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恩師・師匠

  • ジャンル:日記/一般
17歳の夏、僕は知り合いの紹介で、ある職にアルバイトとして着いた。
「適当にやって」
右も左も、右って何?左って何?
ほどのレベルで、社会経験も全く無い17歳のヒヨッ子は、ぶっつけ本番で現場と向き合った。

「おぃ、焼酎ある?」

「はい、ございます」

「水割りお願い」


水割り?なにそれ?
今思えば笑える。酒の経験もない高校生のガキに、お酒の作り方?飲み方?もヘチマも無い。
果たしてこんな僕がお酒を作って良いものなのか?
分量はめちゃくちゃ。
絶対に濃かったと思う。
数時間後、トイレで居眠りをこく、お客様の姿がそれを物語っていたように思う。
しばらくして、天ぷらを各テーブルに配り、船は走り出した。
目指すのは、現代の人間が一人一人作りだした自然の美しさとは違った、光輝く芸術の点。
これが折り重なったときの美しさは人間だけが知る、青く、赤く、黄色い。
それが混ざった色はさらに美しい。
LEDの色合いが作り出す、言葉では現せられない美しさに息を飲んだ。

"この景色で、飯を食ってるんだ"

感動した。
風情、景色、現代。
古き良き色合いを残しつつ、現代の作り出した芸術を見せつつ、お酒で盛り上がる世界。
操船の為に開けられた天井からちょこっと親方が顔を出し、走りなれた横浜港の航路を、良い角度で、絶妙なスピードで流す。
"こんな世界があるんだ"
終始感動した僕は、その日そんなノリで1日を乗り切った。
あの感動は今も忘れられなかった。

■社会人10年目■

「あれはやったのか!」

僕は物忘れが多く、日々、厳しかった親方の目は普通の人間を教育するより苦労したと思う。
無口な親父の元で育った自分は、毒を吐けば今まで生きた中で、正直一番うるさい親方だった。
しかし、そんな失礼な言い方は出来ない。
こんな仕事の出来ないヒヨッコを雇い、今の時代に合う育て方を見極め、僕は育った。
心の底からあの屋形船の親方に僕は本当に感謝しているし、今も大好きだ。

今生きてきて思う、社会人としての常識、人間関係、仕事に対する姿勢。
そこで鍛えられた一流の目。
妥協のない行動、小さなミスも許さない、鋭い眼光。
これらはすべて。
「この親方に認められたい」
仕事へ向かう覚悟、背負っているものの大きさは、今の僕より大きいと思う。
"僕は食らいついた"
糞味噌に言われても、仕事が出来なくても。
細かな行動を決して見逃さない大先輩に認められたかった。
小さな行動から垣間見る、絶妙な優しさ。
そんな、優しき、厳しい一人の人間。
そんな親方が一人の人間として本当に好きで、今だに甘ったれた電話を掛けても、話す声を聞けば背筋が伸びる。
そして言葉少なく、僕の今の状況を判断し的確すぎるアドバイスがいつも心に刺さる。
僕の仕事に対する姿勢、気持ち、構えはこの親方がお手本である。

■女将■

性格が180度正反対な女将さんは、とにかく人を誉める。
褒められて嫌な人間などおらん。
作る料理は豪快で、調味料の分量は目分量も目分量。笑
センスある人間は感覚でものをこなすが、パッパッパーっとあっという間にキュウリは浸かり、鳥はお湯で躍り、穴子は油で反り。
熱い油で、普段動かない野菜も命を吹き込まれたかのように、でも、油で揚げられてる事には気づく前に裁かれる。
この手つき、見事な仕事さばき。
歯を磨きながら掃除をこなす女将さんにはもう少しゆっくりして欲しいが、そんな言葉は棺桶に入った頃響くだろうか?笑
四季、仕事、土地柄で味付けや料理のメニューを変え、まな板の上で走る包丁の後を、揚げた天ぷらの数をこなした事を物語る手の甲の跡が、その後を追う。
軽快なトーク、軽い足、体に不調があろうともその姿は見せないその芯の強さ。
僕のように、精神的に弱い人間には励みになりすぎる、お一人。
ご本人の前でこんな事は恥ずかしくて言えないが、冬に作るきりたんぽ鍋が旨くてお客様に嫉妬したくらいだ。笑

■人に助けられてきた人生■

僕は一人じゃ何も出来ない。
人、友、恩師、先輩、仲間。
に恵まれてきた人生。
広く、浅く
ではなく
"少なく、深く"
それでも良い。
薄っぺらい笑いを取る為に神経を使うくらいなら、人生について真剣に語ってくださる大先輩と話したほうが、俺は有意義だ。
俺は、親方や女将さんのような立派な人間になれるだろうか?
比べるものでは無いが、まだまだ努力が足りないのは確かだと思う。
悔しいけど、超えられない壁はある。
いつもありがとうございます。
お二人を思い、ここ二ヶ月、このブログを書きました。

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