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“解禁”~再戦~

  • ジャンル:釣行記

この日の朝の気温は5℃。

比較的暖かく感じられ、解禁日初日の釣行としては最高の条件だった。

背後の山に陰っている陽が、辺りに差し込むにはまだ少し時間がかかるが、顔を出せば気温は一気に上昇する気配。

そんな時程、決まって鱒達の活性も上がる。
“水を得た魚”ならぬ、“陽を得た魚”。

厳寒期はこいつに的を絞る。


来たるべき時に備え、膝まで飲まれる深い残雪を注意深くラッセルし、ベストポジションを陣取って水辺に立つ。

昨年は低気温により、ラインやガイドが凍ってしまい、いくつかのスプーンを無くした挙げ句、魚とも渡り合えなかった。

今回はそれを踏まえて、3000番のリールに8lbのライン。
更に対櫻鱒用である、8g~22gまでのスプーンも用意した。

狙いは激流に潜む“清流の暴君”。
スピードと、暴力的とまで取れるパワーを兼ね備えたレインボーこと、虹鱒。


『これなら闘り合える。』


その自信が、攻めの気持ちを沸き立たせ、穫る釣りを可能にしてくれる。



AM8:10。
流れ、水色、共に抜群。

魚は間違いなく・・・いる。


まずは魚の様子を窺うべく、8gのスプーンで、表層から中層付近を探っていった。


開始から数分。

アップクロスに投げ、ダウンに差し掛かった所でバイトあり。

一瞬掛かったかと思ったが、どうやら魚が小さく、針に掛からなかった感じ。


その後、しばらくアタリも何もない時間が続く・・・。

解禁日、いくら気温が暖かいとは言え、やはり魚の活性は低い。
恐らくボトムにベッタリと張り付き、目の前に落ちてくるエサだけを待っているのだろう。

それでも少しずつ場所を移動しながら、ひたすら表層から中層のみ、活性の高い魚だけを探して行った。




聞こえるのは瀬音とキャストの音だけ。


たった五分がとても長く感じられ、やがてそこには『魚はいないのではないだろうか』という錯覚にまで陥る。


ジッと竿先とラインにのみ目を凝らし、耳を周囲に傾け、指先に感覚を集中させる。

この時初めて、途中で仮眠を取っておいて正解だったと思った。
恐らく、あのまま辿り着いていたならば、集中力は途切れ、感覚を研ぎ澄ます事は出来なかっただろう。


適度の睡眠と、魚への飢えた渇きが、感覚をより研ぎ澄ます結果となったのである。

そしてこの集中力が、次なる手を弾き出す。



AM8:45。
背後の山から、やっと陽が顔を出した。

一気に暖かく感じる空気。
水も草木も、それに張り付いた雫さえも、一斉にキラキラと輝き始める。

そうした途端に魚がルアーを追うのかと言えば、そうではない。


これまでに冷えた水に、溶け出した雪代水が入り、更に水温が下がれば魚達は途端に食い渋る。


しかし、とある条件が重なった時、最大のチャンスが訪れる瞬間がある・・・。


『陽光の一時』。


水面にただ陽が差すだけでなく、しっかりとした「流れと水深」がある場所。


溶け出した雪代水が入る前の一時、先の条件が揃う場所へ陽が差した瞬間に、魚の“スイッチ”が入る。



この時を待っていた。


AM8:50。
それまで中層を漂わせていたスプーンを、一旦ボトムまで沈める。
ボトムを転がす様に、強い流れにラインを乗せてスプーンを水流に引かせる。
リーリングは、ほぼラインスラッグを取るのみ。


ここで「ググッ」と竿先が絞り込まれた。

瞬時にアワセを入れてフッキング!

あまり抵抗を見せないが、紛れもない魚の引き。

これはたぶん岩魚。それも尺に満たないサイズ。

“たぶん”と言ったのは、流れを抜けた所でバレてしまった為。

しかし岩魚の引きはアマゴやレインボーのそれとは似て異なる為に、すぐわかる。


手前の流れに乗って出来るラインスラッグが、魚にダイレクトに繋がらず、甘いフッキングになってしまった。


未熟・・・。

(これがレインボーだったら・・・。)


しかしバレはしたものの、戦略は当たり、ミスに気付いた事に気を良くしたTOMMYは、ここでそれまで温めていた対岸にスプーンを届ける為、19gのスプーンにチェンジ。



(カラーは違うが、先月1日に櫻鱒を振り向かせた名スプーン、Olien19g(TJ))



AM9:00。

フルキャストで狙ったピンへOlienを送り、素早くボトムを取って、流れにラインを乗せて底を引く・・・。





「ドスッ」



ここで早合わせは禁物。

ボトムを転がしている為に、根掛かりの可能性がある事、
そして何より、

“しっかりと魚にスプーンをくわえ込ませる為”に。



そのまま竿でゆっくりと聞いてやると・・・


グググッ!

竿先に伝わる生命感・・・

先程の失敗を生かし、今度は仰け反る様にアワセをくれる!



「バシャッ!!!!」


ビシッ!と音を立ててラインが水面を切った先で、魚が跳ねた!


一瞬で目に焼きつく、斑点を散りばめたデカイ尾鰭・・・


「来たっ・・・レインボーだ!!」



何も出来ないまま、叩きのめされてから一年。

この時をずっと待っていた。



ジーッ!!

ジーッ!ジジーッ!!


激流をトルクフルに暴れ回る大型レインボー!

限界近くまで弧を描くロッドを右へ左へと魚の動きに合わせ、ドラグを調整しながら次第に距離を詰めて行く。


自分でも驚く程、冷静だった。

強靭なタックルがそうさせたのか、昨年のリベンジに燃える心がそうさせたのか・・・。


背中のネットに手を掛け、魚をゆっくりと誘導させる。


無事ネットイン。





そのままヘタッとその場に座り込んだ瞬間、右手の発電所の方から拍手と喝采を浴びた。

一部始終を見ていた、作業員の方々からの祝福だった。


TOMMYは小さく頭を下げた後、大きくガッツポーズを見せた。



“やっと会えたぜ”





(2012.3.1 “岐阜県宮川の虹” 45cm)

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