曾祖父の話  前編の続き

年をとったので船団から離れ、地元で漁をすることにした
竹で竿を自作し、エビをつけて魚を一本釣りする

道具には徹底的にこだわる
竿に使う竹を探してくると妻(私の曾祖母)に言い、山の中を探し回る
なかなか良いものが見つからない
探しているうちに山をいくつも越え、気づけば家から遠く離れた市街地まで来てしまう
これかなと思う竹を3本見つけて帰ったのは、家を出てから3日目の夜半
妻にあきれられる

タモも自作、市販のものは小さすぎる
せめて孫がすっぽりと入るくらいの直径と深さが必要
木に何度も火を通し、曲げて形を整え、仕上げに松ヤニを塗り耐水性を高める

漁場は漁港の中のみとする
沢山のスズキがいて、浅場でエサを狙っているので十分釣りきれる

やはり沢山釣れる
カゴにいなう程釣れたので、陸に上がろうとすると見知らぬ男が待ち構えていて、開口一番
「その魚全部売ってくれ」と言われる
切羽つまった感じに気圧されしたのと、白紙の小切手を渡されたので売ることにする
あの人何者だったんだろうか

漁を続けていると大型もかかる
潮止まりから上げに入る、潮の変わり目の瞬間この時のスズキはでかかった
あまりにもでかかったので、家に持ってかえると妻が驚く
漁師の妻は魚を見慣れているので、多少のサイズでは気にも止めない
すぐにぶつ切りにして、味噌汁に放り込むだけだ

しかしこの時の妻はめずらしくはしゃぐ
スズキの横に寝転んだ妻の身長と同じで140センチを少し越えている

春には真鯛も釣れる
大型の真鯛がかかっても自作のタモが役に立つ
近所の旅館の主が釣り上げるのを見ていたようで、米二俵で売ってくれと言うので売ることにする
旅館の主が真鯛の長さをはかると104センチ
大きすぎる魚はあまり美味しくないのにと思いながら引き渡す

ある時魚が獲れない、最近は魚が減ったと嘆く若い漁師に出会う
魚は頭が良いのだ、漁は魚との知恵比べ
なんの考えなしにやったところで成果は上がらないとノウハウを伝授するも、若い漁師はわからん！と悪態をついて帰る
最近の若者は小手先のことばかりを知りたがると感じる

80歳になり船にも久しく乗らなくった
今はゆっくりと過ごす、孫が嫁を連れてきて妊娠していると話した
初のひ孫だ

曾祖父の話   終わり