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車椅子の釣り師

  • ジャンル:日記/一般
シュンッ...シュ..ヒュッ...

竿を振り抜く心地よい音と共に、街灯が少ないこの港には当時、沖で青物が回っている情報もあっという間に回って、多くの釣り人がキャストした先を睨み付けていた。
ヒットに持ち込めるのは、全体の1割いれば良いほうで、ショアジギングなど開発の走りの時代だったので、強めのシーバスロッドやシーバスロッドでも長尺モデルを握る人、かご釣り用の竿でジグをロングキャストする人が多かった。

当時の僕の狙いは、青物の下にいる鱸。
この考えにたどり着いたのは、その年の夏の事。
青物があちこちで乱舞し、ナブラを追いかけ、キャストして、、
それでも思うように多くの人間がヒットに持ち込めていなかった。
ポツ・ポツ・っと青物がヒットする事がより釣り人を迷わせ、ルアーを取っ替え引っ替え、立ち位置をあっちこっちしてる人が多かった。
変わり者の僕は、状況的にナブラは追わず、まずは流れを読んだ。
ここだ!ってポイントに陣取り、レンジを変え、手を考え、考え方を変え、変わり者の性と言わんばかりに、3連チャンで鱸を釣った。

笑った。

その再現をしてやろうと、青物が回るエリアへ足を運び、流れが絞られ払い出される端に立ち、朝から、端から、俺の狙いは鱸だった。
が、その日は鱸をヒットするまでに至らなかった。

回りが明るくなり始め、青物師の人数が半分くらいになってきた頃、港を歩き、竿を振る人達にその日の状況を聞きながら歩いていると、遠くに見えたのは車椅子から海を見つめる人が1人。
しかも竿を振っている様子が伺えた。

「どーですか?」

「釣れてないよ」

ムッとする言い方だった。
投げてるルアーもすぐに隠し、あまり話をしたがらない感じだった。
これが車椅子釣り師とのファーストコンタクト。

邪魔したら悪いと思い、

「わかりました、頑張ってください」

そう一言、言うと、

「君も青物?」

「僕は鱸狙いです、青物の下に鱸がいるはずなんですけどね~笑」
っとその場を立ち去った。

帰り際

あまり話しかけないよう、少し遠回りするように立ち去ろうとすると、僕を待っていたかのように振り向き

「釣れたか?」

「いやダメです」


「今日は光量が多いし、流れはこっち。もう少しでベイトが浮き出すのと、流れが太くなるから、そろそろ釣れると思うよ」

何を狙ってるのかは言わないが海を知ってる口調だった。
これで釣ったらかっこよすぎるぜ?っと思いながらも興味が湧いたので、隣で少し振らせて頂いた。
話しかけても一言二言返ってくるが会話が続かず、釣りに集中してる様子だったので見守ってみた。
時間帯からして青物狙いではないようで、青物をきっかけに何か違う魚種が見えてる事は言わんとわかった。
この、かっこよすぎる宣言から
30分経ち..
1時間が経ち..
1時間半が過ぎ、いよいよ流れが落ち着いてきた。

....

微妙な沈黙が続き、帰るに帰れないこの状況。
どーしてくれるんだ、この空気。
軽快に振る竿の音だけが響き渡る。
横目で見えたルアーはインチクで、ボトムでジャークさせて何かを誘っていた。

ガシっ!!食った!! 

竿が大きく曲がった
手慣れた手つきで魚を寄せ、あっという間に玉入れに成功した。
ああ~これで帰れる!
ナイス魚!!こんな愛想の悪い人から解放される!!笑
上がってきたのは、60センチに迫る大きなヒラメだった。

「ぁああ~はっはっはぁあ~~!!!!
釣れなかったらどうしようかと思ったよ、若いの!!
ぁああ~はっはっはぁあ~~!!」

引くくらいの大笑い、少年のような笑顔に連られ。思わず笑ってしまった。

「ヒラメ狙ってたんですか!?」

「そーだよ、青物より先にベイトに付くのはヒラメだからね!沖から大量に回ってきて、この群れがサーフに走るんだよ!今年はそんな傾向だな!来週からあっちのサーフに回るぞ!」

「どーやってベイトを読むんですか?」

「海に教わりなさい、若いの。笑」

カーッコ付けやがって、クソ。笑
でもそれは言った通りだった。

その後、愛想悪くてごめんな。っと一言。
どうやら青物師が車椅子の回りを行き来し、煙たがられてるのが腹立たしかったようだ。
「そんな日に限って俺の目の前でナブラが起きちゃうんだもんな~笑」
っとファーストコンタクトで見た表情と同じ人間とは思えない柔らかい顔をしていた。

「同じ釣り好きなんだから、自分が釣りたいが為に舌打ちしてきたり、飲み食いしたゴミはそのまま。
たばこは捨て放題に、挨拶もできない輩が多すぎるな。」

っと、当たり前の事を言っているのに、なんでこんなに胸に刺さる言葉なのだろうと思いながら、足元に落ちてる真新しいジグの箱を僕は拾った。

「青物の下の鱸を狙う子は初めて出会ったなぁ~。その考え俺は好きだよ」

「良い空気の釣り場を願っているのに、俺が空気悪かったな。笑」

そー最後に労いを頂き、立ち去っていった。
今は釣りをしているだろうか?きっと僕の事は覚えていないだろう。

後生に、この素晴らしい魚釣りの魅力を伝え、フィールドを1つでも多く残す為には、小さな当たり前の行動の積み重ねであり、自然と対話し遊んでいる我々こそ、挨拶、礼儀、モラルの問題は、問題になる前に当たり前のように出来なければならないし、釣り人が最前線で進んで行かなければならないのに、釣り場に落ちているゴミの多くは、まだまだ魚釣り用品のように思う。

''釣り人が居る場所は、ゴミも無いし、居心地が良いな~って言われて当然な世の中になって欲しい''
とても大切な事を教わった。

っと帰りの道中、そんな事を考えさせられた出来事だった。
僕もそういう世の中になって欲しいと心の底から願う。

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