人妻 久仁子と蛍 3

  • ジャンル:恋愛・結婚
 
二人はアスファルト舗装された道から、ホタル・スポットを目指し、小川と田んぼに挟まれたあぜ道へと足を進めて行きます。
 
 
【ポイント】
何事も状況や場面を想定しての事前準備と気配りが肝心です。 
紙袋の中身は、懐中電灯が2本、ハンドタオル、小さめのレジャーシート、虫除けスプレー、うちわが2本

 
 
 
順平は、「はいコレ 久仁子さん用です。 田んぼのあぜ道を歩くので足元を照らして下さい」と言いながら、予め用意していた懐中電灯を久仁子に渡した。
 
久仁子「凄いね 私の分まで予め用意してくれていたの? 感心するわ」
 
順平「ちなみに虫よけスプレーも持ってきたけど 使いますか?」と紙袋から取り出して見せた。
 
久仁子「へぇ~ そんな物まで事前用意を・・・ 私の周りにそんな気配りできる男性なんていなぁ」
 
順平「そうかな  俺はごく普通にしているつもりだけど・・・」
 
 
 
 
順平と久仁子は街灯も民家の灯りもない、真っ暗な道を懐中電灯の明かりを頼りに、緩やかな上り坂を歩き続ける。
 


久仁子はスポーツ選手であると共に、身長が高い分、足も長い・・・久仁子の1歩の歩幅は順平よりも10cm以上はリードしており、すたっ!すたっ!と歩く久仁子に対して順平はせこせこと早歩きで歩かなければ付いていけなかった。
 
順平の息が切れそうになった頃、田んぼの奥の暗闇から人の声が聞こえ、ライトの灯りが見え隠れし始めた。
 
弾む息を整えながら「もうすぐですよ」順平が告げる。
 
 
先ほど車で通り過ぎた小さな橋に辿り着くと、「ここから川沿いに あぜ道を歩きますから足を滑らさないようにね」と久仁子の足元を照らしならが、雨上がりのあぜ道を歩き始めた。
 
 
徐々に先行者の声が近付いてくる。
 
暗闇に目を凝らしてみると、10人ほどがホタル狩りを楽しんでいる
 
順平の後を着かず離れず歩く久仁子が「けっこう 人がいるんだね」と安堵感をにじませる。 これに反して順平は、「チッ! 予想外に邪魔者が多いな」と胸の中で舌打ちをした。
 
順平は振り向きながら「そうだね ココは有名な場所だからねぇ 名古屋ナンバーの車も止まって・・・ウオッ! ズボッ!」
 
久仁子の方を振り向いた瞬間、順平は足元を滑らせ、片足を田んぼに滑り落とした。
 
転びはしなかったものの、足元を懐中電灯で照らすと、革靴が泥だらけ くるぶしまで泥だらけ
 
 
久仁子は「くすっ!」と失笑
 
順平「久仁子さんも気をつけて下さいよ 余所見するとコウなりますからね」と苦笑い
 
久仁子「はい! 十分に気をつけま~す」
 
ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ・・と順平が歩くたびに、靴に入り込んだ泥水が音を立てる
 
否応なしに聞こえる異音に久仁子は「大丈夫ですか?」と心配そうに声を掛ける
 
順平は「大丈夫じゃないです。 また振り向いちゃいますから 声を掛けないでくださいよぉ」
 
 
 
狭いあぜ道で帰る人達とすれ違いながら、なんとか目的地に到着
 
 
しかし、肝心なホタルが見当たらない
 
 
焦る順平・・・燈していた懐中電灯を消し、暗闇に目を慣らすため、目を閉じる1・2・3・4・5・・・・・10
 
 
ゆっくりと閉じていた目を開け、目を凝らしながら辺りを見渡す。
 
 
突然、順平の背後から「あっ! いたいた あれでしょ 光ってる 光ってる」と童心に返ったかのような久仁子の弾んだ声がする。
 
久仁子の方を振り返ると、暗闇にかすかに浮かぶ久仁子の輪郭
 
「ほら すぐぞこ すぐそこ」と久仁子が指差す方に目をやると、淡い光が点滅している
 
順平「あっ 見えた 見えた いたいた」



 
 
 
 
二人は、淡く光る神秘的なホタルの煌きに吸い寄せられるように見つめていた。
 
 
 
やがて目が暗闇に慣れ、要領を掴んでくると、至る所で眩く光るホタルを見つけては「あっちにもいる あ、こっちにも」とホタルの光跡を追った。
 
 
足元の悪いあぜ道で立ち止まって見ていたが、ホタル狩りを終え帰ってくる人の妨げとなっていたので、二人は奥先へと小川沿いに足を進めた。
 
 
奥先に着くと、そこは小さな堰堤になっており、田んぼへの取水口部分だけがコンクリートで整備されている。
 
 
さすがに奥先には、家族連れは来ないようで、暗闇の中から2、3組のカップルらしき声が聞こえる。
 
 
 
そのカップルの声だけで距離間をはかり、お互いに邪魔にならない距離を置いて、順平は紙袋からレジャーシートを取り出しコンクリート護岸に敷き詰めると、うちわを手渡し「どうぞ」と久仁子に座るよう促した。
 
 
1.5m四方のレジャーシートに二人は座り、足を小川に投げ出しホタル観賞
 
【ポイント】
レジャーシートは小さ過ぎると距離を意識され、遠慮されてしまう。 かと言って広すぎるとても座った時、親密度が低下してしまう。
 intimate distance と personal spaceのバランスが大切です。

 

 
小川のせせらぎと、草むらの中で奏でる虫達の音色がBGM 時折り混じる、蛙の「ケケケケケーッ」「クワッ クワッ クワッ」のコーラスを愉しむ二人
 
 
二人は、うちわを扇ぎながら、思い思いにホタルの光跡を追い続ける。
 
 
順平は、闇夜を彷徨、ホタルを追いながらも、妙に膠着してしまったこの状況から どの様に事を運び込もうかと次の一手の策を練りながら、そのきっかけを待っていた。
 
 
暫くすると、ポツ ポツ ポツと多くて5匹くらい光っていたホタルだったが、徐々にその数が増えてきて、10・・・15・・・25・・・40・・・50・・・70・・・いや100、200はいるだろう
 
 
暗闇の中で潜んでいたのであろう、突如、ホタル達が共鳴し合うかの様に煌き始め、辺り一面で光の競演が始った。



 

 
 
思わず順平と久仁子は声を合わせ「うわぁ~ 凄い!」と表現するのが精一杯
 
 
暫し無数の光の競演に見とれていると、1粒の光跡が久仁子に膝元で止まった。 止まった後もなお、淡い光を放ち続ける。
 
久仁子は、淡い光に手を伸ばそうとしている指先が、放つ光に照らし出された。
 
 
久仁子は、そっとホタルを手で掬い上げる。 少し光止んでいたホタルであったが、暫くすると再び掌の中で光を放ち始めた。
 
すると久仁子は「ねぇ あなた 見てみて」と興奮した様子で順平の方へ手を差し向けた。 
 
 
順平は「あなた」と言う言葉が気になったが、気付かない振りをして「綺麗だね」と久仁子の気持ちに合槌を打った。
 

【ポイント】
相手の呼び名は絶対に間違えてはいけません。

当たり前ですが、特に気をつけたいのが、家庭内での呼び間違い!
家で女のことを思っていると、「久仁子」なんて呼んだ時には爆死します。
寝言は防ぎようがないので、寝室を別々にすることをお勧めします。



 
久仁子は、暫く掌の中で光るホタルを見つめた後「えぃっ!」と空に向かってホタルを放つと、再び乱舞するホタルを見入っていた。
 
 
無邪気に足をバタつかせながら見ていた久仁子の足が止まると、久仁子は「順平さん 今日はありがとうね」とぼそっと呟いた。
 

順平「うん こちらこそ ありがとう」と暗闇の向こうの久仁子に言葉を送った。

順平は、いいぞ! いい感じだぞ! この雰囲気・・・これぞ俺が仕掛けたシチュエーションの罠!


このまま闇夜に任せて手を握って・・・くそっ 表情が見えん)と企み始めていると・・・・・・




諸君!まだまだ 先は長いですぞ(爆)

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