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南紀喜怒哀楽釣行~其ノ弐~

  • ジャンル:釣行記

10日、PM4:00。

三時間程仮眠を取り、元気を取り戻した二人は、意気揚々と朝と同じ磯に向かった。


もちろん同じ魚が食って来るなんて事は微塵も思っていなかったが、きっとまだ魚はいる・・・

そう信じて。


PM5:00。
再び、ランカーと闘り合った磯に立つ。

朝に比べてやや波質は落ちたが、それでも十分なサラシは広がっていた。


仕事を終えて駆けつけてくれた、『大橋水産』社長こと、潮岬タワー料理長、大橋の兄貴も後ろでスタンバイ。


「いい感じやね。」


と、頼もしいお言葉。

様子見は一切ナシ。
のっけから本気モードで探って行く。


磯際を泳ぐナミノハナの群れ。
そして時よりサラシの切れ間に姿を現すウルメイワシ・・・。

全てが朝と同じだった。

ただ一つ、違う点を挙げるとすれば『潮位』。

この日は夕方の四時が干潮だった為、水面は朝よりも随分低く、遠い。


(もう少し上げた方がいいかな・・・)


これが後の“ドラマ”を呼ぶとは、この時は思いもしなかった。




夕陽が西に傾き、やがて空が赤く染まり出した。


ここまでまったくのノーバイト。

「叩かれた後かもね。」

大橋の兄貴が言った。

それでもベイトが跳ねている姿は確認出来ていた為、TOMMYは諦めたくはなかった。


PM7:00。
ここで大橋の兄貴はタイムアップ。

「頑張って」と、和歌山の郷土料理『めはりずし』をTOMMYとごっさんの分を置いて帰って行った。





「いつもありがとう、兄貴・・・」

めはりずしを頬張りながら、兄貴の後ろ姿を見送った。

『よっし!ここまで来たら、暗くなるまでの残り一時間!全神経を集中して投げ続けてやる!』


既に辺りは暗い青に包まれ始めており、真っ白なサラシがより一層際立って見えていた。



ルアーを視認性の高いRHやチャートに変え、磯際を丁寧に探っていくが、反応ナシ。

と、ここで真っ白なサラシの中に、一際目立つ“黒い物体”が目に付いた。


「何だあれ?」


一瞬、魚かなとも思ったが、波に揺られているだけで自動している様子はない。

そんな“黒い物体”が、上げ潮に乗って次々とTOMMYの目の前のポケットに流れ着いて来る。

30cm程のモノから拳大なモノまで・・・。


「ん?まてよ・・・」

ここでTOMMYは、ある事を思い出した。


あれは昨年の春、大橋の兄貴と釣りを終えて、真っ暗なゴロタ浜を歩いていた時の事。

夜の磯場にヘッドライトを照らし、プールに溜まる魚やエビを観察したり、浜に落ちている貝殻やハングル文字を記したペットボトル等を拾い、楽しみながら帰っていたTOMMYに、大橋の兄貴がこう言った。




『TOMMY、浜には色々なモノがこうして流れ着くけど、“黒い塊”の様なモノを見付けたらラッキーやよ。』


「黒い塊!?」


『うん。もしかしたらそれは“クジラの糞”かもしれない。もしそうだとしたらものすごく貴重で、一獲千金なんだよ(笑)。』


「へ~、ロマンがありますね(笑)」

と。


それからというもの、その話はいつもどこか頭の隅っこに置いてあり、磯に行った際には何となくその“黒い塊”が落ちていないものかと、探しながら歩いていた。

そんな、“黒い塊”が今!
現にこうしてTOMMYの目の前のサラシの中にいくつも浮いているのだ!


『まさか・・・。』


慌てて大橋の兄貴に電話をかけ、詳細を確かめる!


「兄貴、つかぬ事を聞くんですが、前に言っていたクジラの糞ってどんなモノなんですか!?」


『クジラの糞!? あぁ、“龍涎香”の事?』


「龍涎香(りゅうぜんこう)!?」


『うん。クジラの糞の名前だけど、どんなモノって言われてもなぁ・・・
黒い塊でタールの様なモノらしいよ。ライターで炙るといい香りがするんだって。でも何で?』


「いや・・・今それらしい物体が目の前に幾つも流れて来てるんですけど・・・」


『マジ!?掬ってみた!?もしそうやったら何十万、何百万やで!(笑)』


「今から・・・今から掬ってみます!」


http://chikyu-to-umi.com/kaito/ryuzenko.htm


電話を切り、少し離れた場所にいるごっさんの元へ駆け寄り、事の次第を説明する!

「かくかくしかじか・・・・・・」

『嘘!?マジで!?』

二人共、ロッドをその場に置き、ランディングネット片手に先の磯までダッシュで戻る!


時刻はPM7:30。
辺りはほぼ、闇になろうとしていた。



絶好のヒラポイントである磯場のサラシにライトを照らし、二人で漂着していた“黒い塊”を探す。

もう“ヒラスズキ処”ではなくなっていた。


しかし・・・・・・


「ない!ない!」

先程まで磯際をプカプカと浮遊していた幾つもの黒い塊が、どこにも見当たらないのだ!


「どこにいった畜生!」

(潮の流れで払い出してしまったのか!?)


辺りのポケットを隈無く探すが、潮位もかなり上げて来ており、とめどなく押し寄せる波とサラシによって、探索は難航を極めた。




「あったー!!」

TOMMYのライトが照らした目線の先、5m程のサラシの中を浮遊する黒い塊!

「どれどれ!?うわホントだ!すげぇ!」


たしかに言われてみればタールの様だ。


「よっしゃ!ごっさん、照らしといてくれ!」


「気を付けてよ!」


6mあるランディングネットの柄をマックスまで伸ばし、TOMMYはサラシの中にネットを構えた。


しかし、まるで黒い塊をネットから遠ざける様に押し寄せる波!


「くそっ・・・あとちょっと・・・ダメだ!届かねぇ!!」


「離れてくぞ!」


何度も何度も捕獲を試みるが、ただでさえ長く自由の効かないネットに、波の負荷が架かり、とてつもなく重い。


「ぐおぉぉぉ!」

渾身の力で掬おうとするも、また波が塊をサラって行く。


「畜生!何ていけずな波なんだ!あとちょっとなのに!」


そうこうしていると、波のセットが入り、また塊を見失ってしまった。


「どこだ!?」

「どこ行った!?」


二人共必死(笑)。


そりゃそうだ、一体いくらになるかわからない様なブツが、目の前で消えたり現れたりするのだから。


「あった!まだあるぞ!ごっさんあそこだ!」

「ダメだ、俺まだ見付けられてねぇ!」

ごっさんと頬をぴったりとくっつけて、指で塊の位置を知らせる。
もうナリ振り構わずだ(笑)。


「オッケーオッケー!捉えた!」


「そのまま照らしててくれ!俺飛び込むから!」


「はーっ!?ダメだって!危ねぇって!」


「それ位のリスクを負わなきゃ一獲千金なんて無理だ!」


バカである。
でも本気でそう思った。

TOMMYの頭の中では、AIMSのニューロッドを手にするビジョンまで描かれていたのだ。




そんなやり取りをしていると、今までにない程に“塊”が近付いた!


今だっ!


タダダッと磯を駆け降り、しっかりと“亀の手”にスパイクを乗せて踏ん張る!


海面はすぐ目の前!
ドキドキだ!

足が小刻みに震える!

ヒラスズキが釣れた時だって、こんなギリギリまで降りた事はねぇ。

それ程にアドレナリンが放出していた。


「どこ!?」

「朋君の目の前!」

「あれか・・・」

思いっきり腕を伸ばし、タイミングを見計らって掬いに掛かる。


そして、ネットの枠が塊に触れた!


「惜しい!もうちょっと!」


「うおらぁぁ・・・・・」


その時だ、ふと海に目をやるとデカい波が押し寄せて来ているのが見えた。


そうなのだ。
塊だけに目を向けていてはいけない。

時よりこうして海にも目を向けながらの捕獲。
これがスムーズにいかない一番の要因なのである。

「ダメだごっさん、セットだ!上がれ!上がれ!」


ダバダバと駆け上がり、セットが過ぎ去るのを待つ。


見失っては探し・・・
見失っては探し・・・


そしてとうとうその時が訪れた。






浮遊する“塊”と波のタイミングを計り、神経を研ぎ澄ましてジッとその時を待つ。


波がグーッとせり上がり、膝まで何度も押し寄せてはザーッと引く!
これ以上は持たない!

もう一刻の猶予もなかった。

これが最後だと言わんばかりに、ネットを“塊”目掛けて上から被せた!


「入った?入ったんじゃね!?」

固唾を飲んで見守るごっさん。


真っ白なサラシから持ち上がるネット・・・


「入った!入ったぞーっ!!」

「うおぉぉぉ!!!!」

雄叫びを上げる二人!


TOMMYの目には、何故か少しだけ涙が溢れた。

(ついに手に入れたぞ龍涎香!!)




磯に駆け上がり、ネットの中の『龍涎香』に目を向ける。


水滴を纏った龍涎香は、ライトの光を浴びてキラキラと輝いている。





「ん?何だコレ・・・・・・」



『木!?』


『木だーっ!!』

TOMMYは天を仰ぎ、その場に大の字に倒れた。

“投げ倒れ”ならぬ“掬い倒れ”(笑)。


ネットの中でカサリ・・・と佇まうそれは、龍涎香などとは程遠い、ビッシリとフジツボを張り付けた“木の皮”であった。






満天の星空の元、程なくして込み上げる笑い。

二人して夜の磯でバカ笑い!


「んなに甘かねーよなぁ!」

「こんな薄っぺらいものに翻弄されてたなんて・・・(笑)」

「水中ではもっと分厚く見えたぞ!(笑)」

「たしかに見えた(笑)」


夕マズメのおいしい時間帯に、とんでもないモノに目を付けてしまった二人は結局何も釣れず、木の皮一枚で“坊主上等“(笑)。



「あ~あ、っし帰るか!」

「だなっ!」


PM8:00。
30分に及ぶ『龍涎香』だと思われた“木の皮”との格闘はこうして幕を閉じた。


帰りの道中でも、その話題で持ちきり。

一獲千金はならなかったが、何か“大切なモノ”を心に得られた気がした、二人だったのでした。



磯には熱いロマンが溢れている・・・


楽しかった!

また行くぜ!




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