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スタンド・バイ・ミーを語る

スティーヴン・キング原作、1986年公開の映画『スタンド・バイ・ミー』を語る。


何故、この映画は人生で2度見る必要があるのか?

人生で2度、つまり、子供の頃と、大人になってからもう一度見るべき映画だと言われる、1950年代のアメリカを舞台とした少年達の小さな冒険を描いた名作映画である。

そして、なぜかと言えば、このストーリーは主人公ゴーディが、昔を思い出しながら物語を綴っているという、意図的に2度見る必要がある手法で作られているからに他ならない。



ワクワクするに決まってる

のっけから子供にはたまらんのである、この映画。

だってね・・・ですよ?

素晴らしいまでの完成度を誇る秘密基地が登場して、そこへ入るのに合言葉とか使ってるんだから。
そして、ちょっと悪ぶった雰囲気の漂うリバー・フェニックスじゃなくてクリス、マジカッケェよって。

もう、ここからグイグイと少年のハートをキャッチしていく訳ですね。

死体があるという謎説き、こっそり家を抜け出そうとか、秘密の冒険が今始まるよ!って。
しかもこれが、自分達にも、ちょっと出来そうな感じのリアリティがまた憎い。

これを見てワクワクしない少年はいない、完全にハートをキャッチなんですね。


明かされていく個人の闇と成長

もう典型的なロールプレイングゲーム的アプローチで冒険の過程で、キャラクターの性格や、個性、特技、と言うものが解かって行くストーリー構成。

バーンはとにかくヘタレだけど、明るいお調子者、テディは父親への憧れと尊敬、だけれど父親こそが家庭の問題であるという苦しみを抱えている事

そして、運動神経抜群で、頭のキレも良く、リーダー的存在のクリスが・・・

親友のゴーディに泣いた、この瞬間こそがダイナミックに主人公、ゴーディ少年を成長させるんです。


最不幸大賞受賞はゴーディ

思えば、冒頭から主人公の不運か一番辛い思いをしているのはゴーディなんです。

大好きで尊敬する兄が死ぬます。

両親、特にそれに絶望した父親に『お前が死ねば良かったのに』と言われる悪夢を見る位、家庭での居場所や自分への愛情を感じられなくなります。

もう、これを見て解かる様に、スタート時点でもっとも深い闇を抱えているのがゴーディなんです。

冒険が始まる前に、銃を発砲させられ、兄の形見の帽子を奪い取られ、列車に轢かれそうになり、犬に玉を食われそうになったかと思えば、本当にヒルに玉を食われます。

酷い!酷すぎる!

4人もいるのに不幸の独り占め!

だけど、ゴーディは折れなかった。

そういった苦しみを乗り越え、パーティのリーダーがクリスからゴーディに代わるんです。
これは先ほどの焚き火の告白し泣きつくシーンが前フリなんです。

皆がもう帰ろうか、どうしようか、決断出来ないでいる時に、『行こう』と言った彼が下した決断に、皆が従います。

一番弱そうで、もっとも深い闇を抱え、もっとも苦難を乗り越えたゴーディが、成長の結果、皆が運命を委ねるリーダーになった瞬間こそが、さりげないこのシーン。


2つのエンディング

リーダーはピンチに仲間を救うヒーローになります。

考えてみてください、ジャック・バウアーじゃなくてエース達に襲われ、窮地に陥った仲間を助けるのは誰でしたか?

これに表れるように、ゴーディは立派に成長したんです。

冒頭に、ビビって非力で何も出来ず、宝物の兄の形見の帽子を奪われた相手をビビらせて退けるんです。


で、あれだけの大冒険に比べるとあっという間に帰ってきます。

でも、これは上映時間ではなく、ストーリー構成上、絶対に必要な措置なんです。

後半に迎えた、主人公ゴーディの急成長が、ここで完結するんです。

その為に余分なものはもう必要が無い。
苦難を乗り越え、決断を下し、そして仲間のピンチを救った成長物語はひとつの成長の大きさを意味するセリフで、究極に昇華し幕を閉じます。

そして、ここで少年達へ未来を大人へ思い出のあの日を与えてきた主人公が、少年ゴーディから大人のゴーディへ代わるんです。



町が小さく見えた

ちゃんちゃん♪

この大人ゴーディのセリフで思い出の冒険活劇はここで終了します。

子供はここまでを見て~をやってみたい、と感じ、そして大人は~とかやったよな、と感じてきたはずです。

そして、このセリフから先こそが大人だけ共感が出来る、というよりも意味が解かる、実感がある、大人ゴーディと共に、この物語を通じ、自分の少年時代を一緒に振り返ってきた大人の為のエンディングへと突入していくんです。

物書きとなった大人ゴーディが、この少年期の物語を締めくくる為に最後に打つ一文

これはもう反則です。

散々、思い出を引っ張り出されてこの一撃。

もう、はい、そうですねとしか言いようが無い。
抵抗不能。


それぞれ2つのセリフで終わる、2種類の観客へ送るストーリー。

これこそが、意図的に2つの世代の観客を意識して作られたエンディングであり、だからこそ2度見る必要がある映画なんです。



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