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岡林 弘樹(オカバ)
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▼ パプアニューギニア釣行最終回「雑踏」
パプアニューギニア釣行最終回「雑踏」

部屋から出ると、眩しいほどの朝日が目に入ってくる。
こんな朝の景色も随分と見慣れてきた。
今日で見納めだと思うと少し寂しい気分になる。
ニワトリがコケコッコーって鳴くたびに、「あぁ、ニワトリってホントにコケコッコーって鳴くんだなぁ」って実感する朝。
そんなベタでクリアな村の朝が、僕は大好きだ。

起きてからは、視界も朧げなままにこの階段を降りる。
朝露で滑る上に、不安定でめっちゃ怖い。
そして地味に高い。
虚しく滑り台状態でズリ落ちることもあったりする。
今日は出船する前に、ある程度の荷物をまとめておく。
釣りから帰ればそのまま街に移動するつもりだからだ。
昼まで釣りをして、そこから移動。
順調に行けば夕方には街に着けるはず。

今日も、昨日と同じ場所からの出船。
なのだが・・・操縦者が来ない。
どうやら寝坊したようだ。笑
出船の予定が1時間ほど遅れるそうで。
焦っても仕方がないので海辺でしばし待つ事に。

こんな時こそ、小物タックルの出番だ。
小さいミノーを投げると、魚が無数にじゃれついてきてそのうち1匹がヒット。

コトヒキの仲間だろうか。
村人に聞くと、「ドクターフィッシュ」と答えた。
魚の血なんかを足に塗って水に入れば、このドクターフィッシュが血の匂いに興奮して足にかじりついてくる。
あの、足の皮とか食べるドクターフィッシュに似てる。
そんな由来からのドクターフィッシュ。
しかし、スネ毛がどんどん抜かれていく。
結構派手に痛い。
タイで普通のドクターフィッシュを味わったときは、こそばくって笑いが押さえ切れんかったが、今回は痛みに耐え切れん・・・。

今日の朝ごはんは、街で買っておいたココナッツのビスケット。
安い上に量が多くて好きな食べ物。
ほんのり甘くて美味しい。
でも、口の中の水分を根こそぎ奪い取られるので食べるタイミングは考えないといけない。
間違っても炎天下の船上で噛むのは避けたいところだ。

釣りをしながらブラブラしていると、砂浜に何かを発見。
シャコの死体だろうか。
デカすぎてちょっと怖い。笑
後で調べたが「トラフシャコ」って奴と似てる。
さて。
予定通り1時間ほど遅れて操縦者が到着。
「モーニン!」と陽気に現れた。
1時間くらいなら余裕で遅れるのがパプアンタイムだ。
既に準備は出来ているので、早々に船へ乗り込み川を目指した。
今日も昨日と同じ川だ。

川も海の穏やか。
やはり何度見ても綺麗な景色。

ゆっくりと川に近付く。
この瞬間、やはり胸高まるものがある。

結果から言うと、3kgくらいのパプアンバスが2匹だけ釣れて終了となった。
最後にバケモノクラスが掛かるドラマが・・・なんてのはやっぱり無かった。
まぁそうだよね。
結局、この川に忘れ物を残してくる形になってしまった。
ポイントに着いてすぐに釣れたパプアンバス。
小ぶりだが、やっぱり黒々とした魚体と口から覗く牙は見惚れるほどにカッコいい。

チャールズは写真を撮るのが楽しくなってきたようで、僕の写真も積極的に撮ってくれた。

獲物と子供達。
ボガを掴んでみんな楽しそう。

今回はこの顔を幾度も拝むことが出来た。
もう満足。
やり切った。
手持ちの道具も使い切った。
後悔も無い。
人に、川に、全てに感謝の気持ちで一杯だった。

「これを日本のみんなに届けてくれ!パプアニューギニアの国鳥だ!」
突然、新聞紙を切り取って見せてきた人がいた。
あなたは・・・昨夜のタマゴの人ではないですか!
同船していたんですね!
国鳥を指差して誇らしげな彼。
僕は、この国鳥の生きた姿を見たことが無い。
パプアに来て見たいものは沢山あるが、未だにどれ一つ達成していないのだ。
この国鳥も、そのうちの一つ。
またいつか見に帰ってきたいな。

後悔の無いとは言ってみたものの、やはり帰り道は引きずるものがある。
ほんの小さなモヤモヤと切なさを残し、船は海へと下っていく。

村に着いて、まとめて置いた荷物を引き上げる。
トラックはいつも不定期に村の広場までやってきて、街まで皆を乗せていく。

みんなのお見送りを受けながら広場へ向かう。
途中、お土産にココナッツを貰った。
ナイフで皮を剥ぐと、ココナッツジュースが溢れ出した。
甘くて美味しい。
ココナッツジュースを飲みつつ、僕が広場に着いた頃に向こうの方からトラックがゴトゴトとやってきた。
いよいよこの村ともお別れだ。
しかし、不覚にもボガを部屋に忘れてきてたようで、トラックに乗る前に間一髪でスティーブンに手渡してもらった。
危なかった・・・笑

青い空と海風が、見送る様に景色を彩る。
トラックの荷台は人で一杯だった。
乗れるかなぁ・・・。と一瞬思ったとき、運転手が「こっちに乗りな!」と案内してくれた。
トラックの前には、運転席と助手席の間にもうひとつシートがあり、両隣に挟まれるような形で乗せて貰うことになった。
バッグやバズーカーを無理やり詰め込んで飛び乗った。
運転席の窓から外を覗く。
チャールズやスティーブン、村のみんなが手を振ってくれた。
別れ際も最高の笑顔だった。
「またくるよ!」
日本語で言ってしまった言葉、でもきっと想いは通じたはず。
また、いつになるか分からないけど、きっと帰ってくる。
みんな本当にありがとう。
さようなら。
いつかまた会う日まで。
「アアアアアアアアアアアーーーー!!!」
突然響く謎の奇声。
その瞬間、しんみりしたラストシーンはぶち壊された!
そして振り返る暇なく、突然隣からハグされる感覚!
訳の分からない言語と共に、男が俺の肩に手を回していた!!
「〜〜〜〜!!!」
これはヤバイ!
俺が危ない!
ほんとに危ない!!
割と本気で生命の危機を感じて思いっきり振りほどくと、助手席に乗っていた若めの兄ちゃんが追撃の様に陽気な表情で迫ってきた!
「My Friend!!」
「!?」
何言ってんだコイツ!!
いや、少なくともこの段階では俺はお前の友達ではない。
むしろ、そのハグによって友達から少し遠のいたと言ってもいい。
てか、なんなんだアンタ!
しかも、その一言を放った途端に窓から身を乗り出して奇声をあげ始めた。
行動パターンが謎すぎる。
酔っ払いかと思ったが、それにしては目の焦点が合ってない。
2年前にも見たことある。
瞳孔が小刻みに震えている。
これは見覚えのある動き。
まさか・・・。
兄ちゃんの片手には缶。
こいつ、ジャンキーっぽいな。
ジャンキー=薬物中毒者の事。
残念ながらパプアの地でも薬物は横行しており、街にも中毒者が徘徊している事がある。
しかし見るところ、どうにもならない程に酷い状態ではないようだ。
まだ浅い中毒者だろうか。
こんなところで遭遇してしまうとは。
しかも隣の席なので逃げ場がない。
2年前もトラックの上で薬物中毒者に遭遇した記憶がある。
その時は、友人のマコを盾にして無事にやり過ごしたのだが。
過去記事
http://www.fimosw.com/u/ookb/vv3c7rzj6mfhjh
今回は免れそうにない。笑
奇声を発しながら、天井にゴンゴンを頭をぶつけては大人しくなる兄ちゃん。
突然、フワフワした様子で
「写真を撮ってくれ!!」
と笑顔で言われた。
絡み方も尋常じゃない。
撮るのもめんどいし、撮らないのもめんどいんですが・・・。
半分ヤケクソでになりながら写真を撮ってみる。

あんなに笑顔のハイテンションだったのに、撮る瞬間だけ真顔。
怖いよ。
「駄目息子なんだ。すまねぇな」
運転手のオッサンが言った。
ということは、兄ちゃんは貴方の息子なんですか?
ちょっと色々やめさせたほうが良いのでは?

「仲良くしてやってくれ!フレンドだ!ガハハ!」
言ってるけど、このおじさんも酒を飲みながら運転している。
かなり酔っているようで、トラックは何もない道でもフラフラ。
もう片方では、若者が壊れたようにケタケタ笑っている。
なかなかに辛い。
というか、この周辺のドライバーの酔っ払い率が高すぎる。
オヤジドライバーは、たまに「おげぇー」と窓からゲロを吐き散らかす。
車内にブチ撒けるよりは全然良いが、その度に路肩に突っ込みそうになって本気で焦る。
もう片方のジャンキー兄ちゃんも、窓から身を乗り出してゲロを吐き続ける。
そのゲロを拭いた手で、また握手を求めてくる両方。
マジでハンパない。

もう限界だったので、とりあえず寝たふりをしてやり過ごしてみた。
意外と効果ありで、次第にジャンキー兄ちゃんもオヤジドライバーも大人しくなっていく。
街まではまだまだ遠いが、とにかく少しでも近づいてくれと願った。
時は過ぎ。
夕方になる頃にようやく街に着いた。
寝たふりを解除し、辺りを見回す。
知ってる街並みが見えた。
よし!これならいける!
「もうここでいいよ!」
一応、目的地を伝えてあるが到着するか分からない。
それより、このままの方が色々ヤバイと判断し早々にトラックを降りた。
とりあえず見たことあるスーパーの前で降ろしてもらった。
泥酔ドライバーはビール代を運賃としてよこせと言っているようだ。
安いもんだ。
運賃が酒ってのも凄いけど。
しかし、降りたは良いものの、ここから今日の宿までは少し距離がある。
既に夕方。
夜までには辿り着きたいのだが。
歩くしかないか・・・、とスーパーを出て歩き始めた。
大きな道路沿いを歩く。
道行く知らない車が「乗っていけ!」と誘ってくる。
中には親切もあるだろうが、もちろん悪い奴らも居るので基本的には無視だ。
トラックを断りつつ歩き続けていると
「ヒロキ!」
突然の呼びかけに焦る僕。
「こんな所で何をしているの?」
見ると、宿のオーナーの奥さんが車の窓からこちらを覗いていた!
なんてラッキー!
助かったー!
かなり久々に出会った気がする。
数日振りなのに。笑
そのまま車に乗せて貰い、宿まで連れて行って貰うことになった。

ゲストハウスに着いて、ひと段落。
なんとかなってよかった。
あの酔っ払いトラックも無事に帰り着いたかな?
着いて早々に日本と連絡を取らないといけないことに気付く。
WIFIのあるスポットは無いか?と聞くとオーナーの奥さんがレストランに連れて行ってくれる事になった。

この間連れてきてもらった所と同じレストランだ。
とにかく高カロリーなものが食べたい僕は思い切ってピザを頼む。
今回は自腹だけどね笑
奥地から帰ってきた後のピザは、例えるなら三日間何も食わなかった後に食べるラーメンみたいな感じ。
まぁ三日間何も食わなかった事なんてないんだけど、多分そんな感じ。
WIFIも繋がって、久々に日本との交信を行う。
文明は偉大だなぁ。

ゲストハウスに帰ってきて、寝る前にコーラとインスタントラーメン。
失った栄養を取り戻すかのように食べる僕。笑
今日はぐっすり眠れそうだ。
翌朝は、オーナーの奥さんに空港まで送ってもらった。
結局、最後までお世話になりっぱなしだったなぁ。
またいつかこの国を訪れる時があるなら、絶対に会いに行こうと思った。

帰りの飛行機は定刻通りに飛びそうだ。
待合のロビーからは、乗る予定の飛行機が準備完了な様子で佇んでいる。

動き出した飛行機の窓から、飛び立つ滑走路が見えた。
真っ直ぐに空へ続く、別れの滑走路。

パプアの大地を眺めながら、今日までの日々を思い出す。
ここまでくれば、なんだか凄く昔の事のように思えてしまった。
ありがとう。

さよならパプアンバス!
ありがとう全てのパプアニューギニア!!
飛行機の強い冷房のせいなのか、身体が妙にだるい。
定刻通り成田へ着陸した飛行機。
無事に入国を済ませた後、次の予定の為に急ぎ足で空港を出る。
重い荷物を持ちながら向かう成田線。
ギリギリで飛び乗った電車が動き出す。
ごった返した車内に詰められるように乗り込んだ。
なんとか間に合った。
片手に持ったバズーカーにしがみ付くようにもたれかかり、目の前に映る車外の風景をぼんやり眺める。
沢山の街の光が忙しそうに流れていくのを見た。
その光と同じくらい、忙しそうに流れる人並みがあった。
懐かしく感じる雑踏。
毎度、帰国した後に見る日本の景色は安心する反面、少しだけ切ない。
終わっちゃったなぁ。
ふと、村での生活が頭をよぎる。
今この瞬間にも、あの村では人々の営みが変わらず続いているだろう。
それは、こちらの国も同じだ。
色んな人や考え方が混ざって、営みは続いていく。
でも。
世界中で自分はたった一人しかいない。
自分を証明出来るのは自分しか居ないんだ。
何を想い、何を残そうか。
パプアニューギニアでの新鮮な時間を回想しながら。
そんな事に気付きながら。
電車は、ネオンの眩しい街へと進んで行く。

パプアニューギニア釣行最終回「雑踏」~終~
あとがき的な感じで。
ここまで釣行記を読んで頂いた方々。
今日初めて読んで下さった方々も。
本当にありがとうございます。
遅更新で2ヶ月も引っ張ってしまい申し訳ないです・・・。汗
言いたい事をちゃんと文字で書こうとするのって難しいなぁ。
なんて思いながら書いてました。
まぁ、今回も仕事の合間に行った海外釣行でしたが・・・正直かなり弾丸でした。
一人旅はサラリーマンとして背負うリスクとかまぁまぁデカイよなぁ。なんて思いながら。
帰りの便が欠航したら、次の便が出るのは三日後とか。
もし遅延して帰ってきたら、会社に席が無かったりしてね。笑
こう文字にしてみると、なんだかちっぽけな事の様にも感じてきますが。
見て頂いた方々にも、働きながら釣りをしている方も多いと思います。
なんとなく、少しでも、身近に感じて頂ければ幸いです。
大人になれば、何でか分からないけど背負う物が増えていくし、色んな事を天秤にかけながら、やりたい事を泣く泣く切り捨てることもあって。
そのうえ辛い事もあったりして。
でも嬉しい事もあるし、かけがえのない幸せもある。
その中に釣りも含まれていたりする。
そんな、凸凹の日常を生き抜くアングラーの皆様方へ。
意外と「夢」みたいな出来事って、頑張れば近くにあるんじゃないかな。
というお話でした。
これからも、釣りが心からの支えになります様に。
終

部屋から出ると、眩しいほどの朝日が目に入ってくる。
こんな朝の景色も随分と見慣れてきた。
今日で見納めだと思うと少し寂しい気分になる。
ニワトリがコケコッコーって鳴くたびに、「あぁ、ニワトリってホントにコケコッコーって鳴くんだなぁ」って実感する朝。
そんなベタでクリアな村の朝が、僕は大好きだ。

起きてからは、視界も朧げなままにこの階段を降りる。
朝露で滑る上に、不安定でめっちゃ怖い。
そして地味に高い。
虚しく滑り台状態でズリ落ちることもあったりする。
今日は出船する前に、ある程度の荷物をまとめておく。
釣りから帰ればそのまま街に移動するつもりだからだ。
昼まで釣りをして、そこから移動。
順調に行けば夕方には街に着けるはず。

今日も、昨日と同じ場所からの出船。
なのだが・・・操縦者が来ない。
どうやら寝坊したようだ。笑
出船の予定が1時間ほど遅れるそうで。
焦っても仕方がないので海辺でしばし待つ事に。

こんな時こそ、小物タックルの出番だ。
小さいミノーを投げると、魚が無数にじゃれついてきてそのうち1匹がヒット。

コトヒキの仲間だろうか。
村人に聞くと、「ドクターフィッシュ」と答えた。
魚の血なんかを足に塗って水に入れば、このドクターフィッシュが血の匂いに興奮して足にかじりついてくる。
あの、足の皮とか食べるドクターフィッシュに似てる。
そんな由来からのドクターフィッシュ。
しかし、スネ毛がどんどん抜かれていく。
結構派手に痛い。
タイで普通のドクターフィッシュを味わったときは、こそばくって笑いが押さえ切れんかったが、今回は痛みに耐え切れん・・・。

今日の朝ごはんは、街で買っておいたココナッツのビスケット。
安い上に量が多くて好きな食べ物。
ほんのり甘くて美味しい。
でも、口の中の水分を根こそぎ奪い取られるので食べるタイミングは考えないといけない。
間違っても炎天下の船上で噛むのは避けたいところだ。

釣りをしながらブラブラしていると、砂浜に何かを発見。
シャコの死体だろうか。
デカすぎてちょっと怖い。笑
後で調べたが「トラフシャコ」って奴と似てる。
さて。
予定通り1時間ほど遅れて操縦者が到着。
「モーニン!」と陽気に現れた。
1時間くらいなら余裕で遅れるのがパプアンタイムだ。
既に準備は出来ているので、早々に船へ乗り込み川を目指した。
今日も昨日と同じ川だ。

川も海の穏やか。
やはり何度見ても綺麗な景色。

ゆっくりと川に近付く。
この瞬間、やはり胸高まるものがある。

結果から言うと、3kgくらいのパプアンバスが2匹だけ釣れて終了となった。
最後にバケモノクラスが掛かるドラマが・・・なんてのはやっぱり無かった。
まぁそうだよね。
結局、この川に忘れ物を残してくる形になってしまった。
ポイントに着いてすぐに釣れたパプアンバス。
小ぶりだが、やっぱり黒々とした魚体と口から覗く牙は見惚れるほどにカッコいい。

チャールズは写真を撮るのが楽しくなってきたようで、僕の写真も積極的に撮ってくれた。

獲物と子供達。
ボガを掴んでみんな楽しそう。

今回はこの顔を幾度も拝むことが出来た。
もう満足。
やり切った。
手持ちの道具も使い切った。
後悔も無い。
人に、川に、全てに感謝の気持ちで一杯だった。

「これを日本のみんなに届けてくれ!パプアニューギニアの国鳥だ!」
突然、新聞紙を切り取って見せてきた人がいた。
あなたは・・・昨夜のタマゴの人ではないですか!
同船していたんですね!
国鳥を指差して誇らしげな彼。
僕は、この国鳥の生きた姿を見たことが無い。
パプアに来て見たいものは沢山あるが、未だにどれ一つ達成していないのだ。
この国鳥も、そのうちの一つ。
またいつか見に帰ってきたいな。

後悔の無いとは言ってみたものの、やはり帰り道は引きずるものがある。
ほんの小さなモヤモヤと切なさを残し、船は海へと下っていく。

村に着いて、まとめて置いた荷物を引き上げる。
トラックはいつも不定期に村の広場までやってきて、街まで皆を乗せていく。

みんなのお見送りを受けながら広場へ向かう。
途中、お土産にココナッツを貰った。
ナイフで皮を剥ぐと、ココナッツジュースが溢れ出した。
甘くて美味しい。
ココナッツジュースを飲みつつ、僕が広場に着いた頃に向こうの方からトラックがゴトゴトとやってきた。
いよいよこの村ともお別れだ。
しかし、不覚にもボガを部屋に忘れてきてたようで、トラックに乗る前に間一髪でスティーブンに手渡してもらった。
危なかった・・・笑

青い空と海風が、見送る様に景色を彩る。
トラックの荷台は人で一杯だった。
乗れるかなぁ・・・。と一瞬思ったとき、運転手が「こっちに乗りな!」と案内してくれた。
トラックの前には、運転席と助手席の間にもうひとつシートがあり、両隣に挟まれるような形で乗せて貰うことになった。
バッグやバズーカーを無理やり詰め込んで飛び乗った。
運転席の窓から外を覗く。
チャールズやスティーブン、村のみんなが手を振ってくれた。
別れ際も最高の笑顔だった。
「またくるよ!」
日本語で言ってしまった言葉、でもきっと想いは通じたはず。
また、いつになるか分からないけど、きっと帰ってくる。
みんな本当にありがとう。
さようなら。
いつかまた会う日まで。
「アアアアアアアアアアアーーーー!!!」
突然響く謎の奇声。
その瞬間、しんみりしたラストシーンはぶち壊された!
そして振り返る暇なく、突然隣からハグされる感覚!
訳の分からない言語と共に、男が俺の肩に手を回していた!!
「〜〜〜〜!!!」
これはヤバイ!
俺が危ない!
ほんとに危ない!!
割と本気で生命の危機を感じて思いっきり振りほどくと、助手席に乗っていた若めの兄ちゃんが追撃の様に陽気な表情で迫ってきた!
「My Friend!!」
「!?」
何言ってんだコイツ!!
いや、少なくともこの段階では俺はお前の友達ではない。
むしろ、そのハグによって友達から少し遠のいたと言ってもいい。
てか、なんなんだアンタ!
しかも、その一言を放った途端に窓から身を乗り出して奇声をあげ始めた。
行動パターンが謎すぎる。
酔っ払いかと思ったが、それにしては目の焦点が合ってない。
2年前にも見たことある。
瞳孔が小刻みに震えている。
これは見覚えのある動き。
まさか・・・。
兄ちゃんの片手には缶。
こいつ、ジャンキーっぽいな。
ジャンキー=薬物中毒者の事。
残念ながらパプアの地でも薬物は横行しており、街にも中毒者が徘徊している事がある。
しかし見るところ、どうにもならない程に酷い状態ではないようだ。
まだ浅い中毒者だろうか。
こんなところで遭遇してしまうとは。
しかも隣の席なので逃げ場がない。
2年前もトラックの上で薬物中毒者に遭遇した記憶がある。
その時は、友人のマコを盾にして無事にやり過ごしたのだが。
過去記事
http://www.fimosw.com/u/ookb/vv3c7rzj6mfhjh
今回は免れそうにない。笑
奇声を発しながら、天井にゴンゴンを頭をぶつけては大人しくなる兄ちゃん。
突然、フワフワした様子で
「写真を撮ってくれ!!」
と笑顔で言われた。
絡み方も尋常じゃない。
撮るのもめんどいし、撮らないのもめんどいんですが・・・。
半分ヤケクソでになりながら写真を撮ってみる。

あんなに笑顔のハイテンションだったのに、撮る瞬間だけ真顔。
怖いよ。
「駄目息子なんだ。すまねぇな」
運転手のオッサンが言った。
ということは、兄ちゃんは貴方の息子なんですか?
ちょっと色々やめさせたほうが良いのでは?

「仲良くしてやってくれ!フレンドだ!ガハハ!」
言ってるけど、このおじさんも酒を飲みながら運転している。
かなり酔っているようで、トラックは何もない道でもフラフラ。
もう片方では、若者が壊れたようにケタケタ笑っている。
なかなかに辛い。
というか、この周辺のドライバーの酔っ払い率が高すぎる。
オヤジドライバーは、たまに「おげぇー」と窓からゲロを吐き散らかす。
車内にブチ撒けるよりは全然良いが、その度に路肩に突っ込みそうになって本気で焦る。
もう片方のジャンキー兄ちゃんも、窓から身を乗り出してゲロを吐き続ける。
そのゲロを拭いた手で、また握手を求めてくる両方。
マジでハンパない。

もう限界だったので、とりあえず寝たふりをしてやり過ごしてみた。
意外と効果ありで、次第にジャンキー兄ちゃんもオヤジドライバーも大人しくなっていく。
街まではまだまだ遠いが、とにかく少しでも近づいてくれと願った。
時は過ぎ。
夕方になる頃にようやく街に着いた。
寝たふりを解除し、辺りを見回す。
知ってる街並みが見えた。
よし!これならいける!
「もうここでいいよ!」
一応、目的地を伝えてあるが到着するか分からない。
それより、このままの方が色々ヤバイと判断し早々にトラックを降りた。
とりあえず見たことあるスーパーの前で降ろしてもらった。
泥酔ドライバーはビール代を運賃としてよこせと言っているようだ。
安いもんだ。
運賃が酒ってのも凄いけど。
しかし、降りたは良いものの、ここから今日の宿までは少し距離がある。
既に夕方。
夜までには辿り着きたいのだが。
歩くしかないか・・・、とスーパーを出て歩き始めた。
大きな道路沿いを歩く。
道行く知らない車が「乗っていけ!」と誘ってくる。
中には親切もあるだろうが、もちろん悪い奴らも居るので基本的には無視だ。
トラックを断りつつ歩き続けていると
「ヒロキ!」
突然の呼びかけに焦る僕。
「こんな所で何をしているの?」
見ると、宿のオーナーの奥さんが車の窓からこちらを覗いていた!
なんてラッキー!
助かったー!
かなり久々に出会った気がする。
数日振りなのに。笑
そのまま車に乗せて貰い、宿まで連れて行って貰うことになった。

ゲストハウスに着いて、ひと段落。
なんとかなってよかった。
あの酔っ払いトラックも無事に帰り着いたかな?
着いて早々に日本と連絡を取らないといけないことに気付く。
WIFIのあるスポットは無いか?と聞くとオーナーの奥さんがレストランに連れて行ってくれる事になった。

この間連れてきてもらった所と同じレストランだ。
とにかく高カロリーなものが食べたい僕は思い切ってピザを頼む。
今回は自腹だけどね笑
奥地から帰ってきた後のピザは、例えるなら三日間何も食わなかった後に食べるラーメンみたいな感じ。
まぁ三日間何も食わなかった事なんてないんだけど、多分そんな感じ。
WIFIも繋がって、久々に日本との交信を行う。
文明は偉大だなぁ。

ゲストハウスに帰ってきて、寝る前にコーラとインスタントラーメン。
失った栄養を取り戻すかのように食べる僕。笑
今日はぐっすり眠れそうだ。
翌朝は、オーナーの奥さんに空港まで送ってもらった。
結局、最後までお世話になりっぱなしだったなぁ。
またいつかこの国を訪れる時があるなら、絶対に会いに行こうと思った。

帰りの飛行機は定刻通りに飛びそうだ。
待合のロビーからは、乗る予定の飛行機が準備完了な様子で佇んでいる。

動き出した飛行機の窓から、飛び立つ滑走路が見えた。
真っ直ぐに空へ続く、別れの滑走路。

パプアの大地を眺めながら、今日までの日々を思い出す。
ここまでくれば、なんだか凄く昔の事のように思えてしまった。
ありがとう。

さよならパプアンバス!
ありがとう全てのパプアニューギニア!!
飛行機の強い冷房のせいなのか、身体が妙にだるい。
定刻通り成田へ着陸した飛行機。
無事に入国を済ませた後、次の予定の為に急ぎ足で空港を出る。
重い荷物を持ちながら向かう成田線。
ギリギリで飛び乗った電車が動き出す。
ごった返した車内に詰められるように乗り込んだ。
なんとか間に合った。
片手に持ったバズーカーにしがみ付くようにもたれかかり、目の前に映る車外の風景をぼんやり眺める。
沢山の街の光が忙しそうに流れていくのを見た。
その光と同じくらい、忙しそうに流れる人並みがあった。
懐かしく感じる雑踏。
毎度、帰国した後に見る日本の景色は安心する反面、少しだけ切ない。
終わっちゃったなぁ。
ふと、村での生活が頭をよぎる。
今この瞬間にも、あの村では人々の営みが変わらず続いているだろう。
それは、こちらの国も同じだ。
色んな人や考え方が混ざって、営みは続いていく。
でも。
世界中で自分はたった一人しかいない。
自分を証明出来るのは自分しか居ないんだ。
何を想い、何を残そうか。
パプアニューギニアでの新鮮な時間を回想しながら。
そんな事に気付きながら。
電車は、ネオンの眩しい街へと進んで行く。

パプアニューギニア釣行最終回「雑踏」~終~
あとがき的な感じで。
ここまで釣行記を読んで頂いた方々。
今日初めて読んで下さった方々も。
本当にありがとうございます。
遅更新で2ヶ月も引っ張ってしまい申し訳ないです・・・。汗
言いたい事をちゃんと文字で書こうとするのって難しいなぁ。
なんて思いながら書いてました。
まぁ、今回も仕事の合間に行った海外釣行でしたが・・・正直かなり弾丸でした。
一人旅はサラリーマンとして背負うリスクとかまぁまぁデカイよなぁ。なんて思いながら。
帰りの便が欠航したら、次の便が出るのは三日後とか。
もし遅延して帰ってきたら、会社に席が無かったりしてね。笑
こう文字にしてみると、なんだかちっぽけな事の様にも感じてきますが。
見て頂いた方々にも、働きながら釣りをしている方も多いと思います。
なんとなく、少しでも、身近に感じて頂ければ幸いです。
大人になれば、何でか分からないけど背負う物が増えていくし、色んな事を天秤にかけながら、やりたい事を泣く泣く切り捨てることもあって。
そのうえ辛い事もあったりして。
でも嬉しい事もあるし、かけがえのない幸せもある。
その中に釣りも含まれていたりする。
そんな、凸凹の日常を生き抜くアングラーの皆様方へ。
意外と「夢」みたいな出来事って、頑張れば近くにあるんじゃないかな。
というお話でした。
これからも、釣りが心からの支えになります様に。
終
- 2017年11月30日
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