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▼ プラスチック業界の行く先(その1)
- ジャンル:日記/一般
今日までに何回「ゴメンナサイ」を言っただろうか。。。
あ、射出成型及びその金型製作を行う会社の品質保証部をやってます。
肩書きは部門長代行ですが、部門長は社長が兼任していますので、実質的には部門長です(笑)
え~、今年の春にISO管理責任者は外れました。
理由は色々在るのですが、それはまた今度。
そう、良くニュースで見る「お客様へご迷惑をおかけしました・・・」って言いながら、記者会見で頭下げる集団の真ん中に居る人と、同じ仕事をしています(爆)
弊社は製品設計を行うメーカーではなく、部品を作っている会社です。
まぁそれこそ最近はアッチこっちで聞く、消え行く街の工場ですね。
規模は年の売り上げが10億前後ですから、この手の製造業としては小企業といえますね。
バブルの頃に無駄な拡張を行わない、慎重な経営手法を用いていた事で、受難の時代を乗り越えてきました。
樹脂業界で60年ほど生き残っていますので、ある意味では老舗とも言えます。
やはり、成型と金型の両部門を1社で行っている事が強みです。
樹脂屋は多くが金型を作れず、金型屋は樹脂屋の求める物を理解しにくいのです。
また、通常は両社の間には売買契約が発生する為に、修理やメンテナンス等の再には金銭の受諾が発生しますので、ハイレスポンスでの仕事をこなす事が難しくなります。
仕事は60%ほどが、自動車産業関連です。
残りの40%を医療機器メーカーや、エアゾール(スプレー)、化粧品等で占めています。
弊社の場合はその職種とお客様の形態から「一品売り切り」を行っていません。
常にリピートでの生産であり、生産能力に対しての新規製品受注が営業部隊の仕事となります。
コレは通常、品質保証部と言うと、エンドユーザーのクレーム対応が主と見なされていますが、弊社の場合はほとんどが「お客様はいつも同じ人」という事になります。
騙し売り?
無理(笑)
それをやった瞬間に、あっという間に信用を失います。
実は昔はそれでも何とかやれたらしいです。
一生懸命に色々と隠し、顧客の「担当者と仲良くなれば・・・」なんて事を普通に言ってました。
※未だに現状把握していない管理者は同じこといってますがw
数年前に私がこの品質保証部門に来た時は、ちょうどのそ変換時期でした。
自動車メーカーも相次ぐリコール隠しが発覚し、金で物を言わせていた被害者も賢くなってきました。
おや?
ひょっとしたら、その問題発生後の対策費用よりも、不良発生を抑える対策をした方が安いし売れるんじゃないか?
という時代でしたね(笑)
弊社の品質保証部は大きく分けると、3つのプロセスになります。
・社内における品質保証体制の確立
・顧客に対する品質の保証とその契約(に関する~~となりますが省きますw)
・社内生産部門からの依頼品の測定
です。
なんだか難しく思う人も居るかもしれませんが、たいした仕事では在りません。
コッソリと会社の備品使って、フックを顕微鏡で見てるぐらいですからね(笑)
簡単に言えば、お客さんの求める品質要求に従い、弊社の製品をその要求レベルにするための仕事です。
ちなみに、そのお客さんの要求レベルとは、取引先によって違います。
その要求を満たす事ができるのか?
満たさないならば、どうやって満たすか。
出来るなら、どうやって安く満たすか。
その為に、商売の基本である、「お客様を満足させる為に、安く早くできるシステムの構築」を日々考えているのです。
で、その構築を行うのが品証部なら、その構築されたシステムを活用するのが製造部です。
現場は大変ですよね。
頭でっかちの理論ばかり言う品証の若造に、カンコツ作業を基準にコストダウンの案を通さなくてはならないのですから(笑)
頑張るとか気をつけるとか、そういうのは全部却下。
品質保証部の仕事は、現場とはなかなか仲良くはやれません。
コレは現実です。
なぜならば、私達は「製造業における唯一の理性である」と言う主旨で仕事をしてます。
それはお金の掛かる事であり、品質保証をしない(製造責任の放棄)でも良いなら、製造コストは弊社の場合はひょっとしたら半分以下になるかもしれません。
そりゃぁ儲かります♪
でも、そんな事をしたら、パカパカと不良品を作り、あっという間にお客様は居なくなります。
当然ながら工程内不良も山になるので、最終的にはコストは上がります。
そうならない為に、お金を掛けてでも「品質要求レベルに見合う製品を出荷するシステムを構築」しなくてはならないのです。
ね、理性でしょ(笑)
でも、当たり前ですが、お金は掛けたくない。
この絶妙なバランスを保つ、ひじょうにやりがいのある仕事です。
だから、たまに不良品が流出した時は、真っ先に品質保証部がお客様への対応を行います。
だって、会社としての理性が機能していないから、流出するんだもんね。。。
そりゃぁ怒られます。
出荷検査は何やってるんだ?と。
何回も「ハイゴメンナサイ」とアナウンスします。
特に自動車関連は、非常にお客様の品質保証体制がしっかりしているので、超絶な理論攻めに合います。
で、とりあえず、よく解らなくても謝ります(笑)
相手も人間ですからね。
皆の前で起こる事が仕事のときもあります。
で、ひと段落してから、「不良の内容について打ち合わせ」を行います。
・どこが不良なのかを、図面及び取り決めに従って確定します
・その品物を応急処置として使えないかを検討します
・使えない時は、納入数に対して不良品の数を特定します
・選別作業もしくはロッドアウトを確定します
・社内在庫の確認及び、次の納入に対する調整
ここまでがその日に一気にやること。
当然ですが全てマニュアル化しています。
どれか一つを逃がすと、悲惨な事がおきますからね。
それは自動車メーカー(私達は愛称をこめて天皇と呼んでます)への納期遅延です。
コレ最悪。
弊社は自動車メーカーに電機部品を納入するメーカーの下請けです。
弊社とメーカーさんの間にある、部品製造会社がお客様です。
ただでさえ不良品を納入して申し分けないのに、そのせいでお客様がお客様に謝らなくてはならない事態には、絶対に発展させてはいけません。
まぁ、救急車がゆっくり走るわけにはイカンので、コレに弊社のアウトソース(二次外注さん)が絡んだ時には、下手すると関東北部から南部を何往復もすることがあります。
私達はコレを、悲壮感たっぷりに「やべぇ。事件発生だ・・・」と言うのです。
朝8:30(弊社品証部の始業時間。もちろんお客様は知ってます)に掛かって来る客先受け入れ検査様の電話(番号通知で解る)は、だれも取ろうとしません(爆)
本気で一回出なかったら、私のプライベートな携帯に掛かってきました(泣)
まぁ、シャレのきく相手でしたから、善しとします。
顧客が毎回同じという事はとっても大変な気もしますが、実はいいこともあります。
それは、攻める品質保証に方向転換をしたときに気がつきました。
業務を担当者として3年経験した再に思っていたのですが、不良を無くす手段は2つしかないのです。
・不良を作らない
・不良を作らない
ん?
一緒か?
一つの「不良を作らない」は、製造現場における「要求事項を守るための努力」です。
これが一般的な品質保証(もちろん品質管理を含みます)の王道と思われています。
お客様は神様ですから、言う事を聞きましょう。
その結果が膨大な検査・管理コストを生み出します。
前出した製造コストの半分の話し。
攻めの観点で見た品質保証は、もう一つの「不良を作らない」にキモがありました。
それは「良品と不良品の境目を、製造に有利な条件にする」と言うものです。
今までに多くの下請け企業は、お客様の言う事に「単価安いのにそんなに管理していたら、原価割れしちゃうよ(泣)」とぼやきながら、泣き寝入りしてるフリをしつつも「バレなきゃ良いだろ」と言ってきました。
しかし、数年前に私は、流出不良対策でお客様の設計部門と話をする機会があり、その時に聞いてみたのです。
「これ、何で不良なんですか・・・?」
衝撃、いや、笑激か?
帰ってきた応えはあまりにも笑えました。
「いや、たぶん使えるよ。でも、図面に描いちゃったからねw」
で、その部品を持って、今度は工場のラインの班長様へ
「え?これ、不良なの?」
ありゃりゃ?
あわてて受け入れ検査(弊社製品の受け入れ窓口)の班長へ。
「いや、図面に書いてあるからNGねw」
あれ?
だれもこの「現在の取り決めでは不良品」を、製品として悪い物であると言う認識が無い。
あわてて弊社製造の古参に電話。
「うん、今までは普通にダマテンで出荷してたよ。今回ばれちゃったのは残念だったね」
なんだそりゃ(汗)
その後、あんまりにも同じ事が起きるので、管理者になったときに方針を変えました。
「今までダマテンとか、暗黙で流していた不良品を、全て良品として認めてもらおう」と。
とうぜんですが、それは大変な事でした。
「わざわざ問題を揺り起こす必要は無い」と言う、社内の大きな反対を無視し、少しずつ少しずつお客様の設計・品証・検査・技術の担当者と話を詰め、最終合意文章にまとめたのは2年後です。
その成果もあり、まずは流出不良が減りました。
当然ですが、今まで「ばれちゃった不良」の為にやってきた検査を大幅に廃止。
また、それは工程内不良の減少という形に表れます。
わけも解らずに減った工程内不良集計を見た製造部門管理者は、自分の手柄として一生懸命に社内でアピールしていました。
あぁ、幸せな人たちだ。
気がついてる人は「品証が2年でやりやがった!」と言ってましたが、そんなのはどうでも良い事なのです。
理性が仕事をしただけで、それは会社の利益の為にやっている事です。
どの部署がとか、誰がとかは興味がなく、ただその結果に対して喜べれば良いのです。
まだまだ課題は山済み。
もっと精度を上げれば、無駄な管理を減らして「やりたい管理」へお金を回せます。
そうすれば、もっと製造コストを下げて、人も少なくする事ができます。
はい。
私がやりたいことは、現在の日本での量産縮小です。
どう考えても、海外に勝つ(小さな弊社が生き残る)にはそれしかない。
今後、日本は製造業の『量産分野』では、世界に太刀打ちが出来なくなると思っています。
これはイコール、現在手を打ててない下請け業者の大量粛清が始まる事を意味していると思っています。
大手メーカーって、あっけなくそれをやります。
私の知る限りでは、東京都羽村の自動車工場閉鎖が最も大きかったと記憶します。
アレは、自社従業員の大量解雇以上に、下請け企業の粛清を行った良い例です。
もちろん、自社を守るためには悪い事では在りません。
その動きが解っているのに、今の現状に甘えてる下請けも悪いのです。
生き残るのは、設計機能を持つ海外生産メーカーか、試作対応が出来る「本当の技術分野」において、海外よりも『高品質で安く短納期で作る事が出来る会社』であると思っています。
それも、金型技術だけでは生き残れませんし、成型技術だけではなおさら無理です。
弊社にも数名ほど「射出成型技能2級」を持つスタッフがいますが、そんなのは今後はいて捨てるほど溢れてきます。
それに対応する為に、どうやって組織の形を変換し、品質保証体制を再構築するかがキーです。
私達は今日もお客様に怒られます。
怒られるほどに、「これでまた会社を良くする口実が出来た」と思いながら。
この国でプラスチック製品を作っている私は、最近はそんなことを考えながら仕事をしています。
で、釣りしながら、「このルアー、射出条件変えれば、もっと良い物に出来るんじゃないか?」と悩みます(笑)
あ、便利グッズ紹介。
冬のウェーディングでは効果絶大。
最悪な袖から侵入する水を、大幅に減らせます。
最悪な袖から侵入する水を、大幅に減らせます。
【お知らせ】
脚立も国産を買いましょう(笑)
- 2010年12月2日
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入江 真一
長崎県