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上宮則幸

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寝枕の夢 第一夜


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以前ならばデカイ魚を釣り上げた後ってのは、嬉しさも束の間、もっとデカイ魚が釣れるかもしれない、と更に躍起になって通ったもんだ。
現在は、fimoやFBへの投稿に沢山のメッセージをもらうためか、喜びが次第にこみ上げ、暫くその釣果に満足してしまい、以前とは逆にフィールドから足が遠ざかるようになった。
だがあの日の夜、こんな夢を見た。





おれは肝属に浸かっていた。
去年もメーターを出したピン。
岸際に沈むその構造物は、干潮時であっても水面に殆どヨレを作らない。
流れが直接当たらないちょっとしたワンド状の地形の、水の緩んだ内側にソレが沈んでいるから、一見してソレを見付けることは出来ない。
ソレをおれがどうやって見付けたか?
圧倒的に濃い魚影の恵みのお陰で、魚釣りの事がわかった気になり始めた若造の頃に話は遡る。



しらみ潰しにルアーを撃ち込み、不思議と毎回デカイ魚がボン!と出るこの場所を偶然見付けたのだ。
潮が代わればまたデカイ魚が着き、時には掛けても全く相手に出来ない程に得体の知れない巨大な魚にヤられる事もしばしば。
ヨレもそれほど出ないし、何も沈んでいないようだが…
試しにバイブを沈めると流れとの際で根掛かりした。
竿で煽ると、何か硬質なガチャガチャした感触。
ラインを切り、ソレが何なのかを確かめに対岸に渡った。
人が長く立ち入った事が無いと思われる、濃いススキの原を掻き分け岸際からその辺りを見た。
そしておれはソレを見付けた。
ソレが沈んでいるのは淀みの中だが、僅かに流れの際がソレをかすめる程度。
ちょうど流れから弾かれたベイトがフワフワと淀みに迷い込んで来た。
ソレはそう言うベイトをモンスターが楽して補食する格好の食事場だったんだ。

以来ソレはおれだけの珠玉のピンになった。
ソレは、モンスターを産むかのような、そんな錯覚すら覚えるほどに毎年毎年巨魚をおれに抱かせてくれた。
ある時、ソレは長い期間釣れない事もあった。
どうしたんだろう?と潜って確かめた。
ソレが泥に半分埋もれてしまっていた。
少し上流の岸が大雨で少しだけ崩れ、流れが僅かだがソレから離れたのが原因だった。
崩れた土が次第に抉られ、元通りの流れになるとまたソレはモンスターを産み始めた。
ソレは付近の僅かな地形変化の影響を受け、極めて微妙なバランスで成り立っているピンだが、逆にソレが川鱸釣り師として最も重要な地形や流れの相関関係の見極めをおれに教えてくれたようなもんだった。





だが今は……
エリアにボラも溜まり少ないながらもソレの付近にヨレも出て、凄く良さそうに思えるんだ。
でも不思議と全く何も起こらないのは何故だ?
どうしたものか?

気付くと対岸にいた。
この背の高いススキの緑を捲ればソレが見える。
一歩踏み出す代わりに、両手を突っ込み緑のカーテンを開けるように隙間を作り顔だけ突き出した。
青臭い空気から一変、少し湿った泥の匂いの中、おれはソレを見た。


心房と心室の動きが一瞬乱れたかもしれない。
血が熱くなったのは間違いない。
ソレと流れとの間にヤツが見える。
緑色の水の底に保護色みたいに同系色だが一際濃い緑色のブットイ背中。
圧倒する程に太い胴から、急激に狭まり鋭角的な印象の頭部は獰猛さと俊敏さを併せ持つ。
丸い尾鰭だけが小さな波形を絶えず描き動き続けるが、その優雅さたるや…
頭部の比較的前方に位置する小さな眼が機敏に動いたような気がした。
おれはたじろぎ半歩下がる。
顔面に青臭い空気が再びかかる。
ハッとなってすぐにまたカーテンをめくる。
だが、水底の濃い緑色の背中は吸い込まれるように流れの緑色に静かに溶けて消えてしまった…



夢から覚めた。
血に熱さと鼻腔に湿った泥の匂い。





釣り師の性がおれを駆り立てやがるんだ。
導きに従え、渇きを癒せと。










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