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村岡昌憲
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▼ 9月23日 T.S.S.T.最終戦
- ジャンル:釣行記
- (battle-闘い--)
2006年9月23日 -T.S.S.T.最終戦-
最後に大会というものに出たのがちょうど2年前のT.S.S.Tである。
あの時は準優勝という結果であった。
そこから2年という月日の間、勝負の世界から離れていた。
この秋はセミナーもあったし、この後も取材が目白押しである。
その中で、ずっと気がかりなことがあった。
それは、今の自分がこの釣りにおいて、アドバンテージを持っているかということであった。
本業が忙しく、釣行日数が増えない今の自分は、果たして他の釣り人に、言葉を語る資格があるのか、己の技を見せる資格があるのか。
それを問わねばならないと思っていた。
BATTLEの冒頭に掲げた宣言。
その証明をしなければならないと、し続けなければならないと、思っていた。
その最後のチャンス、最終戦にスポット参戦という形になった。
2週間前から釣行頻度を上げて、コンディションを高めていく。
フィールドでの直感、その感度を研ぎ澄ましていく過程は楽しくも辛い作業である。
数年前に、ギンギンに研いだナイフの刃のようだった神経や感覚も、今では錆び付いた果物ナイフのようなもので、そのギャップを認め、現実と向き合うということは、自らの衰えを認めるのと同じ事であるからだ。
何より、衰えることのない経験や知識が求めてくるレベルと、今のレベルとのギャップは耐え難い苦しさを生み出す。
しかし、乾いた砂漠に水が戻るように、体に再び感覚が刻まれていくのは楽しさというか、一つの武者震いに近い興奮があった。
と、ここまで書くと、本気も本気かと思うかもしれないが、
とりあえずは復帰戦だし、存分に楽しもうという姿勢で挑むことに。
前日夜は木更津の干潟で取材。
次の日も午後から取材という、少しきついスケジュール。
開会式を終えて、2時間ほどT.S.S.Tのメンバーと会場で語り合う。
23時になりかけのところで、出発した。もちろん最終出発である。
魚はよく見えていた。
港湾部主体で50センチ後半を3本は固い状態。
しかし、それは他のライバルも一緒。
そこから大きいサイズをどれだけ混ぜられるか、70が2本入れば確実だし、1本と60でもいいかなという状況と読んでいた。
港湾部で3本揃えるのに1時間あれば十分と読んで、先に大きいのを狙いに行く。
最初は葛西へ入る。
潮位48cmの干潮に合わせてのスーパーディープウェーディングをしようと思っていた。
先行者の赤いフラッシュサインが点滅している。
後で、ここでおなじみのカラスさんだと解ったが、一番いいポジション。
仕方なく、中央の払い出しに入ることにした。
あいにくの強い北風。10mを超えている。
強い追い風とネオンナイトとシーバスPE、レアフォースで80m以上の飛距離が出る。
レアフォースで扇状にキャストして、幅広く探っていくが、反応がない。
グースに変える。で、また幅広く探っていく。
正面、70mほどでヒット。
慎重に寄せてランディング。
75cm。これで展開がだいぶ楽になる。
その後、2時間ほど、シャローをあちこち回りながら攻めてみたが反応無し。
何とかもう一本獲りたかったが、まだ1本というのは焦りを生み出し、リズムを狂わせる。
上げのシャローが気になったが、とりあえず葛西を後にする。
まずは港湾部に行き、常夜灯の明暗部で47cmと50cmを釣り、ポンポンとリミットメイク
トータル182cm。これで、10位以内はなんとかなるところ。
そこから今度は川崎方面を狙いに行く。
北風が強く、キャストがままならないが、風表が一番サイズを出しやすいと考えた。
ポイントに着くと、予想以上の風と波。
恐る恐るポイントに近づくが、波がすごくて近寄れない。
風表の風裏パターンで狙いたいところだが、風裏もすごい波。
まともなファストリトリーブでもルアーが泳いでいない。
途中から、X-110SWの高速ジャークで攻めていく。
打ち寄せ、砕けた波が沖に再び払い出すゾーン。
逆波がひときわ大きく立ち、その波の裏側めがけてキャストする。
オーバーヘッドキャストでは風に負けてしまう。
水面ギリギリのサイドスロー。X-110SWを低い弾道で撃つ。
着水する直前にサミングし、ベイルを戻すのが早いか、着水が早いか、というタイミングで一気にジャークを入れていく。
数投すると、ガッ!!というバイト。
ネオンナイトの鬼掛けティップに任せて、テンションの維持に気を配りながらスイープ気味にアワセを入れていく。
崩れる波の音とは違うエラ洗いの音にラインを水面に押しつけるように半身をひねって低いファイトをしていく。
足下まで寄せてきて引っこ抜く。
X-110SWをガッツリ喰っていた。55cm。サイズアップならず。
ルアーをローテしながら、色々と目先を変えるが、数釣りの展開から抜け出せない。
X-80SWはフッキングが良すぎて、封印やむなしと確信した一本
どうも50センチ級の数釣りの展開。
移動するかしないか悩みながら、再度キャスト。
50センチ級がバタバタッとヒットするが、サイズアップにはならない。
あと3時間。
まともに風の当たるサイドは大荒れで危険な状態。
その裏側の流れがある場所を探す。
ブレイクラインをきっちりと探るように撃ち込んでいくと、20分ほどでヒット。
重みのあるトルクで走る魚にサイズアップを確信。
葛西を後にしてしまった以上、慎重に慎重にファイトする。
リーダー持って引き抜くと、陸の上に転がり込むように駆けてランディング。
冷静になれば、180cmを超えているのなら、もっと落ち着いていいはずだった。
しかし、この1本でかえって、残る50cmのサイズアップに思わず我を忘れた。
執拗にブレイクを撃ち続ける、他にルアーを変えたり、メソッドを変えたりしても、反応はない。風裏側といっても波もあるし、風も強い。
高速ジャーキングしかない。
手首の関節がきしみを上げる。
しばらく釣りの頻度が下がっていたおかげで、手首の怪我は完治していたが、当時の怪我を思い出させる鈍い痛みが、波の泡のはじける音の中で鮮明に神経を刺激し続ける。
10分ほど経った。
数m手前に来たルアーに、回収に切り替えるために、最後のジャークを入れた直後のステイに、もんどり打ってシーバスがバイトする。
とっさにベイルを返して、親指でラインを抑える。
フッキングのわずかな感触を感じた瞬間に、指を離してラインテンションを解放する。
スパパッとラインが出て、10mほど出してから。ベイルを返してファイト開始。
一度は沖に出たシーバスが異変に気付いて水面に飛び出す。
2・3回いなして、寄せる。
あまり大きくない。
むんずと片手でつかんで、岸に駆け上がる。
カラーはX-110SWのブラックなんとか。
オレンジゴールドとのローテで、凄まじいフォローベイトとなっていた。
オレンジと黒のローテで、黒がフォローでハマったことは記憶にない。
そんなことしている場合じゃないのに、思わずマジマジと手にとって眺めてしまう。
少し延びたフロントフックが気になったが、そこで替えフックも、それを換える余裕も持っていなかった。
残り2時間半。
さらに、10分ほど撃ち続けてみたが、反応がない。
そこで最初に入った力強い払い出しのとこへ戻る。
1投目から、フッコクラスが強烈にバイトしてくる。
高速ジャークと、時折混ぜるデッドスローで3本ほど連続して魚を獲る。
が、みんな50cmあるかないか。
次こそは、と思いつつ、無駄な時間を費やしている展開に、このままでは・・・と、あるキャストの瞬間、腕が止まった。
その瞬間、今までノイズでしかなかった、吹き付ける風の音と豪快な波の音が、耳にはっきりと飛び込んでくる。
冷静になった気がした。
あたりを見渡す。
あそこか!
最も荒れている一帯の波がひときわ高いエリア、一気に水深が浅くなるブレイクの上にカレントを見つける。
最も荒れている一帯の波がひときわ高いエリア、一気に水深が浅くなるブレイクの上にカレントを見つける。
ぶつかる流れとボトムの激しい地形がムチャクチャな流れを生み出している。
あそこなら!
そこに小走りで向かう。
ライフベストのベルトを確かめて、波に注意しながら、風に対して真正面ではなく、少しだけ角度をズラしたポジションを取る。
パワーの波にしぶかれて、あっというまに帽子から濡れてしまう。
親指にラインを掛けたまま、濡れた頬を叩く風のリズムを感じる。
濡れた唇をペロリとなめた塩味に、ふと狂気の中にいる自分を見いだし、にやりと笑う。
やがて、風のうなりが息を潜め出す。
It's time.
振りかぶって、めいっぱい低い弾道でX-110SWを撃ち込む。
そこから高速ジャーキング。
水をつかんでいる間は、高速ジャーク、波から飛び出してしまいそうなときはデッドスローで追い波を待つ。
沖でもみくちゃにされるX-110SWに凄まじい衝撃。
ゴゴゴッ!
とフックに乗る感触を確かめながら、フッキングに持ち込む。
ネオンナイトが今日一番のカーブを描く。
来た!でかい!
今日一番のパワーに思わず声が出る。
ドラグを上手く使って、ファイトの主導権を渡さない。
波の流れに乗せて、寄せてくる。
ライトを照らすと80センチ近い。
その2へ続く
- 2006年9月23日
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