落ちないなぁ

鮎は見つけられない

しかし巨大な豚が反転流で何周も漂っている

上のパーティーの人達が流したのか

食べずに捨てるかなと

一瞬人種的偏見に囚われつつ

水面を見つめていると

すぐ横でブラジルのノリとも違う
東南アジア民謡で合唱するグループから

一人ほろ酔いのお兄さんが現れる
パーソナル距離は50センチ以内

つり?
うんそうだよ

流れが早いね
ここいいね

水が巻くと言いたい感じの雰囲気

釣りわかるね?と言うと

弟がやるよと

釣れることを祈ってるといい
握手を求められ

最後グーで挨拶

もちろんその後も当たらないしボイルもでない 鮎もいないが

豚はまだそこで回っている

次にもう少し浅黒い南アジア系のお兄さんが現れる
互いに会釈する

近づいてくる 私に

というか 豚に

なんかおかしいね たぶん不思議と言いたいのだろう

水に入れたら見てみたいと言うので

救おうかと

タモを出して近寄ると その豚は大きく 重く

もう目はない

そして丸刈りの豚と思ったら
一部毛が残っていた

茶黒い剛毛

お兄さんにこれイノシシだ

ワイルドピッグだと

上の人が捨てたと思ったのは偏見だった

どうもこのイノシシはなんらかの理由で死んだのだろう

浅瀬に乗り上げてこのままも

ちと違うが 流すのも違うか

いや流そう

足で反転流に強く押しやる

その後何度か回ったろうか

ふとイノシシをみると

いい筋に乗ったようだ 

ああ 何も無いよりいい日だった

酔っ払いと 好奇心は反転流に吸い寄せられて

久々に海外ルーツの人々と交流し

なんだか温かい気持ち

鮎には会えなかったが人には会えた

コメントを見る