疲れが色濃く出ていた。

だけど、僕らはめいっぱい旅を楽しむために、ちょっと無理をして頑張っていた。




人が旅をして新しい風景を自分のものにするためには、誰かが介在する必要があるのでは無いか。どれだけ多くの国に出かけても、地球を何周しようと、それだけでは私たちは地球の広さを感じることはできない。いや、それどころか、さまざまな土地を訪れ、早く動けば動くほど、かつて無限の広がりを持っていた世界が、有限なものになっていく。誰かと出合い、その人間を好きになった時、風景は初めて広がりと深さを持つのかもしれない。

by星野道夫 「アフリカ旅日記」









そう、僕らはこの憎めない男、Bradを通じてアラスカに溶け込んでいった。






その5へ続く

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