水曜スペシャル 謎の民を追え!

  • ジャンル:日記/一般

思考する生き物への進化を遂げ、

大いなる文明と繁栄を手にした人類であるが、

同時に生きる事そのものへの苦悩も芽生えた。


 
苦悩する魂の救済として、

やがては人類の多くが知への探求や、

あるいは信仰へ傾倒するわけだが、

その流れはいわば必然といえよう。


 
敬虔に実存を主義として生きていくには、

人生に用意された悲しみや苦しみは、

残酷でありまた過負荷すぎるのだ。


 
もちろん人生は負の面ばかりでは無い。

喜びも所々に散りばめられているが、

背負っている負荷をチャラに出来るほどの甘い蜜など用意されていない。


 
端的な癒しでいいなら問題はない。

そんなアイテムなら簡単に手に入る世の中だ。

だがしかし、手に出来る受動的な生のアイテムをいくら駆使しようが、

それらはその場しのぎの生の肯定でしかなく、

やがては虚しさに覆われ己のなかで朽ち果てて行く事を、

ワタクシ自身が身を持って学んできた。


 
かと言って、ペシミストとして残された時間を過ごす気はサラサラ無い。

斜めから見るには、まだまだ世界は美しい。



人は何に生きるべきか。



その謎のヒントを求め、ワタクシはフェリーに乗り込んだ。

降り立った地は対馬。

ここには文明を遮断して暮らす謎の民「ツシマン」が存在している。



レンタカーを駆り道なき道を突き進んだ。

現代の繁栄から完全に背を向けて生きるツシマンは、

常に生そのものと真正面から対峙して生きている。

ワタクシは問いたい。

ツシマンにとって「生きる」とは。



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未舗装の道を走り、山を一つ越えて海辺に出た。

歓迎のしるしにはあんまりだが、

激しい風と雷雨に迎えられた。

山と海は険しい岩々が立ち並ぶ磯で繋がっていた。

ふと見ると岸壁に洞窟がぽっかりと口を開け、

中から二つの顔が興味深そうにこちらをじっと見ていた。



「ツシマンだ!!」



なんと、伸ばした手を振り手招きをしている。

謎の民に対する恐怖心に好奇心が勝った。

ワタクシは洞窟へ駆け寄った。



ツシマンは2人いた。

ツガイで生活していたのだ。


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そして驚いた事に洞窟の中には数々の「道具」が並んでいた。

女のツシマンが器用に携帯コンロを使ってお湯を沸かし、

コーヒーを入れた。


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カップを受け取った男ツシマンがワタクシにカップを持った手を伸ばしてきて

ボソリ、「ブレンディー」と言った。



彼らは言葉が話せる!



驚きの表情でコーヒーをすするワタクシにまた男ツシマンがつぶやいた。


「全ては海が与えてくれる」



言葉は、数年前に漂流していた青年を助け、

彼としばらく一緒に暮らしていた時に教わったという事と、

ここにある道具全てが目の前の海に漂着した物だという事と一緒に、

女のツシマンが教えてくれた。



やがて雨は止み、強い風ふきずさむ磯に男ツシマンは立った。

漂着した釣竿を手にし、天を仰いでつぶやいた。



「今日、ヒラマサはいないからヒラスズキを釣れと言っている」



振り向くと女ツシマンも同じく釣竿を手にして佇んでいる。

そして「ヒラマサが釣れないならヒラスズキを釣ればいいのよ」と言った。

まるで「パンが食べれないならケーキを食べればいいのよ」と言い放つ

マリーアントワネットのような言葉ではないか。



驚いた事に、こんな小さなコミュニティーでも信仰や哲学は生まれるのだ。

「海は必要となるものを自分たちに与えてくれるが、

必要な事はアソコにいる大いなる人が教えてくれる」

と男ツシマンは天を指さしていた。

「出来ることをやればいい。それだけの事よ」

達観したかのごとき表情で女ツシマンが続いた。



波打ち際に立った彼らは容易にヒラスズキを手にしていた。


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そして今日の食糧は確保できたと早々に釣りを引き上げてきた。



洞窟へ戻った彼はワタクシに語りかけてきた。

「あんたらの世界の事は知っとるよ、延々と人がしゃべる額縁や、

色々な事が計算できて、世界の全てを見れる電卓の事もな」


彼は、まるでワタクシが抱えて来たモノを見通しているかのように話した。

ワタクシを見る限り、自分たちにとって意味もない物ばかりが溢れている世界だとも。

彼らは、ナイロンのジャケット、ナイロンのパンツ、ライフジャケット等々を身に着けているが、

それらが文明によってもたらされた物だとは思っていない。

全ては「海から与えられた物」なのだ。



ワタクシは目的をもってここにいる。

核心に迫るべく話を振るが、なかなか迫るべきところへ辿り着けず、

時間だけが過ぎる。



そこまでもが見透かされているのか?



フェリーの時間が迫り後ろ髪をひかれる思いで席を立った。

聞くべき事はとうとう聞けず仕舞いだった。

港に着きチケットを買い桟橋を渡った時、

響く足音は行きの時のように濁ってはいなかった。

目的のヒントは得られなかったが、

なんとなく、それ以上の何かを得た気がした。



「いきれるようにいきればよい」



別れ際に男ツシマンがワタクシにくれた言葉だ。

ケセラセラのように聞こえもするが、彼らの目にはもっと違う意味の光が宿っていた。

運命という概念に任せ、流動的に生きるような事を示唆はしていない。

なるようにしかならないなどとも聞こえてこない。



彼らの言葉は、金の臭いのする経典に並ぶ文や、

したり顔で安っぽく使いまわされるアフォリズムよりも

滑らかにワタクシの臓腑へ滑り落ちていく。

 
「活きれるように生きれば良い」

もし彼らに文字を書く事ができたなら、きっとこう記したはずだ。



滞在は短かったが、悠久の時を巡った思いだ。

また人生の歩が重たく鈍くなった時、

ワタクシはまたフェリーにのるだろう。



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この旅で一つだけハッキリした事があった。

最後に一言、それを記す。
















ガンダーラなど無い
(`Д´●)!!





お願い!この一言で全てを察して!!!!

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