-Style- シャローフィネススタイル-

昨年、プロアングラーとして本格復帰をし、一年を通して全国の様々なフィールドを回る日々を送ることができた。

また、年々減っていく状態だった釣行日数も飛躍的に増え、取材も非常に多く、ロッドやルアーのテスト釣行も増え、フィールドで考える時間が爆発的に増えていった。

そんな中でいくつかのアイディアが生まれた。

その一つがシャローフィネススタイルである。

昨年秋はシャローエリアでの取材が多かったのだが、運の悪いことに全て風の強い日に当たり、非常に魚を出すのに苦戦した。

風はどうしようもない。そんな想いもあるけれど、どうにかしようと考えた。

その経験を元に、もっとシャローエリアにおいて高度に戦術を駆使できるスタイルはないものかと考えはじめ、冬の間の開発期間を通じて、今回のタックルスタイルの開発に至った。




 
●着眼点
通常のタックル(PEライン0.8号+リーダー数十cm)においてPEの傷から起こるトラブル(ラインブレイク&高切れ)が起きやすいのは圧倒的に先端部が多い。

そして意外と釣りの最中より移動・その他の最中に傷が入っていることが多いということである。


これは過去にPE0.6号の導入にチャレンジした際にこの問題にぶつかった。

PE0.6号はおよそ5~6kg程度のライン強力がある。

傷がない状態でしっかりとラインシステムを組めばほとんど問題が無いのだけど、いつの間にかラインのどこかに傷が入っており、魚がヒットした際などにあっさりとラインブレイクしてしまう。

その後に東レと研究を重ねて、その移動の際などのPEの傷は先端5m以内に大部分が集中することがわかってきた。

そこさえ補強すればそれ以外の部分は極端に細いPEラインでも長い間の使用が可能であることが判明したことから開発が一気に進んだ。


 
●シャローフィネススタイルとは?
スズキのルアー釣りの一つのタックルスタイル。

シャロー帯においてPE0.6号以下を使用し、中間リーダー(以後、ミッドリーダー)をつなぎ、普通のリーダーにつなぐタックルを特徴とする。
 
 

 
●場所
主に河口、干潟、サーフ、といった根掛かりしにくい釣りを行うシャローエリアでの使用を想定。
 



●メリット

1.圧倒的な飛距離
PEが細くなると飛距離が増す。普段0.8号を使っている人でも0.4号を使うと、ラインの太さが半分になり、あるルアーで60mのキャストができる人なら70mを超えるキャストができるようになる。

この10m近いアドバンテージを生かすことで釣果を上げることができる。

また、キャストフィールの向上も体感度が大きく、一度シャローフィネスタックルのキャストを体験すると自分のキャスト力が向上したように感じ、かつとても気持ちいいフィーリングを受ける。いわゆるもう元に戻れない感覚である。(誰でも大野ゆうきになったかと思うはずである)

特に恩恵を受けるのが軽いルアーである。

重いルアーは慣性の力が大きく、ラインが太くてもスプールから引きずり出しながら飛んでいくことができる。

しかし、軽いルアーは慣性の力が少ないので、後ろのラインを牽引することができなくて早々に失速する。

つまりルアーとラインの太さ(重さ)は重量比で飛距離が決まるのである。

飛んでいくルアーの重さに対して、後ろに付いていくラインの重さの割合が少なければ少ないほど飛ぶということだ。
 



2.糸ふけ
このスタイル最大の特徴が糸ふけの少なさである。

風が強くなりがちなシャローエリアにおいてキャストの際やリトリーブの際のラインの糸ふけ量が少なくなることで、釣りそのものに変化が訪れる。

飛距離や感度、ルアーの選択肢、ルアーのコース取り、レンジコントロール、操作性、明暗部などにおいては立ち位置までが変わる状態になる。

また、糸ふけが起こす様々なトラブルが低減される。


 
3.強風時の飛距離
強風時の飛距離は従来のシステムに比べて圧倒的な変化をもたらした。

向かい風や横風の時はルアーが失速し、飛距離が伸びない。

今まではルアーの空気抵抗が増すので飛ばないと考えていたが、実はラインが風にあおられることの割合が大きく、ルアーがラインに後ろや横に引っ張られて失速し飛距離が伸びないのである。

(僕自身もシャローフィネスを導入してそれに気づいた)

シャローフィネスタックルでは横風、向かい風、強風といったバッドコンディションの時ほど通常タックルとの差が顕著に表れる。


 
4.感度
PEラインの感度の良さは多くの方が知っていると思うが、シーバスフィッシングにおいてはキャストした後にラインが風でどうしてもたわむため、感度が悪い状態になっている。(オモリが常に下にある船の餌釣りなどを経験した人ならPE本来の感度の良さが理解できていると思う)

リトリーブしている最中はラインが張っている様に思えるが、実はそのラインが張った状態もあくまで風や糸自体の重さなどによる糸ふけ量とルアーの水中抵抗のバランスがとれた状態でのラインが張った状態なのである。

つまりラインが細くなり、糸ふけが少なくなるとラインはより真に直線的になり、感度が高くなる。



5.流れへの追従性
 ルアーの着水後、リトリーブを開始してルアーが水をつかんで泳ぎだし、釣れる動きになるまで、これは風が強くなればなるほど遅くなる。(釣り人にとって着水点より自分側になる)

特にリップのないミノーやシンペンでは顕著にそれは表れる。

着水直後はラインの糸ふけ量も最大で、サミングをしてラインコントロールをしてもルアーの泳ぎだしは非常に遅い。

しかし、シャローフィネスを導入すると、着水直後からルアーが泳いでいることがしっかりわかるようになる。

これにより流れの中で喰わせるための操作性も向上した。

また、強風下でもシンペンなどを使い、流れに乗せる(従来より、はるか遠くで流れの上流側に頭を向かせることができる)ようになった。

(昨年、富津や盤津での向かい風の時、周囲がゼロの中、一人だけ圧倒的に釣ったことが何度かあったが、それは腕前ではなくこのシステムのおかげである)


 
6.水切れの良さ
水中でも複雑な流れが発生し、ラインが張ってルアーが泳いでいる状態でも、釣り人とルアーは決して一直線には結ばれていない。

その原因は水中にある流れがラインを引っ張るからである。

シャローフィネスを導入することで、前記した感度の向上だけでなく、ラインメンディングが非常に簡単になったこと、そして水中でのラインの水切り音の発生も少なくなり、魚へのプレッシャーが低減される事も期待したい。

 

 
●デメリット


1.切れやすい
 PEの強度が0.4号で6ポンド、0.5号で7ポンドと繊細であり、ラインマネジメントができないと簡単に切れてしまう。

ドラグを正しく設定し、ドラグを効かせながらの魚とのファイト、根ズレさせないコントロール技術が必要である。

従って0.8号のPEラインを日常的に使って何の問題も起こさない中級者~上級者向けのスタイルであることを断言しておく。

初心者には0.8号まで落としていってもトラブルがないようになってから使うよう注意を促したい。
 


2.切れるとミッドリーダーを海に残してしまう
 根掛かりなどを起こして最後に引っ張った場合、ラインが切れるのはミッドリーダーとメインラインの結節部になる。

そのため5m近いミッドリーダーを海中に残すことになるので、根掛かりの可能性がある場所では推奨できない。

このスタイルそのもののメリットは沖堤や磯でもそのメリットは発揮され、オープンエリアフィネスともいうべきものではあるのだが、デメリットが出やすいエリアでの使用を普及させることが目的ではないのでシャローフィネスという名前を付けた

もちろんシャローでも根掛かりが多いとわかっている場所では全くおすすめしない。根掛かりそのものが少ない、根掛かりしても回収できる、その判断も自分でできる中級者以上の人向けスタイルである。

とはいえ、一度このシステムの圧倒的な強さを知ると、どうしてもそのリスクを取りたくなる。環境への配慮をしっかりと行って取捨選択を行って欲しい。



 
 
●タックル解説



ロッド

アピア風神ADシャローフィネスを開発


小口径ガイドを搭載し、胴調子アクションが特徴のロッド。

キャストした瞬間にメインラインとミッドリーダーの結節部(以下、ノット)がロッド内を通るため、キャスト後のロッドの振動収束性を少しでも高める必要があり、バッドに4軸カーボン、ティップまでカーボンクロスを巻くことでロッドのねじれ性能を強くし、さらに重量の軽い小口径ガイドを搭載することで振動収束性を高めている。

また、リールからのライン放出の際のラインぶれを低減させるガイド設計を行っており、専用ロッドを使うことでシャローフィネスのメリットが最大限発揮されるようになる。(飛距離含め)


ちなみに通常のロッドでも効果を実感することはできる。




リール

~3000番のリール。ドラグがフィネスであればあるほどいいのでなるべく性能の良いものを使いたい。

現在使用しているリールはセルテートハイギアカスタム2506H。Max3kgのフィネスドラグを搭載しており、それでいてハンドル1回転90cmとクラス最高のスピードが出せる。

できれば3000番台のリールの発売が待たれる。

もしくはブランジーノ、シマノエクスセンスなどのレバーブレーキモデルも細かい調整ができるので面白い。

なお、極細PEラインはスプールへの巻き取り厚さがほとんど無いので、今まで使っていたラインの上にそのまま巻くくらいでちょうどいい。

また、結びこぶを残すといちいち引っかかって相当イライラするトラブルとなる。

そこで、結びこぶの上にテープを貼って巻いていくとトラブルにならない。



 

メインライン

極細ラインで安定感に勝る4本編みのPEラインを使用する。

号数は0.4と0.5号と0.6号。リールには150mを巻く。

東レインターナショナルより10月にシャローフィネス専用PEが発売される。
 


ミッドリーダー

メインラインとリーダーをつなぐ中間リーダー。0.8~1.0号の8本編みPEライン。摩耗性、傷の入りにくいコーティング、メインライン(PE)とのノットが閉まりやすい摩擦係数を高めたハードコーティングをしている。

またこれはメインラインとの結節をしやすくするために、やや固い(針金感)感じを出すことを兼ねている。

 

ミッドリーダーを使用する目的は2つ。
まずはキャストの高切れ防止。PE0.5号では14g程度のルアーをフルキャストした際に頻繁に高切れを起こしてしまう。

そのため、ミッドリーダーを用いることで、キャストの際にラインにかかる負荷を受け止める事を目的としている。そのためキャストする状態で竿先にルアーを垂らした状態で、スプールに最低でも7~10周くらいの巻き込みがされる長さが必要になる。その場合の長さは9ftで5m。10ftで6m。

また、その巻き込みを視認しやすくするためにメインライン(白色)と違うラインカラーを用いた。

もう一つの目的は対裂傷性である。メインラインは小さい傷でもラインブレイクにつながってしまうので、極力キャストした時以外はスプールからの露出を避けたい。

ミッドリーダーを用いることで、釣りの最中や移動の際に傷が入ったとしても太いミッドリーダーが傷付くためにラインブレイクにつながるダメージを受けにくい

また、ミッドリーダーは傷の有無をチェックしやすい濃いカラーを採用し、傷が入ったらミッドリーダーをどんどんと交換することで長期間にわたってメインラインを使うことが可能。

今までは傷などが心配でラインシステム先端部を詰めていくといずれ全量巻き替えが必要になるが、そうではなく、ミッドリーダーを交換する方式なので経済的にも優しくなるかもしれない。
 
東レインターナショナルより10月にシャローフィネス専用ミッドリーダーが発売される。0.8号と1.0号1.2号の3ラインナップ。

色は緑色。30m巻き。1m単位で長さを変えて使用するために110cmごとにホワイトマーキングがしてある。

 
なお、メインラインとミッドリーダーのノットはFGノットを用いる。専用品であればPE同士の結節でも普通に結んで問題は起きない。

普通のPEでも編み込み回数を増やすことで使用に関しては一切問題が無い。

PRノットやSFノットでも可能。メインラインに結びこぶを作る電車結びなどのノットは簡単に切れてしまうので絶対にやってはいけない。(PEラインは結びこぶの強度が直線強度の30%まで落ちる。必ず摩擦系ノットで締めること。)
 



リーダー
ミッドリーダーの先には通常のリーダーを使用する。

ナイロン、フロロ、どちらでもかまわない。

僕の場合は16ポンドを40cmほど。キャストの際にトップガイドの中には入れない。

ミッドリーダーとのノット部はFGノットを用いる。
 



フック

フックに関してはドラグ設定が1kg前後となるため極力鋭いものにしたい。

それ以上の負荷を掛けないので、細軸のフックでもOKだと考えている。(その事でさらにルアーの動きを良くできるかもしれない)

現状対応できる専用商品は少なく、今後の開発を待ちたい。現状お薦めできるのはカルティバのST-31やカツイチのYSトレブルフック、がまかつのトレブルSPのミディアムなどが向いている。
 


●その他必要なグッズ


ドラグチェッカー


繊細なラインを使うので、ドラグ設定値はシビアに行いたい。手で引っ張った感覚量ではまずラインブレイクを招くので注意。

ドラグ設定値はリールの性能にもよって変わるが、ライン強度の1/3に設定すれば、魚が走った際にドラグの追従性が悪いことによるラインブレイクは皆無になる。
 
PE0.4号は6ポンド強度  1/3は2ポンド なので  0.9kg
PE0.5号は7ポンド強度  1/3は2.33ポンドなので 1.0kg
 
計算はおおまかだがこんな設定となる。ドラグチェッカーやフィッシュグリップの重量計などを用いて正確に行いたい。

また、その設定値にスプールとドラグノブにマーキングを施し、ファイト中に締めたり弱めたりしても再度戻せるようにしておくのが大事。
 
ちなみに通常のアングラーのタックルのドラグ設定値は1.0~1.5kg程度の設定値の人が多い。

1.0kg設定は50cmのフッコとのファイト中にジリジリとドラグが出る感じであり、実はすでに多くのアングラーが手で引っ張って適度な設定にしているドラグとあまり変わらない事を明記しておく。

 

 
余談

面白いことに、今まで飛ぶとされてきたルアーのうちの一部がこのシャローフィネススタイルで投げると飛ばないということが起きるようになった。

これは弓矢の原理で解説するとわかりやすいが、弓矢は矢尻に羽が取り付けてある。これは矢尻に空気抵抗を掛けることで直進性と飛行安定性(ローリング、ヨーイング、ピッチングの抑制)を増すことが目的で、結果的に飛距離を最大化できる。

ルアーにおいてはリップなどの空気抵抗を発生する突起物と後ろに引っ張られるラインがその役割を果たす。

このラインの抵抗がPE0.8~1.5号くらいで設計(意図的にも結果的にも)されたものに関し、シャローフィネスはラインの空気抵抗が激減しているので結果的にヨーイングを発生し、失速して飛距離が出なくなるルアーが存在する。

一方で今まではその抵抗が大きく、失速して飛ばないルアー(往々にして泳ぎは良いけど飛ばないルアーが多い)に関しては飛距離upが著しいものもある。
 
 



最後に

シャローフィネススタイルは一度体験してみないとわからない世界だと痛感している。

今まで10人ほどの人にシャローフィネスを投げてもらったが、全ての人が1投目に思わず声を上げる。

それがなぜか。


ぜひシャローフィネスを体験して欲しい。


すぐにわかると思う。




あともう一つ、ラインブレイク、根掛かりによるフィールドへのライン残し。

それを確実にコントロールできるようになってから採用へと踏み切って欲しい。


ラインブレイクした魚を待つのは死である。




10月22日 葛西臨海公園にてシャローフィネス&アピア全モデル試投会を開催。

ぜひお越しください。詳しくはこちらから。











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