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関根崇暁
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▼ 何時かのクリスマス・イブ
- ジャンル:日記/一般
- (釣りのあれこれ)
今にも雪が降り出しそうな鉛色の低く重く広がる空の日
クリスマス・イブの夕暮れ、僕は独り河原に降りた。
鼻空を突くようなツンとした寒さの中、0.4号のライン、7フィートのウルトラライトの竿を持ち小砂利と枯葉落ち葉の上をザクザクと歩く。
山の稜線が薄紫色に染まる頃、湖には遠くライズリングが広がる。
吐く息で悴む指先を暖めながら、静かにそのライズがこちらへ向かってくるのを待つ。
世の中はクリスマスで浮かれているのだろうが、そんなのは知ったことではなく、その時、僕は目の前の魚をどう釣るかだけを考えていた。
渓流域に居た本流育ちのトラウトがこのダム湖へ降りてくるのは12月。
毎年決まって、霜の降りる頃には熱い釣りの季節があった。
釣堀ではなく、その場所で釣れる尾鰭がピンと伸びた虹鱒は格別な釣り味があったものだった。
薄暗くなり手元が見えなくなる少し手前、ライズリングを通過させる3gのスプーンにアタリが出る、直後反転と共にドラグ音が鳴り響き、40m先の水面がタパンッ!と弾ける様に割れ、虹鱒が弓形になりながら宙を舞う。
相手は50cmといえ、ラインは直結のナイロンライン0.4号
ギリギリのセッティングであることは間違い無い、スリルを味わいたいのではなく、過去の経験が釣る為のタックルを僕に選ばせた。
徐々に距離を詰めて、浅瀬に横たわる虹鱒は雄。
クチバシの様な尖った顔、頬からは燃えるような紅一筋。
三角定規の様な尾鰭に細かく繊細なまでに規則正しく、散りばめられた黒点、力尽きるまでの野生のその息遣い。
その時、カメラは持っていたが、どういう訳か収める気にならなかった。
これまで以上に完璧な魚体を記憶に焼き付けたかった。
写真にしてしまったら違うものになってしまう、そんな気がしていたのである。
上あごの縁に刺さったフックを外そうとしたとき、鱒の犬歯は僕の指先にプツリと穴を開けた。指に赤く黒い血が滲んだ。
そして針を外した鱒の口にも同様に血が滲んだ。
独りと1匹の世界がそこにはあった。
ゆっくりとゆったりと深場に向けて体をくねらせて鱒は帰ってゆく。
僕も、そのスプーンをワレットに直し、リールにラインを巻き取ると、煙草の煙に包まれながら、ゆっくり釣場を後にした。
きっと、その日、それが最後であることを知っていた。
あれから十数年経ち、僕はそのフィールドから遠く離れた九州にいるのであるが、この時期になると、毎年その夜を思い出す。
今は温かな家族と共に、温かな部屋で、独り思い出す、そして考える。
それでも、それが最後で良かったのかもしれないと。
■何時も釣れない釣師のログをご覧頂きありがとうございます。
■皆様のご意見・ご感想をお待ちしています。
■もっと書いてくれと思っていただける方、遠慮なく、ソル友、ファン登録、fimo会員登録をお願い致します、お気軽にどうぞ
クリスマス・イブの夕暮れ、僕は独り河原に降りた。
鼻空を突くようなツンとした寒さの中、0.4号のライン、7フィートのウルトラライトの竿を持ち小砂利と枯葉落ち葉の上をザクザクと歩く。
山の稜線が薄紫色に染まる頃、湖には遠くライズリングが広がる。
吐く息で悴む指先を暖めながら、静かにそのライズがこちらへ向かってくるのを待つ。
世の中はクリスマスで浮かれているのだろうが、そんなのは知ったことではなく、その時、僕は目の前の魚をどう釣るかだけを考えていた。
渓流域に居た本流育ちのトラウトがこのダム湖へ降りてくるのは12月。
毎年決まって、霜の降りる頃には熱い釣りの季節があった。
釣堀ではなく、その場所で釣れる尾鰭がピンと伸びた虹鱒は格別な釣り味があったものだった。
薄暗くなり手元が見えなくなる少し手前、ライズリングを通過させる3gのスプーンにアタリが出る、直後反転と共にドラグ音が鳴り響き、40m先の水面がタパンッ!と弾ける様に割れ、虹鱒が弓形になりながら宙を舞う。
相手は50cmといえ、ラインは直結のナイロンライン0.4号
ギリギリのセッティングであることは間違い無い、スリルを味わいたいのではなく、過去の経験が釣る為のタックルを僕に選ばせた。
徐々に距離を詰めて、浅瀬に横たわる虹鱒は雄。
クチバシの様な尖った顔、頬からは燃えるような紅一筋。
三角定規の様な尾鰭に細かく繊細なまでに規則正しく、散りばめられた黒点、力尽きるまでの野生のその息遣い。
その時、カメラは持っていたが、どういう訳か収める気にならなかった。
これまで以上に完璧な魚体を記憶に焼き付けたかった。
写真にしてしまったら違うものになってしまう、そんな気がしていたのである。
上あごの縁に刺さったフックを外そうとしたとき、鱒の犬歯は僕の指先にプツリと穴を開けた。指に赤く黒い血が滲んだ。
そして針を外した鱒の口にも同様に血が滲んだ。
独りと1匹の世界がそこにはあった。
ゆっくりとゆったりと深場に向けて体をくねらせて鱒は帰ってゆく。
僕も、そのスプーンをワレットに直し、リールにラインを巻き取ると、煙草の煙に包まれながら、ゆっくり釣場を後にした。
きっと、その日、それが最後であることを知っていた。
あれから十数年経ち、僕はそのフィールドから遠く離れた九州にいるのであるが、この時期になると、毎年その夜を思い出す。
今は温かな家族と共に、温かな部屋で、独り思い出す、そして考える。
それでも、それが最後で良かったのかもしれないと。
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- 2013年12月24日
- コメント(5)
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