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上宮則幸

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因と縁 14

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実釣11日目

日付が変われば相方の誕生日。
それはおれも覚えていない筈ないが、のうのうと釣りに行かせて!と頼んでみる。
すんなりと出撃の許しが出た。

道中のクルマの中でうんと昔の事が思い出された。
あんなインドア派の相方にウエーダー着せてよくも夜の川なんかに浸からせたもんだと、我ながら呆れて笑える。
魚を見せた時に、彼女が思いきりすっとんきょうな声を挙げてたのは、あの魚に対する驚きからか?一人ぼっちから解放された喜びからか?

ただ、あの魚の魔力には抗えないもがあるって事を、釣り師ではない彼女が妻となった今でも理解しているとすれば、遠い昔のあの夜に無茶した甲斐も少しはあったのかもしれないな。
勝負の夜に気分良く送り出してもらえた事に感謝をした。

そう、勝負の夜だ!

今夜も抗えずに川に向かったのには明確な理由があった。
南東風だ。
毎日モニタリングしている近海の海水温が上昇に転じた。
桜の花が散り、田んぼのカエルが合唱を始め、松林でハルゼミが鳴き、雨に濡れた路面にミミズが這い出す…
それに南東風が吹けば…と思っていた矢先に、それが吹いたのだ。
通勤中に渡る幾つかの橋から見える肝属の上流域の水から黒濁りまでもが消えた。
全ての条件が上向いた、この春最初の日だった。

狙い打つタイミングは干潮潮止まりの揺り返しの流れが出始める頃からの予定だが、出発は随分早い時間だ。
先ずは上流の荒瀬川と本流との合流点から。
水温の調査。

荒瀬の水が、本流の、ある位置を流れている事が、非常に重要だと気付いたのは確か三年前。
その前の年にカワヌベのバイトのあったスポットと各支流や本流の水質との関係を精査していた時に、その仮説は生まれた。
カワヌベは水を選んでいるのではないか?
それ以降の春に、確実に釣果を残せている事と、それは確実に密接な関係があると確信に至った。

そして、「本流の、ある位置」とは?
それはもちろん、おれが呼ぶ定点を意味している。
定点は、おれは定点と呼びながらも、潮ごとに移動をするスポットであり、実は不定点なのだが、おれのイメージの中では確実に存在するスポットだ。
その定点の位置のブレと荒瀬の水塊のブレとが関係を持っている事を突き止めた時の驚きと喜びは何にも代えがたく大きなものだった。
言い換えれば、漠然とした「良く釣れる場所」の良く釣れる理由と意味がピンと来たってだけの話しなんだが。

竿を握る。
おれの愛竿と呼べるこの竿はFishman Beams 710MH、ナナテン。
生産終了が既にFishmanから告知されたこの竿を使うと言う事は、メーカー在庫がとっくに尽きたFishmanにとっては、メーカーのテスターが使用する事など、販売上何のメリットも無い。
来シーズンを見据えたプロトを複数持たされたおれが本来握るべき竿は他であるべきなのは承知の上で、おれはナナテンに賭けた。
熱い竿だからだ。
ホットなだけでなく、カワヌベをあしらうのに最適なパフォーマンスを備えているからだ。
そして何より、楽しい竿だから。
言うまでも無い。



バイト!!!

勝負は早かった。
ルアーは肝属の定番中の定番、アイマ・ピース100。
ダウンに入れて、ルアー先行で送り込み食わすには、シンペンでは随一のルアー。
比較的弛い流れでも水を捉え易く、肝属みたいな浅い川でしかも浅いレンジをクラッチフリーで送り込めるシンペンはこれ意外に知らない。
開始早々その魚はピースに、その時その場所で当然のように食って来た。

ファイトの激しさは毎度の事で、特にリールのドラグがしっかり整備されていないと、ナナテンを握っていたとしても苦労をさせられる。
今回はジリオンTWにリールパーツメーカーであるYTフュージョンのハイパーDワッシャーを組み込んである。
メーカーによれば、本来はドライ状態で使用する、ドラグロックのためのワッシャーと言う事だったが、極々少量のグリスを塗布すれば、滑らかな放出をすると言うことだった。
おれは後者の方法で使用しているが、その性能は素晴らしく滑らかとなる。
ドライで組めば10kg以上だが、グリス塗布でもノーマル状態よりドラグが強化され、特に1kg~5kgあたりのスムーズさが大幅に改善された。
ナナテンのムチムチした特性と併せて、急激に走り出そうが方向転換しようが狂ったように水面をテイルウォークしようが…完璧に許容してしまった。

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おれの苦労は一連のシリーズを読んでたあんたも知ってるだろう?(笑)
至福の一時だ。





年月の経過は誰にも等しく訪れて、時に喜びをもたらすが、時に残酷に大切なものを奪う。
おれも得たものは大きいが、諦めてしまったものも少なく無い。
今のおれの環境は…多分、あなたと変わらない普通の家族持ちの、釣り好きだ。
家族と居る時間を大切にしたいし、またその瞬間瞬間は心底愛しい。

以前なら考えられないが、10日以上もフィールドに行けない事はザラだ。
妻自身も大きな仕事上のストレスを抱えているのに理解ある彼女に見送られ、行っても週三回が体力的に限界。
テスター活動も以前のイケイケは今は無理だ。
今夜の一本は諦め、今シーズン一本のトロフィーに賭ける釣りに路線を完全に切り替えたのは去年から。

現場至上で行きたい気持ちはあったが、しかし現場にだけ目を奪われていても見えない事がある事に最近気が付いた。
四季の風情は夜の川にもあるが、川から離れた昼の仕事場の空にも、移動中の田畑にも、風の匂いにまで、一本のトロフィーに繋がるヒントは無数にある事に目覚めた。
川から離れていることは寂しいけれど、今を受け入れ、今を精一杯知覚する事が、今のおれの魚釣りになった。

でも、夢を棄てたりはしないさ。
本当はもっと拡がってんだ!










毎年梅雨には、とても大きな魚が、飛び魚の群れを追って、その岩壁に押し寄せると聞いている…


いつか行こう
おれの中のいつかいつかいつかいつかいつかいつ…
それは漸く今年やって来るんだ









因果と縁起 おしまい




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