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地磯 イソマグロ2020-2

バチーンと乾いた音が響いた。

やられた!
ラインブレイク。

30kgはあろうというデカイキハダだった。

文明から隔離されたような僻地の磯で私はひとり喚き、叫んだ。


獲れていた魚のはずだった。

魚は完全に浮いていたし、十分に空気も吸わせていた。

だが、魚は私がランディングの体勢にはいる時にできた一瞬の隙を見逃さなかった。
リーダーを掴み、ロッドを後方に放った瞬間、キハダは息を吹き返し走りはじめたのだ。

為す術はなかった。
仮にリーダーを持つ手を緩め、ラインブレイクを回避しようとしたところでタックルごと持っていかれるのが関の山だったろう。

何がいけなかったのだろうか?

ファーストランやセカンドランで魚にラインをきられるのは仕方がないとしても、ファイトの最終局面、つまり磯際の攻防は釣人の腕や技術でカバー出来る部分が多いはずだ。
認めたくはないがこのキハダのラインブレイクは私の実力不足、判断力の欠如が原因であることに間違いなかった。それが悔しかった。

何がいけなかったのだろうか?

その晩、私の頭の中ではキハダを想定した模擬戦が繰り返し行われていた。




5/15
終業後夕マズメ狙いで地磯に向かう。
曇り。
強い順風時々横風及び逆風。
強風のせいか、前日までと比較して肌寒い。海上は凪。

使用ルアーは別注ヒラマサ220。
昨日のキハダもこのルアーでヒットさせていたので験を担いだ。

キャスト開始から10分ほどで早速イソマグロのチェイスがある。

経験上、釣りを始めてすぐに魚からの反応がある日は高確率でそのうちヒットしてくる。

今日もくるかもしれない。

そんなことを考えていたら次のキャストので本当に魚がヒット。

磯からの距離20mほどの場所で泳ぐ別注ヒラマサに、後方から高速で泳いできた魚が勢い良く食いついた。

魚は補食した餌に違和感を感じたのか泳ぐのを止め、水面下でバタバタと身じろぎをする。この時、魚がはっきりと目視出来た。良型のイソマグロだ。

イソマグロなら魚が泳ぎだすまえに浮かせることができれば短期決戦に持ち込めるかもしれない。

そう思い、魚が止まっているうちに出来る限りのプレッシャーを与えてみるも、魚はそんなことなど意に介さず沖に向けて泳ぎだした。

リールがこれまで聴いたことのないほど甲高い音をたてている。
とんでもないスピードの走りだ。
見えた魚体はそこまで大きくはなかったが元気の良い魚なのだろう。

イソマグロの走りは割合すぐに止まった。
スピードの出しすぎで体力の消耗が早かったのだろうか。

魚を寄せにかかり始めると、ラインは徐々に左手にある浅根帯に近づいていく。

少しでも早く寄せて浅根を回避しようと試みるも、ラインの回収は追い付かず魚は浅根に到達。

リーダーが根に噛んで擦れている感覚がある。
イソマグロは自らの意思で岩礁に逃げるような魚ではない。
このようなときは魚が泳ぐ方向を変えるのを待つ。

少しラインのテンションを緩めて様子を窺う。
魚はルアーの存在を嫌がっているのか何度も頭を振っている。
竿先が叩かれる度にラインが切れるのではないかと肝を潰すが、こちらとしてはまだ静観するしかない。


そのうちラインは右に向かい始めた。
魚が浅根帯から遠ざかっているのだ。

とりあえず窮地は脱した。
次は磯際の攻防だ。

魚は磯の直近まできたがなかなか浮いてこない。

低速だが磯際を右へ左へと絶えず運動を続けている。
磯の張りだしを回避するために私も立ち位置を頻繁に変える。

この犬の散歩状態に辟易したので渾身の力を込めて浮かせようと試みたところ、あろうことか魚は逆に磯にそって走りはじめた。

ラインが磯の張りだしに触れそうになる。
あわててラインをフリーにして魚の進行方向に走る。
安全なところでラインテンションをかけると魚の重みが伝わる。危機一髪だった。

それにしてもなんというしぶとさだろうか。

こんなに持久力のあるイソマグロははじめてだ。

幾度かの磯際でのラインの出し入れの末、ようやく魚がその全貌を現した。
水面まで浮いてきた魚が動かないことを確認。
一気に水面すれすれのランディングゾーンまで崖を駆け降りる。

ここからは昨日のシミュレーションどおり、竿を置かずに保持したまま足下にあるギャフを取る。
今の位置なら足場が低いので竿をもったままギャフ打ちが可能なのだ。昨日のキハダと同じ轍は踏みたくない。

通常、ギャフ打ちは魚の顎部をねらっているが、今回はその余裕は無かった。
この魚は絶対に獲りたい。

もし魚が死んでしまったとしても、それはそれで構わなかった。それほど必死だった。

とにかく魚に目掛けてギャフを下ろすと後背部に一発で命中。
魚はまだ海面にいるが、ファイトの疲労と安心感からその場で座り込んでしまった。

良いファイト、タフな魚だった。

魚を釣り上げたことそれ自体より、昨日のバラシを生かしてファイト出来たことが嬉しかった。

イソマグロを陸揚げし計測すると全長140cm弱。重量は目方で30kgといったところ。

魚はやはり死んでしまったが、持ち帰ることはしなかった。
スポーツフィッシングという行為は結局のところエゴイスティックな遊びに過ぎないのかもしれない。


この不毛とも思える磯の大物釣りを長く続けるコツは、バラシの絶望と釣果の歓喜をバランスよく体験することなのだろう。

掛かったら100%キャッチできるようではファイトに刺激がないし、バラシてばかりだと面白味がなくそのうち諦めてしまうかもしれない。


この釣りをしているとラインブレイクは避けて通れないが、釣人の努力次第である程度その数を減らすことが出来るのは間違いない。その過程に、バラシ軽減への試行錯誤にこそこの釣りの真の価値が見出だせるのかもしれない。

この2日間の経験からそんなことを考えていた。





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