このログはフィクションであり、 登場する人物、団体は実在のものと一切関係ありません。

 
これまでの一週間、順平は描いたデートプランを実現させる為、仕事そっちのけで精力的に動いた。


食事する場所の予約はもちろん、座る席位置にも拘り、コース料理メニューも事前に決め、肝心な誕生日サプライズもバッチリと仕込みを終えて、あとは当日、肉の焼き加減とワインの銘柄を選ぶだけにした。
 
 
事前に定時上りの申告を済ませていた順平は、定時で仕事を終えると久仁子との待ち合わせ場所であるＪＲ名古屋駅　ユニモール３番出口に車を走らせた。
 

夕方の帰宅ラッシュでごった返す名古屋駅界隈の渋滞は予想以上。
18時の待ち合わせ時間に遅刻ではないものの順平は「５分後に到着します」とだけ短いメールを送る。
 

久仁子はどんな服装できているのだろう・・・
 
サプライズに喜んでくれるかな・・・
 
久仁子は美しい笑顔を見せてくれるかな・・・
 
期待に胸をときめかせながら信号を待つ・・・
 
信号を左折すれば久仁子の姿が見えるはず。
 
 
長く感じた赤信号が青色に変わり、ゆっくりと左折する。
 
木立の影に長身の女性が立っている。　


久仁子の姿を見た途端、何かホッとした。
 

久仁子は車道側に背を向けて立ち、メールを打っているようなので、順平の車に気付かない・・・
 
順平は静かに久仁子の立つ道路脇に車を止めると外に出て、メールする後姿を眺めていた。
 
久仁子の装いは、黒いワンピーススカートにローヒールのパンプス　先日会ったラフな服装とは違い、シックで大人の雰囲気が漂い、かなり気合いが入っている感じがした。
 
モデルとも思える久仁子の後姿を見守っていると、一際目立つ長身にスレンダーなスタイルと美系の顔立ちは、行き交う仕事帰りのサラリーマン達の視線を奪い続けていた。
 

久仁子が携帯を閉じると、同時に順平の携帯が鳴った。
 

久仁子「わかりました　人込みの中で待たされるのは辛いから早く来てー」
 
順平は先回会った時「長身だと目立つから人込みは苦手だ」と言っていたことを思い出し、もう少し眺めていたかったが、さもかし今到着したかのように「お待たせ！」と声を掛けた。
 
「お待たせ！」の声に振り向き、その振り向き様の瞬間に見せた久仁子の笑顔
 
それは人込みから開放される安堵の表情なのか、恋焦がれていた人に会えた喜びなのか分からないが、ニコッと微笑んだ久仁子に表情に順平の心はキュンと締め付けられた。
 



後々、想い返すと、順平が恋に落ちたのはこの瞬間だったと思う。



 
久仁子は「こんにちは　お疲れ様ぁ」と言いながら車の方へ歩み寄るが、ガードレールが行く手を阻んだ。

事もあろうか久仁子はスカートの裾を押さえながら長い足でガードレールを跨ぐと「エヘヘッ！」と車道へ降り立った。

その大胆な姿に唖然としながらも助手席のドアを開け、久仁子をエスコートして助手席に座らせた。
 
運転席に戻った順平は「ごめんな　人込みになる場所を待ち合わせ場所なんかしちゃって・・・」

久仁子「ふーっ　こんにちは　うん　やっぱり人込みは苦手だな！　ジロジロと見られるし・・・」
 
順平は車を走らせると「悪かった！　待ち合わせしやすい場所が良いと思って指定したのが間違っていたね　これからは気をつけるよ」
 
久仁子「これからも･･･って、これからも会うことあるの？」と言葉の揚げ足を取るようなツッコミをいれてきた。
 
順平は堂々と臆することなく「あるんじゃない？　少なからず俺は有って欲しいと願っているよ」と自分の素直な気持ちを織り交ぜながら返答をした。
 
久仁子は「ふぅ～ん　そうなんだ・・・」と肯定も否定もせず、心の内を明かすことなく、街行く人込みに目を移した。



再び、都市高速に乗った順平は、一路　小牧市に向けアクセルを踏み込んだ。

 
少し沈んだ面持ちの久仁子であったが、高速に乗ると「何処に連れて行ってくれるの？」と話題を変えて尋ねてきた。
 
順平は、今日が久仁子の誕生日であることを隠して、「また遠征続きで大変だろうから、今日はとびっきり美味しいお肉を食べさせてあげるね　任せておいて」と胸板をドンと叩いてみせた。
 
その順平の自信たっぷりな振る舞いに久仁子は「なんだろう　楽しみ」とおどけてみせた。
 
 
車は順調に走り、合唱レストラン「大蔵」に到着。


ここからマメな順平の本領が発揮される（笑）


http://www.r-okura.com/
　↑順平お勧めのお店です。　最近はサービスランチメニューも用意され、以前と比べればリズナーブルにないました。
個室もありますので、人に見られてはマズイ方との食事にも最適です（笑）