今年の集大成となる1匹を

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2022年。
ヒラスズキを狙い始めて2年目を迎えた。

この一年、一切何も得られなければいったん諦めよう。そんなことを思っていた。
だが、心のどこかでは諦めきれず、様々な思いを抱えてフィールドへ向かう。
今年はまだ冬も厳しい2月半ばから追い続けた。


何も得られずに迎えた早春の3月下旬。
フィールドのタイドプールにイワシが入っているのを発見。
ベイトはいる。あとはそれを追うヒラスズキを捕らえるだけ…。

この日は穏やかすぎるほどの天候。
心地よさを感じるほどに海も凪いていた。



わずかながらにサラシの出るポイントへ出向き、タイミングを待つ。
わずか数投で海からの返事は得られた。自己記録更新のヒラメだった。

「まぁ、ある意味、磯ヒラか。」
と、心の中で嬉しい反面、残念な気持ちであったのを覚えてい
る。


その場で続けるが、反応はなく少し移動。
サラシの具合を見て、タイミングよくキャスト。
2投目。時間は要さなかった。



バイト直後に強烈なエラ洗いを目の当たりにして確信。
今まで釣り上げたマルスズキ以上に強烈な引きとエラ洗いだった。
丁寧にやり取りし、ようやく手にしたヒラスズキ。



50㎝。正確にはヒラフッコだが、自分の考えやイメージに近い形でとれた1匹。マグレで釣れた去年の小物1匹とは比べ物にならない。





何かを掴んだかもしれない、とその2週間後の4月半ばも現地へ。
頭に残ったイメージそのままに挑むが、反応は得られず。

帰宅も考え始める。ふと目線の先には波と同時に打ちあがるイワシ数匹。
これはチャンスではないか?もう一度やる気を起こし、狙った場所へ投下する。








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65㎝。心待ちにしていた正真正銘のヒラスズキ。
去年1年間の時間、費用。すべてが報われた瞬間だった。


この1年、この調子で行ける。そう確信した。どことない高揚感を感じていた。







そこから初夏を迎えるまで
時間さえ見つけてはフィールドに向かった。
残酷なほどに報われず、結果は一切得られない。
自身の経験やイメージはほとんど失なわれたように感じた。

SNSを見ても、近いフィールドで釣果を出すアングラーはいる。
あの釣果はたまたまハマっただけか。と思わざるを得なかった。

より厳しくなる真夏は狙う事すらせず、他の釣りで楽しんでいた。



そして迎えた初秋。多くの魚釣りにおいてハイシーズンと言われる季節が目前に迫っていた。
経験不足は実践で補うしかない。そう思い、残暑厳しい9月から再びフィールドに向かった。



分かりきったことだった。
投げ出したくなるほど、何も得られなかった。
様々な場所に移動し、様々なルアーを試したが、返答は一切得られず。

だが、時間を作り、現地へ向かった。

春に出会ったあの2匹が自分を動かし
2匹を釣り上げたイメージが自分を磯に立たせ、
心の片隅に佇んでいた自分のやり方で釣れる。という根拠のない自信でロッドを振り続けた。




何も得られない時間だけが過る中で、あることを思う。
ここまで何もないと自身の腕以外に疑う事。
そう、フィールドである。

いつも通う場所に全くいないわけではないだろう。しかし、魚影の問題がある。
11月も終わる頃、そう思い
冬間近、通いつめた場所を思い切って移動することにした。


今までで1度しか訪れていない場所。
それもド日中に数時間。ポイントはわからず。
思ったことは「ここでもできそう。」という事だけ。
経験が全くない分、新たな場所へ向かうことは不安でしかなかった。


どうしても諦めきれず、朝マヅメは通い慣れた場所へ入った。
当たり前のように何もなく、午前中のうちに新場所へエントリー。

時間も悪く、昼頃まで粘るが釣果は得られず。
帰り道、一人のアングラーに出会う。
タックルを持たない手には、追い続けている魚。

「朝の時間だけでしたね、それ以外は全くです・・。」

その一言で十分。十分すぎる。最大のヒントを得られた。








12月を迎えた。
自身の予定を見ても磯に通える日はこの日を入れてあと2日。

移動中、忘れていた。とタイドグラフを確認。
【風速13m/s】
この風なら波も荒れないわけがない。

いままで経験したことのない荒天に立ち向かうこととなった。



準備してポイントへ向かう。
立っているのがやっと。ロッドを振るのも当たり前に困難。
フルスイングはできない。ティップ使って投げるのが精いっぱい。

想像していたより波は荒れていなかった。
風向きを計算に入れるが、しかし何をしていいかわからない。

これは無理だ。いったん引き上げよう。
車へ向かって歩いている最中に一人のアングラーが荒天に立ち向かっている姿を見る。

この天気でよくやるな…。なんて思わなかった。

この天気でできるんじゃん。釣れるって事だろ?!
そう考えたと同時に、駐車場に向かっていた身体を海に向けて動かし始めた。



少し冷静に考え、ロッドを振るのに影響の少ない立ち位置のポイントに入る。
風、波のタイミングを見極めてキャスト。

選択したミノーはイメージとはかけ離れた飛距離、場所に落ちた。
すぐさまルアー変更。ミノーは使えない。
ならばと、今までほとんど出番のなかったシンキングペンシルに変更。


良いところに着弾した2投目。

着水同時に強烈なバイトを感じ、アワセをいれる。
糸ふけも十分に取れず、ロッドが爆風に煽られたこと
何より予想していなかった出来事。
分かっていた。アワセが十分でなかったことは。

エラ洗い1発でフックアウト。

姿は見れた。遠くで跳ねる銀鱗を。
バイトを得られた嬉しさと、口から飛んでいくルアーを見る悲しさとで複雑な気持ちとなった。


その後は何もなく、仕方ないと車へ。
着替えている最中にアングラーを見かける。同じように上がるようだ。
…またもやロッドを持たない手に握られている魚。


バラしつつもバイトを得られた事実と釣り上げたアングラーを見て
この荒天でもできる。また根拠のない自信を得た。
次は自分よ。と心でつぶやき、海を後にした。







2週間後。今年最後になるであろう日。
天候。風速は11m/s、それに加えて本日は雨。小雨ではなく、しっかりとした雨。

これほどに試練を与えるか…いいだろう。やってやる。と心に決める。

空の色が変わるころに移動開始。
大雨に打たれながらロッドを振る。
風のわりに波が落ち着いているのか、サラシがあまりない。
周囲含め1時間ほど粘るが、移動することに。


移動中、海鳥が騒ぎ始める。
これはチャンスかもしれない。焦る気持ちと裏腹に一歩ずつ慎重に踏み出し、次のポイントへ。


手始めにミノーで開始。
ですよね、と心でつぶやくほどに何も起こらない。
距離も欲しい。ここで一番の信用を置く、”スイッチヒッター”投下。


風の影響を受けたラインがいい感じに弧を描いてルアーを泳がせる。
繰り返すこと数投目。


だいぶ手前まで引かれたルアー。足元のサラシを通る頃にロッドをひったくられた。
しっかりとアワセを入れる。前回よりしっかりと入った感覚は伝わった。


強風と押し寄せる荒波、そして暴れる魚。
ドラグを調整し、慎重に、丁寧にやり取りを繰り返す。
サラシの中、求め続けた魚影を確認。
そしてリアフックが外れた瞬間も確認。


焦らないわけがない。波に合わせて何とか陸地にあげる。
銀鱗の美しい姿を堪能する余裕はない。
焦りと興奮とで入り混じった心はフィッシュグリップを外すことさえ困難にさせた。




時間がない。
波の来ない安全な地まで、魚を抱っこして運んだ。















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改めて銀鱗を堪能。
※肝心な銀鱗が伝わらないカメラ性能を恨む。



早春から半年間。待ちわびたこの瞬間。
暴風雨や荒波の轟音に負けないくらい叫んだ。


58㎝とわずかにスズキサイズに届かなくとも十分。
結果がでたことが何よりも嬉しかった。

まだ出せるかもしれない、とミノーとシンペンを交互に繰り返す。
スイッチヒッター投下中にまたもやバイト‼

すぐ横に根がある。そうはさせまいと移動。
中に転倒。地球に向かってKneeDropかました。

激痛に耐えながらなんとか立ち上がり、立て直す。
根に引っかかるルアーを竿先から感じ取り、そっと哀愁さえ感じるルアー回収。

冷静になり、これ以上は大けがを負う。やめておこうと帰宅へ。




帰りがけ、地元のご老人に出会う。
「何釣れた?スズキかい?
「ヒラスズキですね!」
「そうか、雨でも今日はサラシよく出てたろう」
「お兄ちゃん、今日はそれで一杯だな!」
「えぇ、楽しみますよ!」

こんな会話ができるのも釣果を上げたアングラーの特権だろう。





この日までの時間や費用に加え
荒天で釣れた、足元で釣れた、シンペンで釣れた新たな経験は来年の糧に。

追い続け、諦めずに追い続けた2年間の最後に大いなる自信となる結果が出た。


来年、サイズアップを求めつつ、まずはコンスタントな釣果を目指す。

 

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