カサゴ放流技術開発調査研究報告

ちょっと調べ物をしていて、こんな論文を発見しました。


カサゴ放流技術開発調査研究報告
(別ページで開かないのでご注意を)


うっかりしてたら一気に読んでしまったうえに、要約的なログまで書いてしまいました。

あぁ、うっかり(笑)

需要は、、凄腕がロックフィッシュ月間なので、無くはないと思ってます。

この調査報告書は、漁業資源生態調査、放流技術開発調査、総合考察の3部構成です。内容はカサゴの生態、生息環境の調査、漁業資源としての利用状況の詳細と、カサゴの種苗生産と放流技術の研究、そしてその総括があります。

忙しい人は総合考察だけで大体の内容を把握できると思います。個別の内容で面白かったのはⅠ-B生物調査の、P21からのbの食性以降ですね。アングラーなら気になる内容が超出てます(笑)


これは他の論文でも資料として挙げられているのを見かけたので、栽培漁業業界では重要な論文なのかも知れません。

発表は1975年なので結構古いものですが、基本的なことを押さえてあるので、今でもかなり有用でしょう。


で、コレをアングラーの視点から読んでみたワケですが、やはり経験的に導かれるものは、結構当たっているようです。それと、新しい発見もいくつかありました。


簡単にまとめてみると、、

・雌雄で成長速度に差があり、環境差も大きい
・思っていたより成長速度が速い(それでも十分遅いが・・・)
・早いと満1才で成体になる(再生産が超早い)
・意外と移動する(最大1km~1.5kmの範囲)
・カニよりも小魚の方が好きっぽい
・意外と貝類も捕食する
・夜は結構動き回ってベイトを探す
・デケイお魚から先に釣れる
・45m以上の深さになると、小型はほとんど居ない
・鰭はカサゴでも重要
・鰭は勿論、鰓蓋の骨も結構な速度で再生する



と云った感じで。

では、も少し各項を詳しく。


・雌雄で成長速度に差があり、環境差も大きい

 コレは以外な結果が表(P43 表45 年令と計算体長)に出てました。雌の方が成長速度が遅い傾向があります。雄の方が成長が早く、早い海域だと3~4才で20cmを越えるところも。環境差については同じ5才魚でも、海域によっては10cm近い差があったりもします。また別の資料で見つけたグラフでは25cmを越える(多くは10年近く生きている)固体は雌が多かったので、雌のほうが長生きなのかも知れません。


・思っていたより成長速度が速い(それでも十分遅いが・・・)

 上下の項目にも関連することですが、冬季の最低水温が高かったり育つ環境の餌が豊富であれば、1年で全長11~15cm、5年で25cm程度に成長するようです。尺クラスともなると15年とか掛かっていそうな気はしていましたが、1年で10cmは意外な早さでした。


・早いと満1才で成体になる(再生産が超早い)

 コレが本当に意外でした。抱卵するのは勝手に2~3才くらいからだと思っていたので、13cmくらいの腹パンを見ると、それくらい生きているものだと勝手に思っていました。そこから逆算される成長速度を考えると、1年で全長10cm程度は、かなり早く感じますよね。アレだけ餌釣り師が小さいカサゴをキープし続けても根絶やしまでにならない理由は、コレのようです。だからといって小さい魚をキープして大丈夫とはなりませんが。この論文内に、若い魚を多く漁獲すると全体数が明らかに減ると云うデータも示されています。


・意外と移動する(最大1km~1.5kmの範囲)

 単純に、もっと狭い範囲で一生を過ごすと思っていました。コレは標識魚を放流し、結構気合入れて追跡調査した結果なので、ワタシは信憑性が高いと思っています。再生産の早さと合わせて、岸壁から完全には姿を消さない理由の一つでしょう。


・カニよりも小魚の方が好きっぽい

 コレは結構気になるデータでした。まぁ、水槽にカニとカタクチイワシを入れて、どちらが捕食されるかと云う実験結果は微妙な気がしますが、腸内容物の色(白・黄色は魚類と判別)から、カサゴのベイトとして非常に大きなウェイトを占めていると云う結果が出ていました。コレを見て、ホッグ系のボトムバンプばかりではなく、シャッドテールやカーリーテールを使ったスイミング系の釣りも増やそうと思いました(笑)


・意外と貝類も捕食する

 過去に釣ったカサゴ・ソイの胃から貝が出てきた例が無いので、コレには驚きました。巻貝、ヒザラガイ、アワビの稚貝なんかが出てくるそうです。ヒザラガイなんかは、何かで剥がれてヒラヒラフォールしてたら、たちまち喰われそうですね。


・夜は結構動き回って索餌する
 
 デイよりもナイトゲームの方がテキトーに釣っていても釣れるので、そうだとは思っていました。磯から離れた建網にも掛かるらしいので、ワタシのイメージより遥かに動き回って、ベイトを探すようです。昼は岩陰に居たのが、夜になると岩の上に出てくるくらいの差かと思っていましたが、もっと広範囲に移動して餌を探すようなので、結構意外。


・デケイお魚から先に釣れる

 体感的にそんな気はしていましたが、参考文献にある他の研究と同様、今回の調査でも同じ結果が出ていました。やはり、この手のお魚さんは、大きくなる=餌を優先的に得られる=先に釣れる、と云うコトのようです。サイズダウンしたら、すぐに移動すべし。


・45m以上の深さになると、小型はほとんど居ない

 所謂フツーのカサゴでもかなり深いエリアに生息しているの知っていました。まぁ、あんまり深いと小型は少ないような気はしていましたが、実際に漁獲量のデータを見ると、やはりそうかと云った感じで。凄腕を狙う場合、50mくらいの根でジギングか超ヘビーダウンショットで狙うと、50cmとかオバケみたいなのが釣れそうな予感。ちなみにワタシの地元には、超大型カサゴ専門の船宿があったりします。メバルさん釣れないから、この機会に乗ってみようかな・・・


・鰭はカサゴでも重要

 コレは放流魚の標識方法の考察の中で、各種鰭を切除する方法とその影響、標識の効果が検討されていました。この切除した箇所がカサゴに与える影響と、その有効期間(再生するまでの期間)のデータが興味深かったです。実験では、各鰭を切除しているんですが、両胸鰭を切除された固体はへい死率が高く、背鰭は影響が少ないと云った結果が。あんまり動かなさそうなイメージのカサゴですが、鰭って重要なんですね。まぁ、実は結構動き回るようなので、当然といえばそうなんですが。


・鰭は勿論、鰓蓋の骨も結構な速度で再生する

 コレは驚きました。鰭は何だか早そうな気がしていましたが、鰭とほとんど変わらない速度で再生し、その痕も見分けが付かないレベルだそうです。標識方法の一つとして鰓蓋のカドを切除する方法について考察がされていて、結果、再生が早く、再生後も見分けが付きにくいので、標識方法としては使えないと云う結論でした。カサゴの再生能力すげい!



と、まぁ、こんな感じでしょうか。

何か興味深い内容はありましたか?

ワタシは一気に読んでしまうくらいなので、かなり収穫がありました。

こう云う学術的なモノって、そのスジの専門家にしか必要無いものと思われるかも知れませんが、目的を持って読んでみると、意外と役に立つ内容があったりして、かなり面白いです。

アングラーであれば経験的に理解できるコトって非常に多いと思いますが、こうして学術的に調査、研究された結果を知ることで、その裏付けが出来たり、逆に感じていたコトが間違えていると知るコトもあるかと思います。やはり、正しいコトを知ると云うのは重要であると、ワタシは考えています。

カサゴ関連の調査資料や論文は結構あるようなので、興味のある方は検索してみると、色々と役に立ちそうなモノが出てきそうな気がしてますね。

本当はメバルについての資料を漁っていたんですが、豪快に脱線しました(汗)


今後も機会があれば、またこんな感じのログを書いてみようと思います。

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