これは我がファミリーのキスを巡る
壮絶な戦いの記録である

『キスいこか。』
誰彼ともなく発せられるこの言葉によって
夏の陣が幕を開ける

まだ夜が明けきらない頃
ファーザー、おじき、ぼくちんの３人で
クルーザーに乗り込み
港でてすぐのサーフ沖を目指す
そこが我らの戦場




いわゆる親戚同士のなぁなぁな雰囲気はどこにもない
誰が速くたくさんより大きいキスを手にするか
これだけを考えひたすらに竿を振る

『パン食え。』
綿密に計算された一言である
空腹なのを知っていて
あえて優しい言葉を掛けることで
集中力をそらしアタリに対応できなくする

本当に食べてしまったら最後
置き竿状態となり
貴重な一匹を手に出来なくなるのだ

だが空腹には勝てない
私はリトリーブの手を休め
うかつにもパンを手にしてしまった

辛うじて片手で対応できたのだが
やはりアタリからのせることはできない

両手と片手では感覚が全くちがうのだ
その間にも次々と数を重ねていく
ファーザーとおじき

だが私は諦めなかった
彼らのオールドテクノロジーのタックルとは違い
自分のそれは最先端技術の結晶
数々の修羅場で
デカメバルとやりあってきた
言わば相棒
右腕である

竿先に全神経を集中させアタリを待つ
きたアタリは全て掛け
掛けて掛けて掛けまくり
あっというまに二人を追い上げ
終いにはタコまであがってくる始末


＊ファーザーに〆られるタコ野郎

ダメ押しでセイゴも追加し
私の圧勝で夏の陣初戦は幕をとじたのでした

＊ファーザーに〆られるセイゴちゃん

戦果は３人で
キス80匹程
ベラ10匹程
フグ5匹
アイナメ2匹
セイゴ2匹
かに1匹
タコ1匹




激しい戦いを繰り広げたファミリーは
陸にあがると仲良く獲物を食したのでした

＊この物語は一部フィクションです。