別れが、

苦手じゃない人なんて、

なかなか居ないと思う。





自分の歳を思い返してみると、

彼が亡くなった年齢の、

倍の歳になっていた事に気付く、

彼とは学生時代に出会い、

同じ釣り雑誌を読んでいて、

仲良くなった、

彼は常に私の数歩先に居て、

釣りも上手かったし、

頭も私より数段良くて、

昼休みのバスケットも、

彼と競いたくて、

弁当を半分も食べない内から、

体育館で走り回っていた。

彼が原付免許を取得し、

始業式だったか、

終業式だったかに、

学校から離れた場所に、

赤いバイクを隠しているのを

見せて貰った時は、

とても羨ましく思った。

初めて人の物を羨ましく思った。

釣りに行っても、

「６インチワームを投げよう」

と言って、

地面を掘り返し、

ミミズを探し始めた時は、

コイツの後を着いていけば、

ずっと楽しい夢を見れると、

心から思っていた。

しかし夢は夢で、

彼が学校に余り来なくなって、

数日それが続いた頃、

連絡しようか迷っていたら、

朝のHRで、彼の死が告げられた。

その日は一日中、

机に突っ伏し泣いていた。

恥ずかしくて、

寝ているフリをしながら、

ずっと泣いていた、

色んな事を約束していたし、

私が原付免許を取得したら、

一緒に琵琶湖を一周する事も、

一緒に釣りに行く事も、

一度たりとも、

彼を追い抜く事も叶わなくなった。

彼の命日は、

私の誕生日月で嫌でも思い出す。

それでなくとも、

彼の事は良く思い出す。

何処かの僧侶が

「思い出す事が、一番の供養になる」

と仰られていたが、

後悔していた私の救いにはなった。

もう随分と私の時間と、

彼の時間は異なってしまったが、

私の生き方に、

多大な変化をもたらした人物ではあるし、

私の胸の中でだけでも、

ずっと友達でいて欲しいと思っている。

彼が居たら、

どうなっていたか、

想像しない訳じゃないが、

そんな事を考えたら、

また彼に笑われるだろうからね。