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Myべすと-5◇ゲーム EP DAY23

本日のシチュエーション説明はこちら
http://www.fimosw.com/u/kickoff055/3BpervfO6hva8J



湧水の如くシャローが波立つ

30cmの距離にいる人よりも群れの陣形を作っているのに
構わず突っ込んでくる無神経な侵入者である野鯉にざわめいているのだ。

けれどもあくまでその陣形は維持したままだ。

まだこの弱い者が作る艦隊は余裕があると私は感じた。


そして私はGIANTDOD-Xオチアユカラーを手に取り
その黒く鈍く光るボディ壁面を見た。

視線をそのまま水へ落とし足元からブレイクライン、対岸へと移す。

「上がって来い」


呟きながらセットポジションを取ると
その流れのままアンダーキャストでルアーを軽く送り込んだ。

カーブのインサイドベント側にある頂点から下へ
シャローを打って進んで行く上流からの基本で探って行こうと考えていた。

対岸までは精々7,8mと言った所か
最深部で潮位にもよるだろうが1.2m前後か。

何の反応も無い時などはこんな狭い水域に一匹も居ないのではないかと
一体何度、心が折れたことだろう。


鋭い音が響く
殺意が水を動かす音だ

私は頭を視線を上げて注意をこらして音が聞こえた方向を見る。


そうか

流れが弱いとお前等も苦労が必要か

下流対岸アウトサイドの壁際に生命が消える断末魔の白い飛沫が飛ぶ


「ははぁ、流れが弱いから壁際に追い込んで食ってるな」


だが残念ながらそこには木の枝が覆いかぶさっている

その場所へルアーを送り込むには
バックハンドでスキッピングさせる高等技術が必要だろう


「代打 並木敏成」


当然だが我が軍のベンチには誰も座っていなかった。


「助っ人外国人JIMこと村田基は移籍金が高そうだな」


私に出来る事はそんなクダラナイ冗談と
ただそいつらが上がってくるのを待つだけだった。

私はあまりにも多い蚊の量にウンザリしながらも再び上から
そのシャローに入りなおした。


あーだ、こうだと考えても仕方ないじゃないか
出来る事をやるだけやってダメならそれで今日が終わるだけだ。

ゴチャつく思考は集中を乱す

私は開き直ってそれを吹き飛ばした。


そうやって私は打ち、進み
シャローの終点に差し掛かりルアーをアプローチした直後にだった。


樹木の葉が一気に抜け落ちたかの様に目の前にある
固形にすら感じるなだらかな水面に小さな波紋がスプレッド(拡散)した


「パニックだ」

艦隊は完全に指揮系統を失った、エマージェンシーコール。


間違いない

上がって来た

「どっちだ? ルアーかそれとも小魚かどっちを追っている?」

水面が異様に近く感じる。
私は今どんな表情をしているのか。


フットボールスタディアムは呼吸をする。

観客は一体となりGAMEを共有するからだ。


訪れる得点決定機(ゴールチャンス)


全ての音が消える

これから喜ぶ者、悲しむ者、怒る者、泣く者、誰もが息を呑むからだ。



静寂が破られる

今、私は喜ぶ者になったと手に伝わる衝撃が教える。


水面に姿を見せるそいつに問いかける


お前は何だ?と私は考える。
悲しむのか怒るのか怯えるのか

そいつのおかれた状況を自分に置き換えると少し怖くなる


だがお前とて殺戮をこなしてきた身だろう?

この場では相互理解、お互い納得尽くしたルール


エネルギーに満ち溢れた魚のなんと猛々しい事だろう。
やはり私はこの全てが目の前で起きる殴り合いの様なGAMEが好きだ。



その必死な抵抗を見てふと考える・・・

殺意無きハンターは命を弄んでいるのだろうか。


いや、これはギブアンドテイクだと私は考える。

ただ無情なる戦場に互いに納得の特殊ルールが生まれるのだ。
強者は精神を満たし、弱者は命を永らえる可能性を手にする。

私の精神は既に満たされた。
後は責任として延命の可能性を与え相互の契約を満了するだけだ。


「これならエラ荒いで外れる事はないだろう」


いわゆるハーモニカと呼ばれる状態で
フロントフックとリアフックが両口角にそれぞれ入っていた。





私は魚を水に戻しキチンと自立し泳いでいくまで蘇生をした。


「冷たくて気持ちいい水だな」


明るい時間に見てきた水温上昇で酷い状態になった海の水を思いながら
命の光を取り戻したGAMEの対戦相手に語りかける。


そして力強く私の手を離れた頃


カラス達が叫び、まもなく夜明けが訪れると私に知らせた。

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