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メンテナンス(まっすぐ組む話)

  • ジャンル:釣り具インプレ
前回のつづき
 
フリクションロスをなくす事がとっても大事ですよ~という話しをしています。
ただし、その物を自分がどう使いたいかと耐久性とのバランスの中で話です。
 
製品性能を100%発揮する為に、グリスやオイルの耐久性や量を犠牲にすることで、ベアリング等の回転系、また摺動部におけるフリクションロスを減らすという考え方です。
ですから、リールは1年ノーメンテ!とか言う人には、そう言う方向の油脂類の塗布が必要であり、ギリギリまで攻めていきたいという人は薄く(少なく)することが有効ですね。
また、その極限状態での「その油に求める性能」を高めた市販品もありますから、試してみるのも良いと思います。
 
と、ココまでが前回の話し。
では今回は、次のステップの
 
3 オイルシール/ダストシール等の接触
4 直角水平平行と締め付けトルク
 
の話しをします。
 
通常の量産品の回転部分には、「ゴミが入らないようにする」ことと「グリスが流れ出ないようにする」と言う目的で、ベアリングはシールベアリングと言う「フタが付いたベアリング」が用いられています。
また、ベアリングがなくクリアランスを保ってカラーなどが使われている場合は、その両端にオイルシールやダストシールと言われる「ゴムでできたリングやシール」が用いられています。
 
よく見る、黒い輪っかです。
 
通常ゴムは非常に乾燥時のグリップが高い(滑らない)のですが、これに油分(や水分)が付くと非常に滑るという性質を持っています。
また適度な変形性も在るので、収縮を利用して「きつい」とか「ゆるい」という篏合(かんごう)をすることができます。
 
はい、もうわかったと思います。
 
「ゆるく」すれば、フリクションが減ります。
「きつい」状態での篏合はパワーのロスの原因となっています。
 
バイクなら、ホイールベアリングの外についているダストシールなど。
リールではベアリングのカバーもこの部類に入ります。
(もともとカバーがついていないベアリングを、オープンベアリングと言います。シールベアリングより安いです。)
 
ダストシール系は要らないなら取っちゃうのが手っ取り速く、すさまじく回転がスムーズになります。(その際に、ベアリングの球が少なく、片側へ寄ってしまうものは要注意!絶対にそのまま使わないでください)
もちろんゴミや水は入りますので、毎回使った後に分解洗浄するのが基本ですから、メンドクサイのは間違いないですが。
 
次に機能的に外す事が出来ないオイルシールの場合は、その接触部分をヤスリで削ってやることもします。
要するにアタリがきつい部分をゆるくしてしまうのです。
この場合、ちゃんと均一に加工しなくてはなりません。
部分的に強く当たると、その位置を起点に捻じれたりする(これは見え方ではなく力の入り方)ので、へたくそがやると逆に負荷が掛かってしまう場合があります。
 
一番良いのは、ひたすら使う事です。
よく新品時から使い込んで「あたりが出る」と言う言葉が使われますが、ゴム系部品ではとても有効な方法で、あえて古い製品から部品を移植したりすることもあります。
なお、物によってはゴムではなく接触相手の金属が摩耗して「良いアタリ」が出ている場合もありますので、そこはよく確認したほうが良いです。
古いゴムは「劣化による硬化」が起きていますから、古けりゃよいというものではありません。(でも、その硬化したのが良い時も・・・w)
 
これらの事を踏まえ、耐久性と自分のメンテのしなさ加減をよく考えて、好きな方法を選んでみて下さい。
そのまま使うか、外すか、削るか、古いものに変えるか
その四択です。
 
あ、わたしはレース用バイクは躊躇なく外します。
なぜならば、毎回分解清掃するので。
釣り用リールはそのまま使いますが、メンテの際に硬めのグリスに変更をします。
なぜならば、ぜんぜんメンテしないからw
 
次は最後になりましたが、
4 直角水平平行と締め付けトルクとグルグル回る物の重量バランス
の話し。
 
この最後の項目は「書かないほうが良いかなぁ」とも思いましたが、やはりフリクションロスの話をする上では核心なので、誤魔化さずに書くことにしました。
先に断っておきますが、特定のメーカーのリールや製品を非難することを、私は望んでいません。
あくまでも、メンテナンスとは何なのか。そしてそれを受け止める「製品精度」とはどういうものなのかという話しをするだけです。
もしこの先を読んで「あぁあのメーカーのアレだな」とか思ったならば、それはそうかもしれませんが私の関与する事ではありません。
 
ココまで話してきたフリクションは、回転系の物性や製品そのものの話しでした。
「その接触部分はどうやって抵抗を無くしていけばよいのか」という内容でしたが、ココからは「その接触に携わる部分に、どうやって均一にトラクションを掛けてあげるか」という話しです。
 
簡単に言えば、ベイトリールのスプール。
スプールの中心に一本のシャフトがあり、その両脇をベアリングが支えています。
このベアリングの中心に、シャフトが直角に入っているはずです。
 
バラした状態で見れば、たぶんちゃんと入っているはずです。
では、それをリールボディーに組み込まれた時に、果たして左右のベアリングとシャフトは同じように力が加わって真っすぐに組まれているだろうか・・・という話しです、
 
じつはこれは、シャフトやベアリングによってどうこうなるのではなく、そのベアリングが固定されるボディー側の製品精度によって大きく異なるのです。
当たり前ですが、まっすぐ組まれている方が、回転部はよりスムーズに回ります。
しかし稀に、組み込まれた瞬間に全然回らなくなるリールもあります。
 
その多くが、樹脂ボディーのリールです。
※「樹脂ボディーのリールは回らなくなる」ではなく、「回らなくなるものは樹脂ボディーが多い」です。
 
ではこの回らなくなるボディー、どうしてくれようか・・・捨てちまうか!と思う前に一度、左右のネジを一回緩めてニギニギし、もう一度スプールを回しながら組んでみると・・・あら不思議!
ある締め込み位置から急に回らなくなるんですね。
 
次にスピニングリール。
ハンドルグルグル回しているだけでは判りにくいのですが、ルアー着けて巻いていると妙に巻きが重たいリールが稀にあるんです。
あぁ金属ローターだから云々ではなく、同じ製品でも明らかに「おや?」と感じることが在るのです。
で、これはバイクのホイールチェックの時にもやるのですが、この手の回転系の重さをチェックする時は、高速回転で回しても判りません。
じつは出来るだけ、超スローにゆっくりと回すと分かるのです。
 
チェックは、「軽い力で回るかどうか」です。
それを同じ機種で片っ端から試すのです。
(販売店はとても嫌がるでしょうが)
 
あら?
なんか、たまに「妙に重い」とか「なんか引っかかる位置がある」とか「う!まわんねぇ」という場合が在るのです。
 
そう言うのは、工業製品には必ずついて回って来る「ハズレ」という現象です。
 
ではこのハズレとは何なのか。
それは、「直角・水平・平行」の精度(誤差)なのです。
 
先ほどのベアリングがまっすぐ・・・と同じく、各ギアの組み合わせによって「ハンドルが回るとスプールやローターが回る仕組み」になっているリールは、それぞれのギアがまずは適正な角度で組み合わさる事が大前提です。
これは直角であったり、水平であったり、並行であったりするわけで、そもそもその各部品が固定されているのはボディーと言われる部品と、その関係するシャフト類やベアリング類です。
あ、安いリールはそのベアリングがカラーで対応していますね。
まぁ理屈は同じですが、カラーは消耗しますので、精度ははなから求められていません。
 
ではそのボディーですが、いったい何の素材でどのように作られているでしょうか。。。

樹脂は軽いけど、精度は出ないよねぇ・・・
 
それともう一つ。
果たしてそのボディーの大事な部分の図面公差(設計が作ろうとしている物)と工程能力(実際の物の出来栄え)はどれほどのものなのでしょうか・・・という話しがあります。
0.2mmの公差で許されるものも在れば、0.05mmという厳しい公差もありますが、一般的に樹脂と金属では、金属の方が公差は厳しくなります。
というか、「金属は厳しい公差でも対応できる素材」であり、「樹脂はそこまで精度を出すことが難しいので、公差はゆるい」のです。
なお、部品は精密になるほど公差は厳しくなります。
仮に100mの樹脂の棒の公差で±0.05mmとか書かれたら、誰もそんな仕事を受けてくれません。
 
何が言いたいかと言うと、多かれ少なかれ工業製品には寸法のズレが在り、設計はその最大ズレ幅でも「この程度なら許容できる」という思想(公差)をもって図面を書いているのですが、極まれにそのズレが最大に、しかも逆方向にズレたもの同士が組み合わさった場合に、「篏合がきつい」とか「左右の中心位置のズレが大きくなる」という事が起きるのです。
 
そんな馬鹿な!と思うかもしれませんが、これは金属でも樹脂でも関係なく起きます。
部品点数が増えれば増えるほど起きる可能性があり、バイクのレース用エンジンでも当たり前のように認識されています。
なお、今はどうだか知りませんが、私が現役のころには某メーカーのピストンとシリンダーには「同じ品番にABCというランク」がありました。
これは直径の大きさを示していて、製品公差内で問題ないのですが「若干大きいですよ」とか「やや小さめですよ」という層別がされていました。
使い古しで径が大きくなったシリンダーには、若干大きめのAピストンを組むとか、いや逆に小さいピストンを組んでピストンリングを新品にした方が高回転が良いとか。。。まぁ色々とありました。
 
知らない人は、何も気にせずに組んでいるのでしょうが、やはり競技では「適当で勝てるほど甘くない」と言う世界観がありますので、とうぜんですがAとBの中間欲しいなぁ・・・と言う理由で同じピストンを10個買って測定してみたり、(逆に妙に調子いいピストンを直ぐに外して寸法と重量を測ったり)色々とデータを取っていく事をしていました。
 
世界一速いバイク作っていた某メーカーですらそうですから、はたして釣り具メーカーがどこまで製品精度を追求しているかは判りませんが、確実にハズレは有ります。
 
ですが安心してください。
もしハズレでも、そこからフリクションロスをなくす方法は有るのです。
それは、一回全部バラバラにして、各部品を回しながら組みなおしてみるのです。
 
えぇ~部品変えなくても治るわけないじゃん!と思うかもしれませんが、意外と治る事が多いです。
また、ボディーASSYの外側のネジを全部緩めて、クルクル回しながら「どのネジから絞めていくと、動きが渋くならないか」という事を確認するのも有効です。
 
これは、製品のクリアランスの問題です。
通常ギアやカラーにはクリアランスと言って部品と部品の間に隙間があり、それは逆に言うと製品公差によるズレをそこで許容してくれるようになっています。
ですから、出荷時に組まれた時にそのクリアランスを使えないで一か所で極端に狭くなっている摺動部が在ったりした場合に、ほかの部品間にあるクリアランスへ逃がすことが出来る場合があるのです。
 
そしてこれが超大事なのですが、回転系のフリクションロス低減には「まずはセンター出しが基本」なのです。
ボディーのネジは一本ではなく複数のネジで左右の部品を止める事で、捻じれたりひねったりした付き方がしないようになっているのですが、その中心部のハンドルを回すことで、最も回転時に抵抗がない組み込まれ方をすることが可能になります。
 
バイクのエンジンで言うと、クランクケースの組み込みですね。
そしてクランクサイドベアリングの交換やクランクの芯出しが、スプールのそれにあたります。
 
なお、製品によって「そんなこと出来るかな?」というものもあります。
例えばボディーのネジがハンドルが付いていると回せない物とか。
 
それでも考え方は同じです。
どうやって、センター出しをするか、あれこれ考えるのも楽しいものです。
むかしよく、横置きエンジンを縦にしてシリンダー組んだりしていたなぁ・・・
 
で、この話はまだ続きがありますが、長くなったので次回に。
 
 

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