被災地報告<石巻レポート>

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 被災地報告<石巻訪問レポート>
 
震災から三カ月が過ぎた。いまの被災地の状況はどうなのか。東京にいる我々の多くはその実態を直接目にしていない。
 
 
東京のベイエリアも陥没した場所もあったし、地割れがいまだに残っている。夜のベイエリアの暗さももちろん震災の影響だ。でも、津波被害にあった東北地方太平洋沿岸に比べたら、被害などという言葉を使うのははばかられる。

 



 
できれば自分の目で現実を見て、微力ながらお手伝いをしたいと、東京周辺にいる多くの人たちは思っているはずだ。いや、日本中の人が思っていると僕は思う。
 
 
職場の先輩がボランティアで石巻に行ってきた。これはそのときのボランティア活動のレポート。職場内にだけ還元するのではなく、少しでも多くの人の目に触れた方がいいと思って載せさせてもらった。
 
色々なご感想もあろうかと思うが、先輩の個人的な感想として読んでいただければと思う。
ちなみにこのレポートは、学生たちへのメッセージという形で書かれている。
 
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<石巻レポート>
 
石巻に行ってきました。石巻の天気予報は雨または曇り,台風あり,梅雨入りありで,先週に引き続きまた中止かと心配でした。自分が行けなくなるのは仕方がないが,現地の人のことを考えるとつらい。
 
 
 土曜日は仕事の振替休日。金曜日、仕事を終えて15:00に職場を車で出発。NPO栃木Vネットのある宇都宮へ。
 
 
途中渋滞などに合い,19:30宇都宮着。通常は2時間コースだ。20:00には宇都宮駅前のスーパー銭湯着。2:30まで3時間程仮眠して,3:30集合場所の青少年センターに。
 
 
添乗員含めて50名が4:00にバスが出発し8:30石巻専修大学着。そこでボランティア保険の登録をする。キャンパスの芝生には泊まり込みボランティア達のテントがたくさん張ってある。
 
 
そこからバス10分程で作業場となるお寺に到着。今日の作業はお墓の土砂・ヘドロ掃除と,近くの小学校裏の土砂・ヘドロ除去。私は力仕事の小学校裏へ。
 


 
霧雨の中,作業を開始。小学校裏の2メートルほどの道には,20~30センチの泥の下に黒いヘドロが2センチ程度,まるでゴムのシートのように固まっている。それをひたすらスコップで崩して掻き出し,土嚢袋に入れていく。
 

 








幸い小雨なので匂いはきつくない。ヘドロと一緒にガラスや陶器の破片,包丁,金槌,ノコギリなどの危険物も混じっている。写真など個人的なものは丁寧に寄せておく。
 
 
塀の反対側には民家が2軒あり,1軒は1階の家財道具全てを外に出している。もう1軒にはまだそこの住人が住んでいる。危険物などは目の前の空き家からの流出物かもしれない。
 
 
 ひたすらスコップで作業をして2時間後,小休止。雨がひどくなってくる。それから12:00までもうひと踏ん張り。ある程度土嚢の山ができると,今度はそれを移動する。
 
 
みんなで列を作り,手渡しで土嚢を広い場所に集める。こうして共同作業をしていると一体感が生まれてくる。作業している場所がある程度きれいになったので,今度はできた土嚢をトラックの荷台へ持ち上げる。
 



 
これが大変だった。1袋15~20Kを10袋持ち上げるのが精いっぱいだった。正直に言うと,へばってしまった。その後雨が激しくなり,ボランティアセンターの指示で,午後は中止に。
 
 
 
 
雨具を着ており,なおかつスコップでの作業のため,服は全身汗でグショグショ。もう雨で濡れているのか汗なのかはわからない。恐らく2~3Lは汗を流し,痩せたかも?と思う。
 
 
長袖の着替えを出発時の駐車場に置いてきてしまったのは失敗だった。万全の準備をしてきたはずだったが…
 
 
 
午後は作業中止のため,バスで漁港近くを視察することになった。
 
 

 (まだ打ち上げられたままのボートも)

   
 バス中から見たのは…。これは地獄というものか。
 
 



瓦礫を積み上げて作った巨大防波堤。高さ3~5階分はあったかも。その他に残っている建物の1階は柱だけ。鉄筋はまだしも,木造は基礎がズレている。TV報道でよく見た石巻病院もあった。
 
 
新築建てかけの家には緑のシートか掛けられたまま歪んでいる。集められた数え切れない車は,グシャグシャ。中には燃えて黒焦げの車も。
 


 
ただただ見渡す限り,無機質な瓦礫だけが散乱している。ここには自衛隊と重機以外は進入禁止で,ボランティアは活動できない。
 
 
辺りは腐った魚と漁船から出た重油とヘドロと火災で焦げた匂いなどが入り交じり,バス中からもそれがわかった程。この日は雨が降っていたので臭いは緩和されたようだが,もし晴れていたら…想像を絶する臭いだろう。
 
 
話によると水産加工会社の在庫が電気の不通で腐敗し、一日に約900t、最終的には4万5000tの海産物を処分しなければならないという。
 
 
普段暮らしている自分の街が,学校が,商店街が,跡形もない。友達と遊んだ路地も公園もない。近所の家も,自分の家も根こそぎ津波に持っていかれた。ここは瓦礫の荒野と化している。
 

 (奥の方につぶれた車が散乱し、墓石の上に乗っている)

 
電気がないから信号は勿論ついていない。警察官が交通整理している。夜には明かりがない暗闇が広がるだろう。瓦礫が周りにどけられて,かろうじて道はあるものの,路面はガタガタ。もうその景色に圧倒されて,呆然とするしかなかった。
 



 
被災当時に比べ、町中の道は片づけられているとはいうものの、3か月たった今でも,墓石の上にはひっくり返った車が何台も乗っかっていた。「復興」などという言葉には程遠く,ただただ唖然とした。
 
 
ここには人が暮らしていた温もりはない。見渡す限り,無機質な瓦礫だけが散乱している。さらに地盤沈下で満潮時は海水が上がり,水が今も引いていない。所々水たまりが出来ている。これから梅雨入り。カビや病原菌も心配だ。
 
 
とても言葉では言い尽くせない。もう自力で這い上がるとか頑張って復活するとかのレベルではない。他人の手を借りても何年,いや何十年かかるか…。乗り越えるには余りにも厳し過ぎる現実だ。
 

 (避難所になっている学校)
 

それでも残った家の中を片付ける人達がいた。商店街の洋品店では商品の服を整理している老夫婦がいた。お店を掃いている人がいた。被災地は石巻だけではない。
 
 
 我々には報道しか情報を得る術はない。地元の方々を元気づけるためなのだろうが,報道では明るい面や「復興」という言葉を頻繁に耳にする。
 
 
ひょっとしたら,募金もたくさん集まっているし,ボランティアもたくさん行っているからもう地元は大丈夫,などと感じている人もいるかもしれない。
 
 
しかし現実はそれほど甘くはない。今この瞬間にも震災に遭った人たちは避難所などで厳しい生活を強いられている,必死にもがいている。
 
 
自分も含めて,もう一度よく考えたい。今何をすべきかを。そして自分が出来ることを。
 
 
戦後の日本は何でも右肩上がりで来た。しかし最近は政治にも経済にも全ての面において閉塞感を感じるようになっていた。そういう時期に発生したこの震災は,新しい時代へのターニングポイントになるのかもしれない。
 
 
これからの時代を生きる君たちは,自分の将来と合わせて,今後の日本についても考える時期ではないだろうか。
 
                                     以上
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以上が先輩のレポートである。
 
 
現地に行ける余裕がある人は、ボランティアに参加するのはとてもいいことだと思う。まだまだ現地のボランティアは足りていないらしい。
 
 
僕も現地に入って何か手伝いたいという気持ちは強くもっている。きっと多くの人がそう思っているはずだ。
 
 
でも一方で、なかなか無理ができない人も多いと思う。繁忙な日常に圧されて身動きが取れない・・。そういう人も少なくないと思う。
 
 
僕はそれでもできることがあるはずだと思って、微力ながら自分なりにできることをしているつもりではある。


たしかに東京は見た目上は普段通り。テレビもほとんど日常に戻っているし、東京の多くの人は生活も元に戻っている。せいぜい節電の影響と、ニュースの被災地の報道をみる程度。物資も物によっては不足があったりするが。
 

こういう東京の状況の中で、感覚が麻痺してしまわないようにしたいといけないと僕は自戒したい。


東京からできる支援も沢山ある。時間ができれば現地に行ってもいい。義援金だってまだまだ必要だ。あるいは会社の研修や旅行に東北を使ってお金を落とすだけでもいい。僕はあえて東北産の食品を買ったりもしている。本当にささやかだけれども。
 
 
のど元を過ぎても熱さを忘れないことが大事だと思う。少なくともこれからも、東北が立ち上がるその日まで、現地のことを忘れず、同じ日本人どうし痛みを分け合い、やれることをやっていきたいと僕は思う。
 
 
 
 
facebookを通じた海外の友達とのやりとりを、最初のブログ「春風の中で」に書いた。国籍の違う友人ですらあのように思い、助けてくれる。いわんや同じ日本人どうしにおいておや、である。
 
 
偉そうなことは言えないけれど、僕も一人の日本人として、社会における己の役割を果たしつつ、強い日本の再生のために微力ながら力を尽くしたいと思う。

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