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連載第6回 『雷鳴~長い長いトンネルの出口で見えたもの~』

  • ジャンル:日記/一般
  • (小説)
第三章 邂逅

数日後、ボクは、思い切って清夏にメールを送り、ランチに誘った。交換した森見登美彦作品の感想を聞きたかったし、ちょっとしたデート気分を味わいたかった。
清夏からすぐに返信があった。
「ランチのお誘いありがとうございます。本のお話を楽しみにしています!」
ランチは楽しかった。会話が途切れるなどという現象は、この世に存在しないのではないかとさえ思えた。入社以来、小説の話がこれだけできる人は、清夏が初めてだった。
気がついたら、午後の始業時刻を五分過ぎていた。ボク達は、清水課長の視線を気にしながら、そそくさと席に着いた。本当は、もっと清夏と語り合いたかった。
 

ある日、清夏からメールが来た。いつもと少し様子が違った。
「相談にのって頂きたいことがあります。今日のお昼は空いていらっしゃいますか?」
なにごとかと不安を感じないではなかったが、もちろん快諾した。
パスタを食べに行ったのだが、清夏は食が進まないようだ。
「どうしたの?」
「松澤さんのことなんです」
「彼女と何かあったの?」
「清水課長から時々ランチに誘われるんですが、女性括りということで、いつも松澤さんと一緒なんです。松澤さんが私のことをどう思っているのか本当のところは分かりませんが、冷たく当たられているというか、嫌われているように感じるんです。メールの文面もきついですし。清水課長には申し訳ないですけど、正直なところ、松澤さんと同席するのが怖いんです」
松澤さんは、筋を通すし、正論を主張する。上司に対しても、遠慮することなく同じ態度を貫くものだから、決して「可愛がられる」タイプではない。自分にも厳しいが、他人にも厳しい。そうしたスタンスを持っていれば、おのずと摩擦を起こしやすいはずなのだが、不思議なことに、対立関係にある人は見当たらない。悪い噂も聞かない。恵美などは、今でも松澤さんに連絡を取っていて、とても良くしてもらっている。
一方、清夏の方はどうか。彼女の仕事ぶりは、まずまず悪くないと思う。ただ、上司の指示に対しては、自分の意見を押し殺して、笑顔で従うところがある。良く言えば素直だし、悪く言えば媚びていると受け取る人がいるかもしれない。それでも十分に合格点を付けられる。
清夏は、おそらく自分の美しさを自覚しているはずだ。清夏の洋服やメイクを観察すれば、容易に分かる。だからといって、それを武器にするような安易な魂胆は見て取れない。
異性には好かれるのに同性には嫌われるという人が時々いるが、清夏はそういうタイプではないと言っていい。その美しさゆえ、確かに男性社員からチヤホヤされることもあるが、それは清夏の人懐こい性格によるものだ。そればかりか、三人の契約社員の女性に誘われて、嬉々としてランチに出掛ける姿を何度も見かけたことがある。どんなに低く見積もっても、同性に嫌われるタイプには思えないのだ。
さて、清夏の相談に対して、どのように応えるべきだろうか。ボクの清夏に対する思いは強い。清夏のためには何でもしてやりたい気持ちがある。その一方で、ボク自身の職場での立ち位置の問題もある。松澤さんとの関係を損なうわけにはいかない。ここは、慎重に立ち回る必要がある。
「折を見て清水課長に話してみるよ。自然なタイミングで、自然に切り出したいから、少し時間をくれるかな?」
「ありがとうございます。谷山さんにはお世話になってばっかりですが、よろしくお願いします」
清夏の顔がパァっと明るくなり、目の前のパスタがみるみる減っていった。
 
清夏から相談を受けてから一週間が経ったある日、たまたま、清水課長がボクをランチに誘ってくれた。清水課長は、時々こうしてボクをランチに誘ってくれる。ボクが病気で休職した後も、以前と同じように接してくれるのだ。
今日の清水課長からの誘いは、清夏の相談を切り出す自然なタイミングになると思った。
この日の清水課長は、とても機嫌が良かった。先日、大きな商談がまとまったからだろう。ランチの間、ボクは、ずっと聞き役に徹していたので、なかなか自然に清夏と松澤さんの話を切り出すチャンスを見つけられなかった。そうこうしているうちにランチを終え、ボク達はオフィスに向かって歩いていた。
清水課長の話が少しばかり止まった。
「木元さんのことなんですが」
「彼女がどうかしたか?」
「理由はボクから見てもよく分からないのですが、木元さんは松澤さんのことが苦手みたいです」
一方的に松澤さんを悪者にしかねないような、「冷たく当たられている」とか「嫌われている」という表現は使わなかった。
「そうなのか。気が付かなかった・・・」
清水課長ほど目配りできる人でさえそうなのだ。
「松澤さんの言い分を聞いていないので、フェアではないのですが、少なくとも二人を同席させるのは、お互いのためにはならないかもしれません」
「分かった。彼女達を一緒にランチに誘うのは控えよう。そういう細やかなところを教えてくれると本当に助かるよ。ありがとう」
オフィスに戻ったボクは、さっそく清夏にメールを送った。
「松澤さんとの件、さっき清水課長に話しておいたよ。もう大丈夫。でも、何かあったらいつでも相談してね。ボクは君の味方だよ」
清夏に対するボクの想いを込めて、少し踏み込んだ書きぶりにした。
「ありがとうございます! 谷山さんのおかげです。今度ランチをご馳走させてくださいね(*^^*)」
清夏からのメールに、初めて顔文字が現れた。ボクは、清夏との距離が縮まりつつあるのを感じた。

第四章 協働 に続く

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