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連載第7回 『雷鳴~長い長いトンネルの出口で見えたもの』

  • ジャンル:日記/一般
  • (小説)
第四章 協働

十月初めのことだった。ボクと清夏は、清水課長に呼ばれた。
「A社に納入する予定のシステムの仕様のことなんだが、先方が、要求水準を上げてきた。価格は据え置き。うちとしては、予定どおりの価格と仕様でA社を説得したい。そこで、この案件を谷山君と木元さんに担当してもらいたい」
ボクと清夏は、二人で同じプロジェクトを任されることになった。担当役員からは二か月で結果を出せと言われていた。楽な仕事ではない。しかも、経験値が高いとは言えない清夏と組むのだ。
「決して簡単な案件ではない。ましてや、現状以上に話がこじれる可能性だってある。そのようなことがあれば、すぐに相談してほしい。役員への相談は私が入る」
やはり清水課長は頼りになる。
清夏は入社以来ずっと営業畑の社員だが、営業第一課に来る前は官庁営業を担当していた。官庁の調達は、原則として一般競争入札なので、あまり営業の余地がない。官庁では、財務省に対して次年度の予算を要求するに当たって、複数の民間企業から見積もりを取り、その金額を参考にして予算案を組む。つまり、予算要求前に官庁から見積もりを頼まれるかどうかが落札の成否を決める可能性が高い。そういう意味では、民間企業相手の営業と比べて競争が激しくないということだ。つまり、清夏は、厳しい環境で仕事をした経験がないのだ。しかも、今度のプロジェクトは、予算的にもギリギリであり、条件交渉がかなりシビアときている。清夏には少し荷が重いはずだ。
なぜ清水課長がボク達を組ませたのか、今ひとつその真意を測りかねていたが、松澤さんとの一件もあり、ボクが清夏にとって良いパートナーになるとは思っているはずだ。ボクには、彼女をしっかりと育てる義務がある。
とはいえ、必然的に清夏と一緒に居られる時間が長くなる。仕事はきついが、ボクにとっては願ったり叶ったりだ。このプロジェクトを成功させれば、清夏との距離を一気に縮めることができるはずだ。
席に戻ってからしばらくすると、清夏からメールが来た。期待と不安が入り混じっている。
「谷山さんと同じ仕事に携われるなんて光栄です! 大きなプロジェクトに関わるのは初めてですし、難しそうな案件なので、不安だらけです(&gt;_&lt;) 至らない点が多々あると思いますが、一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますm(__)m 今日、約束がなければ、壮行ランチでもいかがですか?今日は私がご馳走します!」
清夏のメールには、また顔文字が現れた。プロジェクトの難しさとは裏腹に、ボクの顔は緩みっぱなしだった。
清夏のおごりで食べるランチは格別に美味かった。
 

そのプロジェクトは、最初から困難を極めた。想像していたよりも難しい域にまで達していた。我が社が提供するシステムの仕様への要求水準が高まると同時に、さらに強硬に、価格を下げろとの申し入れがなされていた。ボク達は、始めからA社と我が社の開発チームとの間の板挟みになった。清水課長が担当者にボクを選んだ理由の一つに、ボクが開発と営業の両方を経験していることがあるのだろう。
A社のカウンターパートは大西氏といった。ピンストライプの紺のスーツ、ブルーのクレリックシャツにレジメンタルタイがよく似合う、背が高くて、爽やかで、優しそうな男性だった。年の頃は三十代半ば。年齢、背格好、洋服のセンスのいずれも、ボクとよく似ていた。
大西氏は、表情や話し方こそ柔和だったが、その容貌とは裏腹に、厳しい条件を緩める気配を微塵も見せないタフネゴシエーターだった。
A社の要求を全て受け入れれば、我が社の利益は極めて薄いものになり、到底ビジネスにはならない。担当役員からは「何とかしろ」と言われるだけで具体的なアドバイスは何も得られなかった。
清水課長に経過を報告し、今後の展開について相談すると、交渉がいよいよまとまらなくなった時のための「最後のカード」を授けてくれた。
「ただし、これはあくまで最後の手段であって、可能な限りそれよりも良い条件で交渉をまとめてほしい。このカードについては、木元さんにも話さず、君の中に納めておいてほしい。それからね、谷山君。君はうちにとって極めて貴重な戦力だ。この仕事はかなり難しい。君にしか任せられない。とはいえ、君を二度と倒れさせるようなことはしない。心が擦り切れそうになる前に遠慮なく私に仕事を振ってくれ。『擦り切れる前』じゃない。『擦り切れそうになる前』だよ。仮に私がこの案件を引き継ぐことになったとしても、人事面で冷遇するようなことは絶対にしない。約束する」
やはり清水課長はマネージャーの鏡だ。この人の思いに応えたいという気持ちが湧いてきた。


第4章 3  に続く

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