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寺岡 寿人

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歓喜貯金

大都会から釣り人が来た。

なんと片道10時間以上車を走らせ一人でしまなみに来た。

彼の目的は私としまなみの真鯛に会うことだった。

なぜか私のもとに来る人は「寺岡さんに会いに来たんだよ。もちろん釣れたらいいけど、それは二の次。」と言ってくれる人ばかり。

当の本人からするとめちゃくちゃ嬉しくて、そしてなんだかちょっと不思議な感覚。

あまり会ったことない人がこんな遠くまで会いにくるほど好いてくれるって凄いことだからね。

なんだか不思議。

そんなこんなで釣り人と釣り人が会うことになった。

今回のプランは地磯でのデイゲーム。

ナイトはアオリイカを狙ってゆったりと。

スケジュール的にはあまり詰め込まず、無理をしない立ち回り。

今回ばっかりは楽に釣れる展開はないだろうと思っていたから、最後まで諦めずやりきるための余力を残してあげたかった。

というのも、これはあえて本人には伝えなかったのだけど実は赤潮でかなり状況は悪かった。

「この状況で、この潮回りならどこが一番可能性が高いのだろう…時合いはいつくる?」

釣りをしながらずっと考えていた。

特に気にしたのが時合いについて。

というのも時合いにルアーを海に入れてないと当たり前に釣れないから。

だけど、いつ来るかわからない時合いまでひたすら投げ続けるのは現実的じゃない。

彼はベテランの釣り人だけど、普段はオフショアメインで今回の釣りは専門外。

ウェーダーを着るのはまだ二度目で、普段は地磯を駆けることもない。

慣れないことは心身ともに消耗が激しいし、釣れない状況がそれを加速させる。

しまいには集中も切れて諦めにつながる。

だからあらかじめ立ち回りと時合いを伝えておき、無理してでも投げるべきタイミングと抜いてもいいタイミングを理解してもらった。

そして状況のほうはやはり悪く、初日はショートバイトが数回のみ。

二日目は全く魚からの反応がない始末。

彼はなかなかきつかったと思う。

きついに決まってる。

それでも折れそうで折れないところを繰り返し、よいタイミングは諦めず投げていく。

しかし無情にも何もないまま時間は過ぎていく。

そして最後の立ち位置。

「最後に時合いがくるのはここだからね」と伝えていた立ち位置。

彼も釣り人の直感的な何かを感じ取っていた立ち位置。

「最後やり切ろう」

そこから投げて投げて…時間的にも潮位的にも限界のタイミング。

「ラスト数投だ。俺はまだ諦めてないよ」

と私が言うと…

「俺だって諦めてない」

とても頼もしい。

そして最後の最後で彼の諦めない心が、1本の糸で繋がった。
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80cmを超える大型の真鯛。
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ブローウィン140Sが奥まで食い込まれていた。

この上ない食われ方。

フィーモフックがよく耐えてくれた。
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求めてきた魚がここにいる。

釣りあげた瞬間に彼は涙していた。

歳を取ると涙もろくなるもので、その姿を見て私もつられて泣いてしまった。

いい大人が泣いて抱き合う。

こんなに感情が爆発する趣味は多くない。

そしてここまで一瞬に歓喜し高揚できるのは、明確な理由がある。

それは釣れない時間、釣れない日々があるからだ。

そして釣れない中でどれだけ心身きつい想いをしたか。

それに尽きる。

そしてあらためて思うことがある。

昨今はシーバスが全国的に釣れなくなってきて、釣りをやめてしまう人たちが多い。

釣りだから釣れないと面白くはない気持ちはわかるのだけど、魚が釣れないから…あいつより釣れないから…と辞めてしまうのはもったいない。

こんな至高の瞬間を放棄しているのだから。

別に人より釣れなくていいと思う。

我々は競技者じゃないのだから。

釣りは人と人の対峙ではなく、人と自然の対峙。

目を向け寄り添うべきものは人じゃなく自然。

そして釣りを遊びきるなら釣れない時間や釣れない日々は絶対に必要。

報われるのは今日じゃないかもしれないし、明日でもないのかもしれない。

まだまだ先まできつい想いをする可能性もある。

必ず報われるとも言えない。

だけど報われるかどうかわからない所を超えた先に待っている至高の瞬間は必ずある。

だから釣りを辞めてしまうのはもったいない。

釣れない日々は歓喜貯金なのだから。

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