会社設立後、弊社ファシリティーズ・スタッフを募集した。
面談後、リクエストを受けて当時の試乗艇、「シュガーサンド・タンゴ」に試乗させていた時であった。
「あのう、時速３２キロ弱の一定速で滑走させてみてほしいんですが・・・。」と突然依頼を受けた。
タンゴのメーターはマイル表示であったので、２０マイル弱で何とか一定の速度を保って滑走させた。
そして、「どうよ、トップも凄いけとスローも安定して走れるでしょう！」と自慢げに云うと、何と返事が、「思ったより、波の厚みが小さく崩れていますね…。」とぽつりと云った。
私は、何のことかさっぱり分からなかったが、「当然、このボートは水上スキー用だから仕方ないと思うよ…。」と返答した。「これじゃ、ウェイクにはあまり向いてないですね…。」

ボートを停止させ、あらためて訊ねた。「なに、そのウェイクって…?! 」
「ウェイクボードですよ、ほらスノボーの水上版と思ってください…。」
水上スキーが出来るパワーがあるのだから、当然なんでも引っ張りモノには対応できるはずと思っていたので、「全然、大丈夫だよ。問題無くそれも引っ張れるさ…。」と云いながら、港に戻って行った。

そして上陸後、「どうだった、うちのスタッフでやってみない？」と切り出した。すると、以外な答えが返って来た。「実は大分じゃないんすが、他にも誘いが来てまして、今度はそちらのお店に行ってみます。」
内心、ショックで「ガガ～ん!! 」と打ちのめされた様な思いであった。

他のビーチでは、水上バイクでやってる事をこちらはこのタンゴで引っ張りモノをさせるファシリティーズに、何の不足があると云うのか…。しかし、顔では笑いながら面談に来た彼に対し、「どのボートもそんなに変わりは無いと思うよ…。」と云うと「社長、今度長崎の大村湾でJWBAの全日本があるので、見に来られませんか…？」と返されたので、そこまで自信げに云うのならと「よし、分かった行って見よう！」素直に約束した。

それから、早速輸入元に連絡して、「ウェイクボードって知ってますか？」の問いに、「余り詳しくないのですが、今度出来た日本ウェイクボード協会（JWBA)の副理事を紹介しますので、九州の何処だったかなぁ～全日本大会の会場に行って見られては如何ですか…？」との遣り取りで、知らずは己のみだった事に恥かしさで一杯となった。

以上の経緯で翌月、一人長崎へ向かう事となった。