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らくだ
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▼ 雷が落ちる
- ジャンル:日記/一般
ヘラブナやブラックバスなどを地方の沼で釣っているとき、「ボグンッ」という奇妙な音を耳にする事がある。これは雷魚の呼吸音である。雷魚は魚なのに肺呼吸をするのだが、水面に出て空気を吸う時、この音が鳴るのだ。この魚を釣るには、それ相応の装備を用意しなければならない。大物釣りの分野に入るだろう。
「『千掘り(せんぼり)のアヒル池』に雷魚がいるらしい」。俺が小学生だったある日、同級生のNが言い出した。「嘘付け」。俺はすぐさま答えた。何故なら雷魚が生息するのは、「水面を蓮などで覆われた、田舎の鬱蒼とした沼」と相場が決まっているからだ。『千掘り』は近所の遊歩道の名前で、『アヒル池』とはその中にある小さな溜池だ。都内の、しかも学校のプールよりも小さいその池に、雷魚がいるとは考えにくい。「いや。本当だ。俺の知り合いが呼吸音を聞いたらしい」。呼吸音とは、前述の「ボグンッ」という音だ。う~ん、それなら本当かも。
Nがしつこく主張するので、その日のうちに行ってみる事にした。「せっかく行くのだから」と、Nの家の玄関にあった金魚用の竿を一応持っていく事にした。雷魚を釣るときは「フロッグ」という、蛙の形のルアーを使うことが多いのだが、あいにく持っていない。仕方がないので、近所の原っぱで本物の蛙を捕まえて持って行く事にした。
蛙も捕まえ、いざ『アヒル池』へ。着いてみると、やはりとても雷魚がいるような雰囲気ではない。何しろその名の通り、たくさんのアヒルが優雅に泳ぎ回っているのだ。「やっぱりいねーよ」。俺の言葉を無視し、Nは金魚用の竿に糸を通し、先っぽの針に蛙を付けて池に投入した。重りも付けていないので、針を通された蛙は痛々しく水面を泳いでいる。こういう時、子供は残酷だ。
イキナリだった。「ガバーンッ」。水面の蛙に飛び掛る巨大な口!間違いない、雷魚だ!しかもかなり大きい!まさか本当にいるなんて!竿は80cmもない金魚用の竿だ。根元からグニャリと曲がっている。ヤバイ、折れる!しかしもしもの時の為に、Nは物凄く太い糸を付けていた。これなら糸が切れる心配は無い。Nは竿を放り出し、糸を素手で掴む。何とか手繰り寄せようと頑張るが、小学生の力では引き寄せられないほどに雷魚の力は強い。Nは必死の形相で食らい付いている。結局30分程の格闘の末、Nは見事に雷魚を釣り上げた(というより引っ張り上げた)!70cmは優に超えるであろう、大物だ!
肩で息をするN。俺達は信じられない出来事にしばらく言葉を失う。しかし人生最大の大物との遭遇に徐々に嬉しさが込み上げてきた。「やったぞ!」。俺はNを疑った事を済まなく思った。「これ、どうしようか?」。Nは俺に尋ねてきたが、答えは顔に出ている。「持って帰りたいんだろ?」。俺は聞き返す。「うん。でもどうすればいいかな?」。ここから俺達の住んでいる地域まで、自転車で15分は掛かる。こんな大物どうやって持って帰るのか。しかし何とか持って帰って、誰かに見せて自慢したい。「雷魚は肺呼吸だろ?じゃあ体だけ水に付けておけばいいだろ。」Nが提案する。なるほど、確かにそうだ。俺達はコンビニの袋を拾ってきて、顔だけ出した状態で雷魚を捻じ曲げて入れた。それを自転車のかごに入れて、大急ぎで家に向かう。すれ違う人が皆驚いている。俺達は少し得意気な気分だった。
Nの家に到着。しかしこの時点でとっくに日が暮れてしまっていた。同級生に自慢するには遅い時間だ。でもこのまま明日まで置いておくのは、いくら雷魚が肺呼吸だとはいえ、さすがにマズイ。Nがまたまた名案を思いついた。「俺の叔父さんが趣味で熱帯魚を飼っているんだ。相当凝っていて、1m以上の水槽を持っている。明日までそこに入れておこう」。
叔父さんの家はNの家の直ぐそばにある。その巨大な水槽は家の外においてあった。真っ暗な中、Nと水槽に雷魚を放つ。よし、これで大丈夫。Nと別れ俺は家に帰ったが、明日友達の驚く顔を想像して、ずっと興奮していた。
翌日。俺は学校に着くとすぐにNを探した。Nは少し遅れて教室に入ってきた。俺はニヤニヤしながら、Nのそばに行く。あれ?Nの顔色がなんか悪いな。「おい、いつ皆に言う?」。「それどころじゃねーよ。大変な事になった。今日放課後、叔父さん家に一緒に来い」。Nは昨日とはうって変わって、テンションが低い。何だよ?ノリが悪いな。早く皆に自慢したいのに。結局、クラスメイトの誰にも昨日の出来事を言わないまま、その日の学校は終わった。
放課後、すぐに俺はNの家に向かった。家の前で俺を待っていたNは、相変わらず冴えない表情をしている。一緒に昨日の水槽の前へ。巨大水槽の前には、鬼のような表情をしたNの叔父さんが仁王立ちしていた。「オメーか。こいつと昨日雷魚を入れたのは!」。「ゴチーン」、イキナリ俺は、強烈な拳骨を頭のてっぺんに叩き込まれた。「イテー!」。一体俺が何をしたというのか?
「テメー、水槽の中を見てみろ!」。見ると、昨日の雷魚が悠然と泳いでいる。何がいけないのか?「テメーらの放り込んだこの雷魚な!俺の熱帯魚を全部食っちまったんだよ!どうしてくれんだ馬鹿!」。昨日は暗くて分からなかったのだが、この水槽には何十匹と高価な熱帯魚が泳いでいたのだ。それを一晩で肉食の雷魚が全部食べてしまったのだ。叔父さんの怒りは頂点に達している。その後も何遍も強烈な拳骨をくらい、俺達は泣きながら雷魚を捨てに行かされた。
その事件以降、その叔父さんの家の前を絶対に避けるようになったのは言うまでも無い。
「『千掘り(せんぼり)のアヒル池』に雷魚がいるらしい」。俺が小学生だったある日、同級生のNが言い出した。「嘘付け」。俺はすぐさま答えた。何故なら雷魚が生息するのは、「水面を蓮などで覆われた、田舎の鬱蒼とした沼」と相場が決まっているからだ。『千掘り』は近所の遊歩道の名前で、『アヒル池』とはその中にある小さな溜池だ。都内の、しかも学校のプールよりも小さいその池に、雷魚がいるとは考えにくい。「いや。本当だ。俺の知り合いが呼吸音を聞いたらしい」。呼吸音とは、前述の「ボグンッ」という音だ。う~ん、それなら本当かも。
Nがしつこく主張するので、その日のうちに行ってみる事にした。「せっかく行くのだから」と、Nの家の玄関にあった金魚用の竿を一応持っていく事にした。雷魚を釣るときは「フロッグ」という、蛙の形のルアーを使うことが多いのだが、あいにく持っていない。仕方がないので、近所の原っぱで本物の蛙を捕まえて持って行く事にした。
蛙も捕まえ、いざ『アヒル池』へ。着いてみると、やはりとても雷魚がいるような雰囲気ではない。何しろその名の通り、たくさんのアヒルが優雅に泳ぎ回っているのだ。「やっぱりいねーよ」。俺の言葉を無視し、Nは金魚用の竿に糸を通し、先っぽの針に蛙を付けて池に投入した。重りも付けていないので、針を通された蛙は痛々しく水面を泳いでいる。こういう時、子供は残酷だ。
イキナリだった。「ガバーンッ」。水面の蛙に飛び掛る巨大な口!間違いない、雷魚だ!しかもかなり大きい!まさか本当にいるなんて!竿は80cmもない金魚用の竿だ。根元からグニャリと曲がっている。ヤバイ、折れる!しかしもしもの時の為に、Nは物凄く太い糸を付けていた。これなら糸が切れる心配は無い。Nは竿を放り出し、糸を素手で掴む。何とか手繰り寄せようと頑張るが、小学生の力では引き寄せられないほどに雷魚の力は強い。Nは必死の形相で食らい付いている。結局30分程の格闘の末、Nは見事に雷魚を釣り上げた(というより引っ張り上げた)!70cmは優に超えるであろう、大物だ!
肩で息をするN。俺達は信じられない出来事にしばらく言葉を失う。しかし人生最大の大物との遭遇に徐々に嬉しさが込み上げてきた。「やったぞ!」。俺はNを疑った事を済まなく思った。「これ、どうしようか?」。Nは俺に尋ねてきたが、答えは顔に出ている。「持って帰りたいんだろ?」。俺は聞き返す。「うん。でもどうすればいいかな?」。ここから俺達の住んでいる地域まで、自転車で15分は掛かる。こんな大物どうやって持って帰るのか。しかし何とか持って帰って、誰かに見せて自慢したい。「雷魚は肺呼吸だろ?じゃあ体だけ水に付けておけばいいだろ。」Nが提案する。なるほど、確かにそうだ。俺達はコンビニの袋を拾ってきて、顔だけ出した状態で雷魚を捻じ曲げて入れた。それを自転車のかごに入れて、大急ぎで家に向かう。すれ違う人が皆驚いている。俺達は少し得意気な気分だった。
Nの家に到着。しかしこの時点でとっくに日が暮れてしまっていた。同級生に自慢するには遅い時間だ。でもこのまま明日まで置いておくのは、いくら雷魚が肺呼吸だとはいえ、さすがにマズイ。Nがまたまた名案を思いついた。「俺の叔父さんが趣味で熱帯魚を飼っているんだ。相当凝っていて、1m以上の水槽を持っている。明日までそこに入れておこう」。
叔父さんの家はNの家の直ぐそばにある。その巨大な水槽は家の外においてあった。真っ暗な中、Nと水槽に雷魚を放つ。よし、これで大丈夫。Nと別れ俺は家に帰ったが、明日友達の驚く顔を想像して、ずっと興奮していた。
翌日。俺は学校に着くとすぐにNを探した。Nは少し遅れて教室に入ってきた。俺はニヤニヤしながら、Nのそばに行く。あれ?Nの顔色がなんか悪いな。「おい、いつ皆に言う?」。「それどころじゃねーよ。大変な事になった。今日放課後、叔父さん家に一緒に来い」。Nは昨日とはうって変わって、テンションが低い。何だよ?ノリが悪いな。早く皆に自慢したいのに。結局、クラスメイトの誰にも昨日の出来事を言わないまま、その日の学校は終わった。
放課後、すぐに俺はNの家に向かった。家の前で俺を待っていたNは、相変わらず冴えない表情をしている。一緒に昨日の水槽の前へ。巨大水槽の前には、鬼のような表情をしたNの叔父さんが仁王立ちしていた。「オメーか。こいつと昨日雷魚を入れたのは!」。「ゴチーン」、イキナリ俺は、強烈な拳骨を頭のてっぺんに叩き込まれた。「イテー!」。一体俺が何をしたというのか?
「テメー、水槽の中を見てみろ!」。見ると、昨日の雷魚が悠然と泳いでいる。何がいけないのか?「テメーらの放り込んだこの雷魚な!俺の熱帯魚を全部食っちまったんだよ!どうしてくれんだ馬鹿!」。昨日は暗くて分からなかったのだが、この水槽には何十匹と高価な熱帯魚が泳いでいたのだ。それを一晩で肉食の雷魚が全部食べてしまったのだ。叔父さんの怒りは頂点に達している。その後も何遍も強烈な拳骨をくらい、俺達は泣きながら雷魚を捨てに行かされた。
その事件以降、その叔父さんの家の前を絶対に避けるようになったのは言うまでも無い。
- 2010年9月2日
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