【水曜スペシャル】あの国へ パート1

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陰惨だ。


ニュースを見る度に非道な事件を目にする機会が増えた気がする。


ワイドショーのコメンテーター達は、


犯行に及んだ者の生い立ちに触れ愛情云々と語っていたりするが、


愛情が本当にそれらを抑止できるものか甚だ疑わしい。


そこには、ヒューマニティーの欠片も存在しない、


まさにサイコパスの犯行であるかの如き事件の数々。




ワタクシ自身、それ程愛情豊かな家庭で育った訳ではないが、


回りにもそんなヤツラがわんさかいた。


「殺したい」や「殺してやる」等を口にすれど、


それを実行する人間などいもしなかった。


倫理などを語るつもりもないし、


そんなものが備わっていたとも思わないが、


幼くたって「命は大事」という事だけは、教わるまでもなく


本能的に自分たちの精神に宿っていたはずである。




昔でも、このような凄惨極まる事件は有ったとは思うが、


これほどまでに猟奇的な事件が多かったとは思えない。




恐ろしい世の中になったもんだ。




しかしこのような事件を起こす者たちに教育や愛情で命の価値がわかるのか疑問だし、


ワタクシ自身、どれくらい命の価値が分かっているのか不明だ。


「なぜ人が人を殺してはいけないのか、明確に答えろ」


もしこの者たちにこう迫られたらどう答えればいいかもわからない。


法律で決まっているからだ、などと返そうものならば、


間違いなく鼻で笑われる事だろう。




こんな異様な考え事なんかするからだ・・・頭が痛い。


ワタクシは気を紛らわせようとハンドルを握り、アクセルを吹かした。


程良く疾走を感じるスピードでハイウェイを飛ばしたら幾分気が紛れた。


家を出て5時間になろうとしていた。


気が付けばオオスミン国にいた。


時計がAM4時を告げていた。




少し朝が早い気もするが電話を掛けると直ぐ、


オオスミン国でも指折りのシェルパ、たろう氏の声が聞こえた。


ワタクシが「近くに寄った時には電話をくれと言われていたので・・・」


そう告げると予期せぬ明るい声で


「ナイスタイミングです♪ 丁度船に乗る準備をしていたんです、直ぐに来てください」と言われた。


たろう氏は本日、本業の登山ガイドの仕事が無い為、


国王のレクレーションに付き合い、趣味の魚釣りに行く所だった。




ワタクシにも丁度良かった。


先日の釣行の道具を車に積んだままだったから。




港に伺い、国王とたろう氏に合流した。


他の釣り客とまざり、しばし情報交換。




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船に乗り込み、先ずは国王を写真に撮った。


国王のカリスマ性はもはや拳王の闘気と同等にその身から滲み出しているのだが、


あふれ出ているカリスマ性と同レベルの目立ちたがり屋の性分も、


隠しようがないくらい表に発散されている。


彼の機嫌を損ねると後々厄介になる事は十分学んでいたので、


先ずは写真をとってあげてヘソを曲げぬ細工を施した。


しかしながら溢れだす目立ちたがり屋の性分がレンズに纏わりつくせいで、


綺麗な写真にはならなかった。




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良く潮の通る磯に3人で降りた。


この男、容赦無し。




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準備が整い、投げたそばから直ぐさま魚を掛ける。




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闘う。




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アゲる、容赦無し。




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アゲる、容赦無し。




せっかくのブツ持ち写真も、


自分より魚が目立つ事が気に食わないらしい。


ブツ持ちも、




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魚を後ろにさげて写る容赦無しっぷり。




気が付けばたろう氏の姿が見当たらない。


あたりを見回すと、居た。




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あのアホウは・・・モトイ、あの男は崖の上にいた。


一流のシェルパという肩書はたろう氏を、


崖を見たら登らずにはいられない生き物へと変えたらしい。




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良い子の皆は、決してあのアホウの・・モトイ、


たろうちゃんのマネしないようにね (≧∇≦)ノ




一通り崖のぼりを済ませ、降りてきたこの男もやはり容赦無い。




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アゲる。




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肌を整える。




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アゲる。




肌を整える意味は解らないが、やはりこの男、


まーまー釣りがうまい。




ワタクシもルアーを投げた。


あそこならば魚もおるまいと思う所へエンゼルキッスを飛ばした。


こんな時に限ってエンゼルキッスは良い働きをしやがる。


一投目からワタクシの元へハガツオを連れてきやがった。




ワタクシは声をあげた。




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洞察力に長けた皆様ならば既にお見通しだと思うが、


滅多に魚らしい魚が釣れなかったもんだから、


速攻でこんな立派なハガツオが釣れた事が嬉しくてたまらずに


ついつい歓喜の大声を張り上げちゃった(はーと)の図、では無く、


これはワタクシの魂が哭いている画なのだ!


無碍に生き物を傷付けてしまった事を、


心の底から嘆いているのだ!




ワタクシの事を知る人達においては既に認知された話であるが、


ワタクシは慈愛に満ちた博愛主義者である。


生き物を無暗に傷つけたりはしないのだ。


釣竿を手にして水辺に立っていても、


的確に魚がいない所を見分け、ルアーをキャストする。


魚を釣る事を禁じ手としている釣り師なのである。


大事な所なので強調させていただくが、


釣りきらないのではない、釣ってないだけなのである。




そんなワタクシが魚を釣ってしまった。


2レンチャンで。




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慟哭する顔の筋肉の動きは、


笑顔を作る筋肉の動きに等しいと誰かが言っていたが、


やはりワタクシの慟哭も見方によると笑顔のようにも見えるようだという事と、


マリア エンゼルキッスは危険な程、魚を釣らせるという事がよく分かった。




自らの行動を肯定する事が出来ず苦悶の表情を浮かべているワタクシに


国王が問いかけた。


「何を躊躇しておる?」


「このように魚が釣れてしまう状況で釣りをするのが苦痛でございます」


「なぜ?」


「そ・・・それは・・・ワタクシが博愛の精神を持つ者だからです」


次の瞬間、声を張り上げて国王は笑った。


「がはははは!!!貴殿が博愛だと?こりゃ傑作だ!」


流石にカチンときた。いくら国王でもそりゃ失礼というもんだ。


しかし続く言葉を聞いてワタクシは何も言えなくなった。


「生きとし生けるものを愛し許す博愛はとても尊い、


だが貴殿はどうだ?己さえ許せずにいる人間のどこが博愛だと言うのだ?」




黙って釣り座に戻り竿を振る国王をただぼーっと見つめていた。


彼は相変わらず容赦無く「釣る」。




「今は魚を釣る時だ。釣って良い時だ。釣れ」と、







この顔は、
















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語っていた。





























この顔は。









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第2部へ つづく・・・

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