自画自賛

  • ジャンル:日記/一般

 普段、街を歩いていて、ショーウィンドウに映った自分の姿に愕然とすることがある。何という醜さであろうか!足は短いし、いつの間にかこんなに太ってしまっている。
 自分の身体ながら嫌悪を覚える。普段、容姿に拘りなどはないが、実際に目の当たりにするとやはりヘコむ。
 

 ところが、夕方、家族で天神の街を歩いていて、ショーウィンドウに映った自分の姿を見て「美しい」と思った。眠ってしまった息子を横抱きにしていたのだが、その姿に隙はなく、澄みきった冬の湖のようであった。まさに自然体である。

 私はしばし足を止め、ガラスに映った自分の姿に見惚れていた。

 そんな私を見て、数メートル先を歩くヨメが眉間に皺を寄せ、何事かと引き返してきた。
 

 「なに、これ買ってくれるの?」
 

 よく見れば、そこにはブランド物のバッグが陳列されている。
 

 「美しいと思わないか?」
 

 「趣味じゃないけど、買ってくれるなら、それはそれで嬉しいよ」
 

 「いやいや、俺!」
 

 「はぁ?」
 

 「子供を抱く俺の姿だよ」
 

 「・・・・・」
 

 「何と言うか、剣を子供に持ち替えた剣豪って、こんな感じだろな」
 

 「・・・・・」 
 

 「俺は、今日、生まれて初めて、自分で自分を美しいと思ったよ。子供を抱かせたら、俺は日本一美しいかもしれないな」
 

 「行くよ」
 

 ヨメは無視して歩き始めた。私は、もう少し美しい自分を眺めていたかったが、そうもしていられないようだ。街行く人たちからの視線を感じる( ̄ー ̄)


 「なあ、美しいだろ、俺?」
 

 歩きながら、私は尚も質問を繰り返した。
 

 「・・・・・」
 

 「おい、聞いているのか?」
 

 「・・・・・」
 

 ヨメは相手にしないことにしたらしい。子供を抱く俺の姿があまりにも美しくし過ぎて嫉妬しているようだ。
 

 「ねえ、パパは美しいだろ?」
 

 私は矛先を娘に替えた。
 

 「うん!」
 

 さすがに素直である。良いお返事だ!
 

 その時、ヨメが嫌悪を顔中に滲ませて振り返った。

 「さっきから言おうと思ってたんだけど、チャック開いてるんですけど!」

 

 

 あっ!ホントだ( ̄□ ̄;)!!

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