ロールパンナちゃん

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 アンパンパンは、無垢な子供からの支持率が、かなり高いように思う。正直言うと、最初、アレのどこが良いのか?と思っていたのだが、子供たちと観ているうちに、私も子供の頃に『アンパンマン』と少しだけ接触していたことを思い出した。
 幼稚園の頃であった。それが紙芝居だったか、絵本だったかは、今となっては、定かではないが、※『アンパンマンとゴリラーマン』というタイトルであったように思う。
 おそらく、今の設定が出来上がる前の初期型のもので、基本構成はさほど変わらず、悪さをしたゴリラーマンを懲らしめ、訳を聞いて、頭のアンパンを食べさせると言う具合だが、その頃は、今のように手で少しだけ千切って渡すようなヤワなものではなく、頭部を直接食べさせて、頭が殆んどない状態で、ジャムおじさんの元へ帰還していたのではないかと記憶している。

 それ以降はずっと存在すらなかったはずなのに、子供が出来た途端、我家は『アンパンマン』に占拠されてしまった。息子などは、生後半年くらいからアンパンマンの人形に心奪われ、ある時期まで、しつこい程、テレビはずっとアンパンマンであった。

  今となっては、子供たちの方が『アンパンマン』のことをすっかり忘れてしまっているが、私は時折思い出すことがある。

 この『アンパンマン』というのは、一話、二話をパッと観ただけでは理解できないメッセージが込められているからだ。

 その中の一つがロールパンナである。このキャラクターは、脳天気な他のキャラクターと違って、心に善と悪あり、子供向けにしては実に複雑な感情を持ち合わせているのである。このような微妙な設定を理解していたのかどうか判らないが、娘が最も心魅かれたキャラクターであった。

 また、アンパンマンをはじめ、ロールパンナ、メロンパンナ、そしてカレーパンマン、ショクパンマンは、すべてジャムおじさんの手により作り出されているが、設定上で姉妹関係を認めているのは、ロールパンナとメロンパンナの姉妹だけである。アンパンマンやカレーパンマンなどは兄弟ではなく、たんに仲間として位置付けられているのだ。

 そして興味深いところは、ロールパンナは、メロンパンナよりも後に作られていることを物語中で認めた上で、ロールパンナを姉。メロンパンナを妹としているところである。
 これは私の観る限り、決して物語の矛盾や歪みなどではない。構成上からも、ロールパンナを妹としたとしても、何ら問題はなかったはずである。

 では、なぜ後に作られたロールパンナが姉なのか?

 それは、先に作られたメロンパンナが、妹ではなく、姉を望んだからである。メロンパンナは「お姉ちゃんが欲しい」とジャムおじさんに頼んだのだ。 
 だから、産みの親であるジャムおじさんは、メロンパンナの為に姉を作ったのである。
 普通、こういう場合、例えそれが子供向けのアニメ番組であったとしても「違うよ。先に生まれたあなたがお姉さんなのよ」と常識で固めようとするものである。

 しかし作者のやなせたかし氏は、そうはしなかった。

 長子である私もそうであったが、兄や姉が欲しいと思ったことがある。しかし現実として、後から兄は生まれない。
 つまり、作者は、子供たちにとって絶対にありえない夢を『アンパンマン』の中で叶えてくれたのだ。   

 ・・・と私は思っている。


 我家からアンパンマンが消えて久しいが、行き詰ると、なぜかこのエピソードが脳裏を過ぎる。
 



追記
※ちゃんと調べてみると『アンパンマンとゴリラーマン』ではなく、『あんぱんまんとごりらまん』でした。1976年6月号『キンダーおはなしえほん』が初版で、その後、同年12月発売の『キンダーおはなしえほん傑作集』に掲載されています。

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