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▼ 風とヒゲ


パタパタと電線の揺れる音で目が覚める。
ベッドから半身を起こし、カーテンの端をめくり薄暗い外を覗く。
常夜灯の光の影に、防風松が首を振って強風を報せている。
明るくなると、窓越しに見る浜名湖はウサギが目視できるほど跳ねていた。
ボートを諦めるには、十二分な音と光景だった。
予期していた事とはいえ、何かをしようとする気力が極端に失せる。

出来上がった無駄な時間の中に身を投じ、意味も無く庭を眺めて見る。

カラスエンドウが結構生えていた。
子供の時分、笛にしてピーピー鳴らしていたものだ。
モノの本によれば、鞘は未熟な状態で食すことができるらしい。
いつか食べてみよう。


しばらく観察すると茎の部分に、アブラ虫だろうか？虫が無数に密集している。
てんとう虫に教えてやろう。




風が緩くなったのを見計らい、湖面を見るために屋上に上がってみる。
ウサギは相変わらずだ。

遠くに桜が見える。
今年のは暖冬のせいだろうか、葉も同時に生えてきている。影響が目視できるいい例だ。
この分だと大嫌いな毛虫も、たくさん湧くのだろう。



バォッ


時折強い突風が吹く。

桜の花びらが何枚か飛んできた。
あの遠くの桜だろうか。


まだまだ春の風は手強い。



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