♯15 ルアー開発11(特許への道4の4)

前回は、特許取得に際し得た知識や教わった注意点について、全く経験の無い素人が素人目線でまとめた。しかし、同じような情熱を持つ人にとってはこういった文章も役に立つことがあるだろうと残すことにした。
 
さて、結論から言えばアイデアの1つが無事に特許化できた訳であるが、100年以上のスポーツフィッシングの歴史の中で、似たようなことを考える人はやはりいるのである。かつて商品化されていたかどうかも分からないものから、今もバリバリ現役で販売されているものもある。今回は、小生の特許について触れつつ、尊敬の念を込めて諸先輩方の特許を紹介していきたい。
 
「釣れるオリジナリティ」を目指してルアーを作っていた小生は、♯11 ルアー開発7(どうせ作るならこの世にないものを 3の3)で言及したが、バイブレーションのような震える動きがミノーやシンキングペンシルに乗れば、それは間違いなく釣れるルアーになるだろうと考えた。ルアーを震わせるためには、電動という手もあるのだが現実的には難しい。マニュアルで震わせるためには、所謂(いわゆる)バイブレーション形状や、尊敬して止まないローリングベイトやプラムのような形状、その他にブレードジグやBlueBlueのシャルダスといったブレードが必要になる。
 
これ以外にルアーボディを震わせる方法としてどういうものが考えるだろう。
 
1つは、プロペラの1枚を重くする事だった。この偏心プロペラは、ブレードに近い発想で、携帯のバイブレーションを起こす仕組みに通じる。しかし、プロトを使っていて気付いたのは、プロペラの回転方向とは反対にルアーが傾くという問題だった。そこで、ヘリコプターのラジコンを参考に逆回転のプロペラ(二重反転プロペラ)をもう一つ追加した。しかし、こうすると前側のプロペラの影響が大きく出てルアーの傾きが解消できないため後ろ側のプロペラの翼面をより大きくしないといけない。これを思いついたときには凄い発明になるのではと思ったものだが、後の文献調査で、偏心プロペラはメガバスの伊藤さんによって25年以上前に(メガバス引用図8番のペラが非対称になっている)、サイズ違いの二重反転プロペラもシマノによって20年以上も前に特許化されていたのである(シマノ引用図5番と4番のペラがサイズ違いで回転方向が異なる)。

5cvimduydcng48dn48k3-c203f7b7.png 
メガバス特許からの引用図
 
z2r2ugfx7oz9xwntddfu-5f9fb108.png
シマノ特許からの引用図
 
並行して進めてプロジェクトの中に、特許化に成功した偏心水車を用いたルアーがある。回転に伴い振動を生むという点では偏心プロペラに近い発想となるが、回転軸方向が異なる。特許明細の図面が少し分かりにくいが、これは実際のプロトルアーの図面は使わない方が良いということで、特許事務所の方が書き直して下さった(下図)。水車の左右対角線上に重量を配分するなどし、回転に伴い振動が生じるように設計されている。回転に伴い重心位置が変わることから、ルアーボディが作る挙動に不規則性を加える効果もある。また、プロペラと違って左右の膨らみ(断面積)を抑えながら回転体を大きくできるため、振動強度や回転のしやすさを維持しながらボディ内に設置しやすく、震源やそれに伴う重心のブレが生じる位置を調整できる。更に、偏心プロペラや偏心水車が持つ特長は、一転してキャスト時には飛距離に影響を与えてしまうが、ボディ内に設置できることで空気抵抗を軽減する設計が可能となる(水車が偏心していない場合は、見た目に反して空気抵抗の影響はかなり小さい)。まとめると、以下のようなことができる。
  • ボディの動き+振動
  • ボディの動き+不規則さ(重心の揺らぎ)
  • 流れが増す(早く巻く)と振動強度はそのままにピッチが増える
  • 空気抵抗を減らす設計ができる
ykwfhzyzgwya93z6h8ut-c65bae84.png
 
水車を用いたルアーの特許は、他にも幾つか提案されている。
先ず初めに紹介したいのは、ブリーデンのエビのさんぽ。餌木に水車が付いているような形状をしており(リンク先や下図参照)、めっちゃ可愛いルアー。回転する水車がまるで遊泳する海老の足に見えることから着想を得た特許である。本格的に開発を進める前の文献調査の段階では公表されていなかったことから、READHEADのクワバラ氏から似たルアーの特許があったよとの知らせを受けたときはかなり驚いた。他にも魚骨という反転プロペラを用いたルアーが販売されている。開発者の方はかなりの回転マニアとお見受けするので、いつか是非お会いしてお話を伺ってみたい。
g9wxdohns5eyddyhocgo-b42d42c4.png
 
次に紹介するのは、古く1945年に出願されたアメリカの特許。水車を回転させることで生餌の尾びれの波動や水流を生み、音を発生させることのできるルアーということで、水車を持つルアーについて様々な特許が与えられた最初の1つかもしれない(下図)。画像だけを見ると綺麗に泳ぎそうにないが、下部後方のプレートが直立泳動に寄与するとあるので、ある程度浮力のあるボディに対して錘のような機能を担っていたのかもしれない。
nawk982zu32p5hwj5mi5-eafd89b0.png
 
最後は、1975年に特許化されたノベルティ用のクロールするルアー。ボディをアニメなどのキャラクターに変更することが想定されている。一見すると水車とは異なり全く関係ないと思っていたが、回転軸方向が等しく偏心していることから、特許文言に落とし込むと類似技術と判断された。調べてみると、こういった回転体の特許は数多く提案されており、新しく取得は極めて難しい。言い換えると、回転体を持つルアーが良く釣れるということでもあるのだろう。
rfmioo8ctgrxmarmda63-2e5c9709.png
 
このように、遡れば昔から諸先輩方が様々なアイデアで魚(や人?)にアプローチするため、試行錯誤を重ねたアイデアを特許化してきた。既に特許権が切れたものの中には、今では当たり前のように使われている技術があったりして面白い。特許権は、申請日(特許査定後からではない)から20年で期限が切れる。その後は、誰もが自由に利用できるようにすることで、産業の発展が促進されるように定められたルールだ。しかし、どのような特許にも通すにあたっては生みの苦しみがあり、これらの優れたアイデアを利用させていただくときは感謝の気持ちを忘れないでいたい。
 

コメントを見る