残滓

  • ジャンル:釣行記
どのタイミングで波が落ちてくれてもいいように、夜明け前から磯場の上に腰を下ろし、青物をとると意気込む気持ちを抑えつつ待った。

予報によれば朝マヅメには釣座に立てるはずだったのだが、やはりそううまくはいかないものだ。釣座にこそ波が被ることはない状況だとは言え、その足元を飛沫が浚っている。最干潮目前で、このまま波が落ちていく時間とその後の潮位上昇を考慮すると、やはりこの場所は諦めたほうが賢明と判断した。

あぁ、この時間に立ててたかな。
立ってたら今頃びしょ濡れだろうな、ハハハ。

と、後ろ髪を引かれつつ、日が昇り始めたタイミングで、車から徒歩20分の道程を引き返した。


しかし、釣座に降りていないその足取りは軽かった。引き返すと決めたらすぐ次だ。シーバスだ。なかなか顔を見せてくれないシーバスに、マヅメの力を借りてアプローチするには...。この場所からほど近く、釣座までのアクセスが容易な場所は決まっている。



そして、2箇所目のポイント。1箇所目で既に時間をロスしてしまっているのだが、ここならどうだ?



足元のサラシを一通り探ったところで、時間的には朝マヅメも過ぎようかという時間。

ラストチャンスだろうな。

沖側に広範囲に広がったサラシと、自分の真正面にシモリを確認している。風は無い。シモリの奥にルアーを撃ちこむ。ラインを波に預けて、シモリの波が当たらない側にU字の頂点をとってもらう。


朝マヅメの残滓を嘗めるかのように、ゆっくり、ゆっくりと、そこにいてくれるはずのアイツの眼の上にルアーを置いてきた。







十分すぎる。居てくれてありがとう。






そしてその血を匕首の刃に染み込ませ、朝日を背にもと来た道を引き返した。

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