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▼ 花散れり、青のはじまりの季節に
- ジャンル:釣行記
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目的のエリアまで下道だと4時間半。焦る理由もないから高速を使うつもりはない。
土曜日の仕事を終え支度を済ませたら、途中でジェットボイルで晩飯を作り、てきとうな場所で車中泊すればいいと思った。
道半ばで、LINEにメッセージが入る。同じ会社のSさんの釣行プランを聞いて、合流する為に目的地を少しだけ変更する。
「新しいロッドがきたら行こうと思ってたあの川へ」
合流場所は、もともとそう思っていた川だ。
今年2回目の車中泊小遠征。出発時点からあやしかった雲行きからとうとう雨が零れ、車のフロントガラスをワイパーがよこぎった。
┃ぬかるんだ地面に車がハマる
朝4時半。目が覚めて外に出ると雨は止んでいて、Sさんも車から降りてきた。
河口エリアでは前夜まで強めに吹いた風と雨の影響が濃く出ているのか、底荒れのような濁りが見られる。
出鼻をくじかれた感は拭えず、結局一投もせずに移動した。
中流域に遡上するプランでエントリーしたポイントも、めぼしい反応無く夜明けを迎えた。
朝食を取るためSさんはコンビニへ。自分はのんびり調理ができ、そのままエントリーできるような場所に向かっている時に事件は起こった。
「あ、ヤバい」と思った時にはもう手遅れ。早朝からぬかるんだ河川敷に立ち尽くす様は、なんと無様なことか…
合流したSさんと途方にくれかけていると、「引っ張ろうか?」と軽トラのおじちゃんが登場。
何も積んでいないように見える荷台からロープを取り出し、こちらに向かってくる。「そのコースは足が埋まるかも」と思ったら、すでに白の長靴を履いていた。
車を一周してロープを掛ける箇所を見定めると、なんともスムーズな手付きで事は進んでいった。
引っ張ってもらってもなお、簡単には抜け出せないほどのハマり様だった。
おじちゃんが来るまでに自力で脱出しようと足掻いたのもよくなかったのだろう。タイヤはさらに埋まり、泥除けもグニャリと曲がっている。
車体と地面はほぼフラットな為、運転席には非常に乗り込みやすかった。
引っ張る向きやタイミングを合わせて勢いよく抜け出せた時は、今までに味わったことのない爽快感が全身を駆け抜けた。
と同時に、前方から全力で押してくれていたSさんの手が空を泳ぐのが見え、フロントガラス越しの視界からSさんは消えた。
優しいおじちゃんは、感謝の言葉を充分に述べる時間すら与えてくれない程の手際の良さで、こっちに渡ってきた時と同様に颯爽と去っていった。
"ノーマルタイヤの軽トラで自分がたった今ハマっていたちょっと横のラインを"
困り果ててひどい顔をしていたであろう自分に、「釣れた?」と満面の笑みで聞いてくれたおじちゃんの顔を、忘れることはないだろう。
┃花散れり、青のはじまりの季節に
「どういう釣りをするんですか?」
確かそんな質問から、はじまったと記憶している。
そこから各部のパーツ構成を煮詰め、ビルダーさんの手によって組み上がった一本のロッド。
モノを生み出す仕事。思いや価値をカタチにする仕事を垣間見た。
帰り際、少しだけ花残る桜の木のそばに車を停めた。
ついこのあいだまでの主役を埋め尽くし、盛る新緑の葉に感じる初々しさ。
思えば、道中の山々は見渡す限り青々と揺れていた。
もう花散れり、夏草のみちしるべ。
葉や大地潤う、青のはじまりの季節に。
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【タックル&ウェア】
[ロッド]Mellow Noise89
[リール]DAIWA ZILLON SVTW 1016SV-SH
[ライン]VARIVAS avani MAX POWER PE ×8 #2
[リーダー]SUNLINE STATE CLUTCH SHOCK LEADER NYLON 25lb.
[ルアー]Cork 1989Lures
[ゲームベスト]SUBROC V-one VEST A-TACS LE X
[ウェーダー]Pazdesign BS BOOTS FOOT WADER V
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- 2021年4月9日
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