▼ 駆け抜ける男 前編
- ジャンル:日記/一般
俺が18歳の頃、当時地元では最速の一人となっていた。
ある日、クラスメートが6時間耐久レースに出るというので、第3ライダーとしてお手伝いで出たのが初めてのレースだった。
クラスメートより数秒も速いラップで周回を刻んでいくのは気持ちが良かったと共に、何より自分の速さを初めて結果としてとらえた瞬間だった。
やがて地元ショップに誘われるままにミニバイクのレースに出るようになり、千葉のサーキットで毎回のように表彰台に乗って自信も最高潮というとこで、秋が瀬サーキットでとんでもない化け物に出会うことになる。
それが加藤大治郎だった。確かその時は俺は8位だったのに彼はぶっちぎりの優勝でしかも周回遅れにされた。マシーンのせいとか体重のせいとか言い訳をいくつ並べても足りないほどの圧倒的な差。まさに驚愕だった。その差は俺からレースに対する情熱をあきらめさせるのに十分だった。
確かにレース前から勝負が付いている事は感覚的に解っていた。こっちはバイトして必死に貯めた金でやりくりしてるのに、向こうにはスポンサーが既にたくさん付いていて、常に新品同様のバイクでレースに挑んでくる。それでも公道レーサーの意地だけでやっていこうと思ってた矢先に出会った男だった。
辞めるという俺に仕方がないと周りは言った。やつは天才なんだから、と。恵まれていていいよな、とも言った。
「でもそれは違う。」
俺は言い返した。俺たちがドラクエだ、野球だ、合コンだ、と遊んでいる間もあいつだけは必死に練習していたはずだ。天才なんかじゃない。圧倒的な練習量で勝ち抜いてきたから今の環境があるんじゃないか、と。
俺は自分の淡い始まったばかりの夢を加藤大治郎に乗せることにした。
バイクを降りた後も、それから彼の快進撃をずっと追っかけていた。
ところが、世界最高峰の舞台、それも彼が得意なはずの鈴鹿で事故が起きてしまった。
本当に速い奴ほど、人生も速く駆け抜けてしまう。
- 2003年4月20日
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