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カーボンの弾性率に騙されてほしくない

  • ジャンル:釣り具インプレ
 
ここ数年、メーカーからリリースされるニューモデルロッド、中弾性カーボン使用率が上がっている気がしますね。
私個人としては、多くのシーバスロッドのマテリアルはそれが適正だと思っていますし、スタッカート89の開発時に散々にテストしてきた結果、中弾性の採用は妥当だと思っています。
 
ですが、この「中弾性カーボン」を使うということが、まるで「新しい切り口」のように使われ始めていることには少し疑問を感じています。
 
そもそも高弾性と中弾性の定義もあいまいなのですが、ロッドの広告戦略上便宜的に使われている弾性率が、いつの間にか独り歩きして「新しいカーボン」という使われ方をしてきたのが、高弾性カーボン(+α)です。
マテリアルは一緒ですが加工方法の違いが生み出す特性の違いを、「新素材」的にコマーシャルで使うことで、ユーザーの「新しいものは良いものだ」(これはロッドに限ったことではなく、すべてにおいて)と感じさせる戦略でした。
まぁ確かに、工業製品や競技性の高い製品において、軽量高強度は多くの場合はメリットが多いのですが、それが行き過ぎて「高弾性以外はダメだ」と思わせてしまった節があります。
また、その延長上に「高弾性ロッドは高額になる」というマジックもあります。
 
ですがこれ、日常的に工業製品を扱っているので言わせていただきますが、製品価格(売価)における原価とは、「材料費」「人件費」「経費」「販売管理費」にわけることができ、カーボンシートはこのうちの「材料費」に当たり、また、材料費の100%がカーボンシートではなく、そのカーボンが高価なものになったからと言って、そく価格が30%も上がるというものではありません。
 
販売価格におけるカーボン比率、30%はちょっと無いんじゃないかと・・・
(ただし、ブランク製造メーカーとOEM生産でのメーカーでは、この数値は大幅に異なります。ブランクメーカーからブランクを購入するさいに、30%乗せられてしまったらOEMメーカーとしてはそうするしかありません。また、本当に特殊で価値の高い技術での生産品には、適正に価格を上乗せすることは悪いことではありません。それが適正と思わないなら、購入しないことも選択肢としてOEMメーカーは利点があります)
 
これに対し、まるで過去のテクノロジーと思われてしまった中弾性ですが、私は「使用の用途に合わせた素材のチョイス」という意味で、中弾性ブランクのメリットを生かしたロッドを作らせてもらっただけです。
 
ところが最近は、中弾性という言葉がもてはやされて来ています。
 
そもそもが、「ロッドは曲がる必要がある。ただし適正に」なのであり、高弾性で私の求める曲がりを追うことは、耐久性に難が出ることが分かっていたので、中弾性をメインに使うことにしただけです。
ですから、高弾性を使いたいと思うロッドを作る時は、ちゃんと(というのも変だけど)高弾性のメリットを生かしたロッドを作ります。
 
もちろん、カーボンというマテリアルをロッド(テーパーのついた筒状)に加工するということは、その加工方法にはものすごい数のパターンがあり、魔法のような新しい技術なんてものはポッとは出てきません。
 
各工程で発生する様々な問題や課題を、本当に地道にクリアしていくことでしか、進歩というものはありません。
そういう部分をすっ飛ばして、「新技術」とか「新素材」というもので、ユーザーへアピールする時点で、本来の「ものつくり」とはかけ離れてしまっていると感じています。
 
ロッドは魚を釣るための道具です。
それ以上でもなく、それ以下でもありません。
その道具のコマーシャルに、素材云々をメインに持ってくることがおかしいのです。
 
「~~をしたいが為に、~~の技術を用いる」が正しく、「~~の技術だからこのロッドは良いのだ!」では、何のためのロッドか解らなくなっちゃうなぁ・・・ということです。
 
まして最近流行りつつある、「中弾性はよく曲がる」という部分をクローズアップする傾向は、まるで「高弾性は曲がらない」という誤った誤解まで生みだしています。
 
いつだかログでも書きましたが、高弾性も曲がります。
筒がつぶれにくいだけで、負荷をかければ曲がります。
 
ただ、スズキの一般的な釣り方(ミノーを巻く釣り)には、あまり向かないと思っているだけです。
 (ただし釣りは、キャスト・掛け・寄せ・キャッチという各工程がありますので、一概に全否定はできません)
ユーザーへ思い込ませるメーカーが悪いのか。
それとも売るためには仕方ないことなのか。
 
そこは私には分かりませんが、長くスズキ釣りやってきたアングラーの多くが、「※※※、なくなっちゃったけど、けっこうよかったよね」と言うのは、偶然ではないような気がしますがこれ如何に(笑)
 
※特定メーカーのロッド開発プロセスに携わっている身なので、メーカー名称を表示することを避けました。
察してください(笑)
 
私が言うと怒られそうですが、ユーザーもちゃんと選ぶ目を持ってほしいという気持ちが、少しあります。
「ロッドは好み」と言いますが、それを承知であえて言うなら「好みを一番」とは思ってほしくないのです。
かならず「その釣りに対しての適正」はあります。
物理的な意味で。
一度に複数ロッドを持ち込むことができる、ボートでのブラックバス釣りで、なぜあんなに多くの本数を持ち込むのかは、まさにこの物理的にそれぞれの釣りに対して理想があるからなのです。
メーカの販売戦略ではありませんw
一本ですべてというのは、「出来なくはないけど、無理がある」のです。
ダウンショット用ロッドでスピナベとか(笑)
ですからメーカーは、ちゃんと用途別に「狙ったロッド」を作りこんでます。
そのうえで微妙な部分に「好み」が出ます。
 
では、1本で多くの釣りをこなすシーバスはどうなのか。
シーバスは、「フィールドごとに適正ロッド」を持つのが効率よくなります。
主に長さと強さでいいと思います。
 
ロッド開発者として思うのは、そこをユーザーがきちんと分けて考え、それぞれのメーカーからリリースされているロッドを、適切に選ぶ目を持ってほしいなということなのです。
 
高弾性だから、中弾性だから、そういうことではなく、どういう釣りをするためのロッドで、その為に何を狙ったのか?を、ぜひイベント等で各メーカーや販売店さんに聞いてみてください。
 
そうやって選んだロッドは、その釣りで裏切ることはありません。
 

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