釣りブームは終わったのか?データを元に徹底解説!今後の釣り業界の行方とは

コロナ禍で一躍脚光を浴びた「釣り」。手軽なアウトドアレジャーとして、かつてないほどのブームが到来しました。しかし、最近「釣りブームは終わったのでは?」という声を耳にすることも増えてきました。実際のところ、どうなのでしょうか?

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この記事では、最新のデータを基に、釣りブームの現状と今後の展望について、釣り人の皆さんに分かりやすく解説します。

コロナ禍でなぜ釣りブームが起きたのか?
まず、なぜコロナ禍で釣りブームが起きたのかを振り返ってみましょう。主な要因は以下の3つです。

・「三密」回避のレジャー: 屋外で人と距離を保ちやすい釣りは、感染リスクを抑えたい人にとって魅力的な選択肢となりました 。家族や友人と自然の中で過ごせる解放感も人気の理由でした 。

・メディア露出とイメージの変化: テレビや雑誌、特にSNSで釣りの魅力が拡散されました。「釣りガール」の登場は、従来の「男性の趣味」というイメージを覆し、若者や女性にも釣りが身近なものになりました 。インスタグラムでは「#釣りガール」の投稿が42万件に達するなど、その広がりは明らかです 。

・インフルエンサーの影響: 釣り系ユーチューバーが釣りの楽しさや手軽さを発信し、多くの新規参入者を後押ししました 。
これらの要因が重なり、初心者やファミリー層、そして一度釣りを離れていた人々も巻き込んだ大きなブームが生まれたのです 。

ブーム終焉の兆候?データで見る市場の変化
しかし、その熱狂も落ち着きを見せ始めています。各種データから、市場の変化を見ていきましょう。

釣具の国内出荷額の減少:
一般社団法人日本釣用品工業会(JAFTMA)によると、釣用品の国内出荷額は2021年の約1,791億円をピークに、2022年は約1,686億円(前年比5.8%減)、2023年(見込み)は約1,493億円(前年比11.5%減)と2年連続で減少しています 。2024年は若干の回復が予測されていますが、ピーク時の水準には及ばない見通しです 。これは「コロナバブル」が終息し、市場が落ち着きつつあることを示しています 。

製品カテゴリー別の動向:
釣竿: 2021年から減少傾向にあります 。
リール: 2023年、2024年(予測)と成長を維持しており、市場構成比を高めています 。コアな釣り人の買い替え需要などが考えられます。
ルアー: 2021年から大幅に減少し、ブームの落ち着きが顕著に表れています 。
釣用の衣類: 2022年にピークを迎えた後、大きく減少しました 。ファッションとしての需要が一段落した可能性があります。

大手メーカーの業績にも変化:
シマノ: 2024年の国内市場売上高予測は、コロナ禍前の2019年の水準を下回る見込みです 。
グローブライド(ダイワ): 2024年3月期のフィッシング事業売上高は前期比で減少。特に日本国内の落ち込みが大きくなっています 。
ティムコ: 2023年11月期決算では、コロナ特需の反動減や市場の在庫調整、コスト上昇、天候不順などを理由に大幅な減収赤字を計上しました 。

釣り人口の動向:
日本の釣り人口は、1990年代後半の約2,000万人をピークに長期的な減少傾向にありました 。コロナ禍で一時的に持ち直しましたが、「レジャー白書」によると、2022年の520万人から2023年には510万人へと再び減少しています 。
年齢構成を見ると、2023年には20代男性の参加率が目立って減少し、70代が最大の参加年齢層となっています 。これは、ブーム期に参入した若年層が定着せず、釣り人口の高齢化が進んでいる可能性を示唆しています。

なぜ釣りブームは落ち着いたのか?釣り人がフィールドを離れる理由
ブームが落ち着いた背景には、いくつかの要因が考えられます。
「コロナ特需」の反動と在庫問題: パンデミックによる一時的な需要増が落ち着き、メーカーや小売店は過剰在庫の調整に追われています 。これは「ブルウィップ効果」と呼ばれる現象で、需要の変動がサプライチェーン上で増幅された結果です。

釣り場の問題:
マナー違反の増加: ゴミ問題、騒音、違法駐車などが各地で問題化しました 。
釣り禁止場所の拡大: マナー違反が原因で、多くの釣り場が閉鎖されています 。

新規参入者の定着の難しさ:
釣れない、飽きた: 初めての釣りで釣れなかったり、単調さを感じたりすると、続けるのが難しくなります 。
準備や後片付けの手間: 釣具の準備やメンテナンス、釣った魚の処理が負担になることもあります 。
費用: 釣具や遊漁料、交通費などが負担になるという声もあります 。
その他: トイレなどの設備面や、虫エサへの抵抗感なども離脱の理由として挙げられます 。
天候不順: 猛暑や大雨など、釣行機会が減る天候も影響しています 。

今後の釣り業界はどうなる?市場の予測
国内市場全体としては調整局面が続くと予想されますが、分野によっては成長の可能性も秘めています。

縮小が予測される市場:
初心者・ファミリー向け釣具: カジュアル層の離脱により、厳しい状況が続く可能性があります。

成長・維持が期待される市場:
ハイエンド・高付加価値製品: 熱心な釣り人は、高性能・高品質な製品への投資を続ける傾向があります 。
専門特化型市場: ルアーフィッシングの一部や管理釣り場などは、根強いファンに支えられるでしょう 。
海外市場: 日本の高品質な釣具は海外で高く評価されており、特に中国市場などの成長が期待されます 。大手メーカーは海外売上比率が高いのが特徴です 。

新たな価値創造の動き:
体験型サービス: 釣具レンタルやガイド付きツアー、釣り船などが注目されています 。
DX: 釣果情報アプリや遊漁券のオンライン販売などが進んでいます 。
女性・若者向け市場: おしゃれな釣具やアパレル、SNSコミュニティの活用が鍵となります 。
サステナビリティ: 環境に配慮した製品や釣りのスタイルへの関心も高まっています 。

釣り文化と市場の未来のために
釣りブームの終焉は、業界にとって短期的な課題であると同時に、長期的な視点で持続可能な釣り文化を築くチャンスでもあります。
釣り人の育成と定着: 初心者向けのサポートを手厚くし、釣りの楽しさだけでなく、マナーや安全、環境保全の知識も伝えることが重要です。手軽に利用できる釣り場やレンタルサービスの充実も求められます 。

釣り場環境の保全: マナー啓発を強化し、漁業関係者や地域住民との連携を深める必要があります 。
新たな市場開拓: 海外市場への展開や、国内のニッチなニーズへの対応、インバウンドの釣りツーリズムなどが期待されます 。
DXとイノベーション: データ活用によるマーケティングの高度化や、環境配慮型製品の開発などが進むでしょう。

まとめ
コロナ禍の釣りブームは落ち着きを見せていますが、これは釣り文化が新たなステージに進むための調整期間と捉えることができます。市場はより成熟し、多様なニーズに応える形へと変化していくでしょう。
釣り人一人ひとりがマナーを守り、環境に配慮することで、未来の釣り場を守り、この素晴らしい趣味を次世代に繋げていくことが大切です。

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