人妻 久仁子と蛍 4

  • ジャンル:恋愛・結婚


いいムードだぞ・・・今がチャンスだなぁ! この暗闇に紛れて・・・


うん? 何か久仁子の様子が変だ?



えっ! 泣いているのか?

 
 
ウゥッ・・・ススッ・・・と久仁子が鼻をすすり 泣いている。 



久仁子が泣いている・・・
 
 
 
【ポイント】
出会う人妻さんは、それぞれ人生、色んなものを背負って生きています。 一見 飄々として何もなさそうに見えても、内面に秘めたものを抱えていて、ちょっとのことで感傷的になる方もいます。 そんな時は黙って見守ることが一番。
間違っても「どうしたの?」なんて無粋な言葉は掛けてはいけません。
 
 
 
順平は、何かを想い返しすすり泣く久仁子をただただ黙って見守った。
 
 
かれこれ15分くらい経っただろうか・・・

順平が企んだシチュエーションの罠が、ロマンチックどころか逆効果のセンチメンタルにさせてしまったようで、タイミングを逸した途端、気持ちが萎えてしまった。
 
 
ようやく久仁子の気持ちが落ち着いたようで「ぐすっ・・・ごめんね」と呟く
 
 
順平「いいんだよ 少しでもこのホタルの煌きで久仁子さんの心が洗われてくれたなら」と久仁子の想いに少しだけ触れるような言葉を掛ける。
 
 
久仁子「ごめんね」と言いながらも、また想い返したのか「ううううっ・・・」と泣きはじめた。
 
 
順平としては今の時間が気になるところだが、ここは黙って久仁子に付き合うことにした。
 
 
さらに15分くらい経ったであろうか・・・止んでいた雨がポツポツと降り始めた。
 
 
雨が降り始めると同時に、見事な乱舞を見せていたホタルたちは一斉に静まり、ホタルの宴は幕を降ろした。
 

近くにいたカップル達が足早に退散する足音が遠ざかっていく。
 
 

雨は次第に雨脚を強め、パチパチと木々の葉を叩く
 
 
どうしたのか久仁子は、雨脚が強まっても動こうとする気配がない。 
 
恐らく時刻は22時を過ぎているだろう・・・旦那から不審がられたりしないのだろうか? こんなにずぶ濡れになって帰ってヤバクないのだろうか・・・順平は久仁子の理解し難い行動に不安を募らせた。
 
 
一抹の不安を抱えつつも順平は、余程の事があったのだろうと久仁子の胸中を案じていた。
 
 
順平は、懐中電灯を灯し手に持っていた傘を開くと、そっと久仁子の頭上にかざした。
 
 
レジャーシートの上に雨水が溜まり、やがてスラックスの生地を染み通り、パンツにまで染込んでくる。
 
 
傘をかざす順平の左腕が疲れ、右腕に持ち帰る。
 
 
それに気付いた久仁子は「ごめんね 誰もいなくなっちゃったね 帰ろうか」と重たい口を開けた。
 
 
「俺は大丈夫だから この際、思いっきり洗い流しなよ」と言うや否や、三度「ううううっ」と嗚咽を堪えながら泣きはじめた。
 
 
こうなったら順平はもう開き直るしかない!


紙袋からハンドタオルを取り出した順平は「はい これ」と久仁子に差し出すと、「ごめんね 泣いていいですか」と言いながら 順平の左肩にもたれ掛かりながら、うわぁーんと声を出して泣きはじめた。
 

久仁子の身体が、順平のパーソナルスペースに飛び込んできた。
不意を突かれた順平は、久仁子の肩をトントンと叩き慰めるのが精一杯であった。
 
 
久仁子から身を寄せてきて千載一遇のチャンスだが、すすり泣く女性の弱味に付け込むほど順平は落ちぶれちゃいない。 


ふぅ~と心の中で溜め息をつき「今日は、いいお友達でいよう」と路線変更を決めた。
 


【ポイント】
傷心した人妻さんにアプローチは禁物です。
人妻さんとの温度差を作ってはいけません。
時には、素を押し殺しキャラを変えて、「いい人」を演出してみてください。
以外と新たな展開が開けてきます。

 


ひとしきり泣いた久仁子は突然、川向こうの暗闇に向かって「トシヤの馬鹿や郎―っ」と大声で叫んだ
 
 
突然、耳元で叫ばれた順平はキィーンと耳鳴り
 
 
久仁子は、叫び終えると、吹っ切れたのかスクッと立ち上がり「ごめんね もう大丈夫だから」踏ん切りついたかのような声で順平を見下ろしながら「あはは・・・ビタビタになっちゃったね」
 
 
順平「少しね おかげでドロドロだった靴も綺麗になったよ」と笑い飛ばしてみせた。
 
 
順平が立ち上がると、久仁子は敷いていたレジャーシートをバサバサと雨水を振り落としながら畳むと紙袋に押込んだ。
 
 
時間が気になっていた順平は、ポケットから携帯を取り出し、チラッと時計に目配せする。 
 
 
【23:11】
 
 
しっかり雨に打たれた二人はびしょ濡れになりながら、一人が歩ける幅だけの細いあぜ道を戻り歩き始めた。
 
 
懐中電灯で足元を照らしながら、滑り落ちないようにゆっくりと足を進めていると、一段と雨脚が強くなってきた。


順平に続き傘を差しながら歩いていた久仁子が、「順平さん濡れちゃうよ」と傘を差し出そうと順平に詰め寄った瞬間、久仁子は「キャッ」という悲鳴とともに片足が田んぼに滑り落ちた。
 

「順平さん、ぬ、抜けない・・・う~ん 抜けない!」
 
順平が懐中電灯で久仁子の左足を照らすと、ズッポリ田んぼにはまり込んでおり、それを見た順平「あはははは 見事にはまったね ほら」と笑いながら右手を差し出し、久仁子の手を引っ張り上げた。
 
 
久仁子「ゴメン懐中電灯がドロドロになっちゃったぁ」
 
順平「あ~ぁ いいよ別に サンダルは履いている?」
 
久仁子「うん 大丈夫」
 
道路まで残り100mくらいのところで、久仁子が持っていた懐中電灯がショートしたようで点灯しなくなった。
 
順平の持つ懐中電灯の灯りだけを頼りに歩き進む。 
足元が見難い久仁子は順平から遅れ、離れまいと、ワイシャツの背中を掴み着いてきた。
 
 
【ポイント】
アクシデントこそチャンス到来  

友達 ⇒ 恋人路線へ変更!何事も状況に応じて柔軟に、臨機応変に対応することが大切です(笑)

 
 
細いあぜ道に草が生茂っているので「ほら ココ気をつけて」と久仁子の足元を照らすと、順平はワイシャツから離れた右手をごく自然の流れで掴むと「あともう少しだから」と久仁子の手を引きながら歩き続けた。 
 
 
握った手は離すまい・・・そんな想いでいっぱいだった。
 
 
否応にも久仁子と繋ぐ指先を意識してしまう。 意識しないようにしていても、意識してしまう。
 
 
雨で濡れた手と手が少しずつ滑りだす・・・
 
 
うっ・・・離れてしまう・・・
 
 
ギュッ!
 
 
すると、久仁子の方から手を握りなおしてきた。
 
 
!ドキッ!
 
 
順平は昂る感情を悟られないよう「こんな雨の中、歩かせてしまってゴメンね」と話し掛けるが、久仁子からの返答はなかった。
 
 
久仁子も意識しているのだろう・・・久仁子の無言が余計に緊張感を増幅させる。
 
 
残りの道程を二人は無言のまま歩き続け、ようやくアスファルト道路に辿り着いた。
 
 
道路に上がった二人は、電柱の街灯の下に行き、靴底に付いた泥を地面に叩きながら、見事なまでにずぶ濡れになった互いの姿を見て笑った。
 
 
全身ずぶ濡れとなった久仁子 髪は乱れ、赤いポロシャツもよれよれ、泥のついたサンダル・・・


けして見栄えのいい姿ではないが、その姿はグラビア写真集のワンカットのような美しさを感じ、ドキッ!とした。
 

順平はその美しいボディに触れたい衝動で「草が着いているよ」と久仁子の背中をパタパタと手のひらではたいてみせた。 もちろん草なんて着いていない・・・



【ポイント】
親切を装ったボディタッチで相手の反応を確かめろ!


背中に着いたゴミや虫を払い落とす振りをしてみましょう。
相手が背中を差し出せば、貴殿に対して好意的な証拠。
相手が自分でゴミを振り落とそうとすれば、まだまだ相手との距離感はありそうです。



 
順平が傘を差し、久仁子の頭上にかざすと、腕を伸ばさなければならず、順平は思わず「こうして並ぶと久仁子さん 背が高いね 何cmあるの?」とタブーな質問だとわかりながらも聞かずにはおれなかった。
 
久仁子「あっ ついに聞いたな  178cmだよ!」とやや不貞腐れたように言い放つ
 
順平「ごめん 聞いちゃいけない質問だとわかりながらも 我慢できなかった」
 
久仁子「あはは・・我慢していたんだ」
 
順平「かなりね」
 
久仁子「いいよ 気にしなくても 初対面の人は必ず聞いてくる質問だから慣れっこだよ バレーボールの世界じゃ珍しくないんだけど やっぱり一般的には特異だかね」
 
順平「ご両親も背は高いの?」
 
久仁子「母は普通だけど、父は190 父の遺伝子が強かったみたい ちなみに弟がいるんだけど弟は170 良く『逆だったら良かったのに』って思うわ」
 
順平「でも その身長があるからこそバレーボールも楽しめるんじゃない?」
 
久仁子「そうだけどさ 背が高いと目立つから小学生の頃は、男子から『デカ女』って良く虐められたわ 普通が1番だよ」
 
順平「そうなんだ」
 
久仁子「中3の時170あって高校進学時もバスケットボールや陸上とか、とにかく体育会系のオファーが何校も来てね、でも父の影響でバレーボールの道へ進んだの」
 
順平「そんな経緯でバレー界に進んだんだ」
 
久仁子「バレーボールチームの中にいると背の高さは全く感じないけれど、同級生の友達と遊ぶと頭1つ分抜け出ているからコンプレックスを感じたなぁ 高校生になるとお洒落もしたいじゃない? でもどの服も靴のサイズもないし いつも着ている服はメンズのLサイズのジャージかTシャツ 今日着ている服も全部メンズなんだよ」
 
順平「そんな苦悩があるんだね 俺から見た久仁子さんは 背が高くてカッコいいと思うけど、立場変わればコンプレックスを感じているんだね 俺もこうして並ぶと、やっぱり180くらいあったら釣り合いが取れるのになぁ と思うよ・・・やっぱり彼氏にするには 自分より背の高い人が条件?」
 
久仁子「そんな理想を求めていた時もあったけど、私以上に男性の方が順平さんのようにコンプレックスを持っているのか、近寄ってこなかったように思う。 近寄ってくるのは同じバレーボール界の奴ばかり。 でも奴らはバレー馬鹿で生きてきたから中身が薄くてね もう懲り懲りだわ」
 
順平「うわぁ はっきり言うねぇ」
 
久仁子「本当に奴らはバレー馬鹿! だって********で********だし、*****大会で*****が*****して、******出場停止************なんだよ ほんと呆れちゃうでしょ」 【注】発言が過激な為、一部修正させて頂きました。
 
順平「あははは 爆笑 マジで? 少し考えればわかりそうな気がするのにね」
 
久仁子「でしょ 私から見たら、女性ファンがキャーキャーと騒ぎ立てるから、自分達がこの世で一番カッコイイと思っている勘違い集団」
 
順平「手厳しいねぇ 当人達に聞かせて反応を見てみたいヨ」
 

背の差8cmの男女が深夜、真っ暗な山里の道を笑い声をあげながら歩くこと10分、ようやく車に辿り着いた。

 
順平「ずぶ濡れだけどどうしよう このままじゃシートが濡れちゃうから トランクに座るよ」
 
久仁子「いいよ いいよ そのまま乗っちゃって」
 
順平「半端なく濡れているからシャツだけでも脱いじゃっていいかな?」
 
久仁子「私は全然気にしないよ なんならズボンも脱いじゃえば?」と予想外の過激な発言
 
順平は少し考えた後「・・・じゃパンツ1丁で失礼します」とベルトを外しに掛かると
 
久仁子「えっ? 本当に脱ぐの?」
 
順平「えっ?(大汗)」
 
久仁子「じょ・・冗談よ 脱いで 脱いで 風邪引いちゃうし」とは言うものの、あながち冗談ではなかったような
 
順平「なんなら久仁子さんも脱ぎます? 俺は気にしないよ」と冗談で言うと
 
久仁子「いや私は遠慮しときます」と真顔で答える。
 
 
少し調子に乗りすぎたと反省する順平(-"-;)


【ポイント】
パンツ1丁になっても堂々としていましょう。 変に恥ずかしがると、厭らしさが出てしまいます。
恥ずかしいなどという羞恥心は捨てましょう!
どうせ、どこかでパンツ1丁・・・または全裸になるのですから(笑)


 
 
久仁子「あ、そう言えば遠征に持っていったジャージがあったような・・・」と言いながらリアゲートを開けて、なにやら探し始めた。 
「あった! ジャージの上着だけあったから着替えるね 私だけゴメンね」と言いながら最後部座席に座ると、濡れたポロシャツを脱ぎジャージを羽織り、バスタオルを首に掛けて久仁子が運転席に戻ってきた。
 
そのジャージの背中にはスポンサー企業名がプリントされていたが、久仁子は企業名を明かしたがらなかったので、順平は見て見ぬ振りをした。
 
 
久仁子「さぁ 遅くなっちゃったね 帰りましょう」

 
時計に目をやると【23:55】 順平(うわぁ~ こりゃ帰宅は3時近いな・・・)

 
6月上旬といえども、山里の気温は低く、順平は寒さのあまり身震いしながら、濡れたシャツとズボンを膝の上に置き助手席で揺られ続けた。



次章へ続く・・・

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