私を

先生と

呼ぶ

ご老人が

いた



いや

老夫婦

と

言うべきか



私が

まだ

20代に

入っていない

頃の話



その

老夫婦は

定年が

過ぎて

釣りを始めた

と

おっしゃって

いた


よく

通っていた

釣り場で

顔を合わせ

顔見知りになり


一言

二言

だった

会話が

次第に

長話に

変わって

行った


私は

よく

通っていた

ので


老夫婦に

釣り方を

教えたり


目の前で

釣って

見せたり

で


いつの間にか


〝先生〟


と

呼ばれる様に

なっていた



ある日

一人で

来ていた

ご老人と

つたない

会話を

交わして

いると


先生

釣りを

始めた頃は

良く釣れて

いましたが

ちょっと

解って来ると

釣れなくなって

来ました

でも

今は

釣れると

すごく

嬉しいです


と

おっしゃられた

時の

しわくちゃの

笑顔が

忘れ

られません


それから

私の興味が

バイクに行き

次ぎに

写真

自転車

と

移っていき


釣りから

離れて

老夫婦とは

合う事が

なくなりました


今でも

たまに

その

ポイントに

訪れたり

しますが

見かける事は

ありません


何処か

他によい場所を

見つけたのか


今でも

ご存命で

元気に

釣りを

なさっている事を

祈っています


私を

〝先生〟

と呼ぶ

人生の

〝先生〟へ