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▼ 日本の釣りを楽しむ (淡水小物)
- ジャンル:釣行記
堅く閉ざされた冬は終わり、やわらかな春はすぐそこまで来ている。
今日は、久々に釣に出掛けた。
少しばかり、不思議な体験と、小さな魚と、夢のある未来に出逢えた、それを話したいと思う。
今日は「小物釣」である。そう、餌釣だ。
選んだ餌は「紅サシ」。
川釣ではポピュラーな釣餌であるが、餌=魚が普段食べているものではない。
ハエの幼虫、蛆を食紅で着色した虫餌が「紅サシ」である。
主に、ハヤやウグイなどの淡水魚の釣に使われる餌である。
自然界では、この時期、蛆などいない。
そういう意味では疑似餌と言える。
さて、午後、気温が上がってからゆっくりと家を出る。
何時もの店、近所の釣具屋で「紅サシ」を買おうとしたが、生憎、休業中。
この店の店主は70代のご老輩、ハヤ釣りのベテランだ。
手書きで。「しばらく外出しています」と張り紙がしてあった。
病院にでも行っているのだろうか・・・
単線の小さな駅に伸びた、真っ直ぐに続く道、この古びた街の商店街。
軒並みシャッターが下りて、賑わったであろう昭和の時代の面影だけを今も残している。
たばこ屋の看板、手書きの道案内、古びた街灯、タイル張りの建物、その店構え。ここは九州だというのに、僕が子供の頃に見ていた原風景に何処か似ている。
この科学技術の進歩した現代、人工なんちゃらで、何でも作る事が出来たりするみたいだけど、未だに夢のタイムマシンは無い。
それでも、この遠い記憶の街に足を運べば、少し不思議なタイムスリップをする事ができる。
今日のところは、店主の事が少し心配だが、また来てみるとするか・・・・・
仕方なく、隣町の釣具屋まで足を伸ばし、古びた店内に入る。
さっきの店より、更に古い感じだ。
大丈夫だろうか?チャイムが3分以上鳴り続いているのに、店の人が出てくる気配は一向に無い。
確か、高齢の老夫婦が営む店だったが・・・・どうも様子がおかしい。
店内には、80年代のデュポンストレーンの什器、有得ない様な古のリール、黄色いダイワの看板。
ここも、完全に時間が止まっている、全て昭和の時代のまま止まっている。
自分がいったい何時の時代の何処にいるのか、わからなくなりそうだ。
それにしても、誰も出てこない。
僕は、この時代から現代に帰れなくなりそうな、まるでタイムトラベラーの映画を見ている時に感じる「自分がいた時代に戻れない恐怖」を少し覚えた。
5分は過ぎただろうか?相変わらず、ピンポン~パァ~パ♪と来客を報せるチャイムだけが、狭い店内に鳴り響いている。
少々心配になり、母屋へ続く年季の入ったベニヤの扉をドン!ドン!と強めに叩きながら、「こんにちは~!」と訪問営業ばりに声を上げてみた。
すると、ギシギシと足音が近づいてきた。
婆さんの声で「あい、いらっしゃい。。」
なぜかハイではなく、アイに聞こえ、そこに濁点が入る感じの「あい゛」だった。
すみません。紅サシありますか?とたずねる。
「あぁ・・・・すんましぇーん、切らしてるねぇ。。」
さすがにガックリだったが、目の前のテーブルにそれらしきものがある。
あのぉ?これは?・・・と訊ねてみると。
「あ、あぅた!ここにあったね・・」
痴呆症なのだろうか・・・
色々とネタは十分過ぎるほどだったが、お目当ての「紅サシ」は、無事に買う事が出来た。
知っている人は知っている?30年以上前からある「ダン」値段も当時のままだ。道糸は0.8~1号で良い。
僕の道具もそれくらいの代物ばかりだから時代的には丁度良い。
昔から変わってない中身、90年代に少し針を買い足したくらいか。
今回の主役はこれ。
どういう理由で僕の元に来たのかは、わからないが。
竹宝作 たなご竿。
日本の匠、工芸品、芸術作品。
ではなく、その先の青年、takao氏である。
この地でオヤニラミに一番近い男だ。
餌釣りでも、ワームでも釣った事があるという名人だ。
そして、今回の釣行は始まった。
その2につづく
- 2013年1月29日
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