プロフィール

るりたん

広島県

プロフィール詳細

カレンダー

<< 2025/5 >>

1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

検索

:

タグ

タグは未登録です。

ジャンル

アクセスカウンター

  • 今日のアクセス:3
  • 昨日のアクセス:0
  • 総アクセス数:7042

QRコード

対象魚

キャスティング理論

  • ジャンル:日記/一般
釣りにおける投げて遠くへ飛ばすという動作、通称キャスティング、そのメカニズムと遠くに飛ばすためにはどうしたら良いのかについて物理学的な考察をしてみたいと思う。

最終的な目的であるオモリ(様々な仕掛けを統括してオモリと称した)を遠くに飛ばすためにはどうしたら良いのか。
三次元的にそれぞれが自由な運動をするロッドとラインとその先に結ばれたオモリ、それらの運動一つ一つを考察することは非常に困難であるが、エネルギーという概念で考えるとその考察は幾分か単純化される。
ロッド、リール、ライン、ラインに結ばれたオモリの4つをまとめて一つの系と見て考える。
キャスティングにおいてまず大切なのは、リリースの瞬間までに系の持つエネルギーをどれだけ上昇させることが出来るかということである。

系の持つエネルギーを上昇させるのは、仕事というエネルギーである。
仕事には並進運動を誘発する仕事と、回転運動を誘発する仕事がある。
どちらの仕事においても、仕事とは系に対して外力を加えることで与えられる。
系に対して人間が力を加えることが出来るのは、系との唯一の接点であるロッドだけである。
つまりロッドに対していかに多くの仕事を与えられるかが、系のエネルギーを上昇させる上で重要となる。
まず並進運動を誘発する仕事について考察する。
並進運動とはキャスティングでいうとロッドを平行移動させる運動である。
この仕事の値は、人間がロッドに加えた力ベクトルのうち、ロッドの移動方向と同じ成分と、ロッドの移動距離の積で求められる。
つまりこの並進運動に関する仕事をより多く与えるためには、ロッドの移動方向と同じ向きにより大きな力を加えてより多くの距離を並進運動させる必要がある。
次に回転運動を誘発する仕事について考察する。
キャスティングでいう回転運動とは、ある回転中心回りにロッドが回転運動をすることである。
通常の場合、スイング中の回転中心はリールシートとグリップエンドの間にある。
この仕事の値は、力点と回転中心の距離と、外力のうちロッドの軸線に対して垂直方向の成分と、ロッドを回転させた角度の積で求められる。
つまりこの回転運動に関する仕事をより多く与えるためには、ロッドの回転中心を力点である右手と左手からより遠い位置に持っていき、その回転中心に対して右手は押し出し左手は引き込むような大きな力を加え、ロッドを多くの角度回転させる必要がある。
つまり自分の筋肉が最大限のパフォーマンスを発揮出来る範囲内で、リールシートからグリップエンドまでの距離が長いロッドを使うことで、よりロッドに対して多くの仕事を与えることが出来る。
また、右手に強い力を加えているときは回転中心をグリップエンド側にずらし、左手に強い力を加えているときは回転中心をリールシート側にずらすことで、よりロッドに対して多くの仕事を与えることが出来る。

また人間の筋肉があるものを強い力で押そうとするためには、押したい方向とは逆向きに押し返そうとする強い力が必要になる。
この力を抗力と呼ぶことにする。
キャスティングにおける抗力とは、ロッドを曲げた際に生じる反発力や、ロッドそのものに働く空気抵抗などのことである。
この抗力に逆らいながら、スイング中常にロッドに力を加え続けて投げることで、系の持つエネルギーはどんどん上昇する。
抗力が強ければ強いほど、人間の筋肉は押し返されまいと大きな力を発揮する。
そして人間の筋肉がより大きな力を発揮するためには、全身の筋肉をより効率良く使わなければならない。
下半身から腰へ、腰から上半身へ、肩へ腕へ、そして最終的には手へと、下から上へパワーを伝えていくのである。

ここからは先は系の要素一つ一つに分解して考えていく。
上記の仕事によって上昇した系のエネルギーは、キャスティングの途中過程において、ロッドが曲がることにより蓄えられる歪みエネルギーと、タックル(ロッドとリールを合わせたもの)の運動エネルギーと、オモリの運動エネルギーと、系の重力ポテンシャルに振り分けられる。
ラインのエネルギーに関しては微量なのでここでは無視する。
キャスティングの仕方などによってこのエネルギーの振り分けられ方は異なる。
どんな投げ方をしようと、リリース直前にロッドに蓄えられた歪みエネルギーは解放され、オモリの運動エネルギーへと加算されることになる。
オモリの飛距離を決める一つの指標となるのがこのリリース時にオモリが持つ運動エネルギーである。
タックルの運動エネルギーは、最終的なオモリの運動エネルギーに寄与することはないため、このエネルギーの無駄を抑えることで、より多くのエネルギーをロッドの歪みエネルギーとオモリの運動エネルギーに振り分けることが出来る。
タックルの運動エネルギーは平行移動する速度に準ずる運動エネルギーと、回転中心周りで回転する角速度に準ずる回転エネルギーに分けることが出来る。
回転エネルギーは、回転の角速度が同じ場合、回転中心と重心との距離が近いほど小さくなる。
タックルの回転エネルギーを抑えるためには、スイングの回転中心をタックルの重心(リールシートとバットの間)になるべく近い位置に持っていく必要がある。
つまり回転中心をタックルの重心に一番近い位置(リールシートあたり)に固定してスイングするのが一番タックルの回転エネルギーを抑えられる。
しかし、これはロッドに対して与える仕事との兼ね合いも考えなければならない。
より多くの仕事を与えなければ系のエネルギーを稼ぐことは出来ない。
実際に回転中心をリールシートの位置に固定してスイングしようとすると、右手は手首の力しか使うことが出来ず、それでは大きな力を加えることが出来ない。
ロッドに対して回転運動をさせるような大きな仕事を与えつつ、この回転運動による回転エネルギーを抑えなければならない。
また、ロッドに対して並進運動をさせるような大きな仕事を与えつつ、この並進運動による運動エネルギーを抑えなければならない。
これらの事実は相反している。
では実際に一番効率の良いスイングとはどのようなものか。
これは各人の筋肉の付き方やタックルにも依存するため、これが正解とは言えないところがある。
一つの解答としては、ロッドの回転中心をグリップエンド側からリールシート側にスムーズに移行させながら、後述する重力ポテンシャルを利用して上から下に振り下ろすようなスイングは、エネルギー的に効率が良いといえる。

少し前述したが、スイングの開始から終わりにかけて、系の重力ポテンシャルが減るようにスイングすることで、より効率的にエネルギーを利用出来る。
例えばロッドを高い位置から低い位置へ振り下ろすようにスイングすると、その重力ポテンシャルの変化分を他のエネルギーに振り分けることが出来る。
逆を言えば、ロッドを低い位置から高い位置へ振り上げるようにスイングすると、エネルギーの一部がロッドの重力ポテンシャルを増加させるために消費されることになり、その分だけエネルギーをロスすることになる。

ここから先は、キャスティング過程における様々なエネルギーのロスについて考察していく。
系のエネルギーが上昇した際に、そのエネルギーの一部が上記したタックルの運動エネルギーを始め、オモリの姿勢が乱れることに起因する回転エネルギーやロッドの捻れに起因する歪みエネルギー、熱エネルギーや音エネルギーなど、無駄な部分に消費される。
もしくは空気抵抗などの外力により系が負の仕事をされることで、系の持つエネルギーは減少する。
それらは飛距離を伸ばす上でエネルギーのロスと考えることが出来る。

一つ目のエネルギーロスとして、ロッドの内部摩擦によるロスが挙げられる。
端的に言うと、ロッドを曲げて歪みエネルギーを蓄え、その歪みエネルギーが最終的に解放されるというサイクルの中で、一部が熱エネルギーとして発散されるというものである。
ロッドというのは弾性と粘性を合わせ持つ粘弾性体と呼ばれるもので、この粘性度合いが高いほど内部摩擦によるエネルギーロスは大きい。
粘弾性を弾性要素と粘性要素に分解して考えてみる。
最終的にオモリの運動エネルギーを増加させるのに寄与するのは弾性のみであり、粘性はエネルギーのロスの原因となる。
一般的に粘性が高いほど、力を加えてからその力に応じた歪みを生じるまでに遅れが生じる。
ロッドで言うと、粘性が高いほどラインテンションの変化に対しての曲がりの追従が遅い。
またこの内部摩擦によるエネルギーロスはロッドを曲げれば曲げるほど大きくなる。
ロッドのパワーに対してオモリが空気抵抗の大きさも含めて重すぎる場合、ロッドは過剰に曲がり、この内部摩擦によるエネルギーロスが大きくなる。
ロッドのパワーに対してオモリが重すぎると飛ばない主な原因はこれである。
つまり少ない曲がりで大きな歪みエネルギーを蓄えられ、粘性によるエネルギーの発散が少ないロッドほど距離は伸びる。

二つ目のエネルギーロスとして、空気抵抗により系が負の仕事をされることによるエネルギーロスが挙げられる。
ロッドやリール、ラインやオモリ、体積を持つものが空気中で速度を持ち運動する際には、空気の粘性による空気抵抗が生じる。
この空気抵抗は、物体の速度の2乗、空気密度、進行方向への投影面積、物体の形状で決まる空気抵抗係数、これらに比例する。
物体の速度が速いほど、高気圧下ほど、進行方向に対して見た際に太い物体ほど、空気抵抗係数の高い形状ほど、より大きな空気抵抗を受ける。
より大きな空気抵抗を受けるほど、そしてその空気抵抗を受けながら物体がより長い距離を移動するほど、そのエネルギーロスは大きい。
ここで注意しなければならないのは、ロッドに対して多くの仕事を与えることと、空気抵抗によるエネルギーロスを抑えることは、相反するということである。
ロッドにより多くの仕事を与えるためには、並進運動においてはスイング軌道をより長く、回転運動においては回転角をより大きくする必要がある。
また空気抵抗によるエネルギーロスは、速度や形状などに依存する空気抵抗の値と移動した距離の積で求められる。
つまり空気抵抗によるエネルギーロスは、スイングにおける並進移動距離や回転角が大きいほど大きくなり、これはロッドにより多くの仕事を与えることと相反する。
ここでロッドに対して与える仕事について再考してみる。
この仕事の値は投げ手の筋肉がロッドを押す力の値とロッドの移動距離の積である。
投げ手の筋肉がロッドを押す力は、ロッドを通して手に伝わる、系の持つ抗力に依存する。
系の持つ抗力とは、ロッドが曲がることによる反発力や、前述した空気抵抗のことである。
この抗力の値が大きくなるほど、投げ手の筋肉がロッドを押す力は増大する。
そして抗力が投げ手の最大筋力を上回った時点で、それ以上ロッドを押す力が増えることはない。
つまり、投げ手の筋力に余裕がある状態では、空気抵抗の分だけ真空状態より強い力で押し返していることとなり、ロッドに与える仕事は大きくなる。
その状態においてはエネルギーのプラスマイナスはゼロであるので、空気抵抗によるロスを考慮する必要が無くなる。
逆に、投げ手の筋力に余裕が無い場合、つまりスイング中に系の抗力が投げ手の最大筋力を上回る場合は、空気抵抗によるエネルギーロスが生じる。
このような場合には、太さ以外の要素が同じなら細いロッドほど、長さ以外の要素が同じなら短いロッドほど、このエネルギーロスを少なくすることが出来る。
もしくはスイングにおけるロッドの平行移動距離や回転角を抑え、抗力が自分の最大筋力を上回る状態でスイングする距離を少なくすることで、空気抵抗によるエネルギーロスを少なくすることが出来る。

その他のエネルギーロスとして、キャストの際に音が鳴ることによるエネルギーロス、リリース後にティップが振動することによるエネルギーロス、ロッドが捻れることによるエネルギーロス、スイングプレーンが乱れることによるエネルギーロス、スイング中にオモリの姿勢が乱れることによるエネルギーロスなどがある。
それらを抑えるためには、なるべく大きな音が鳴らないようなキャストを心がけ、リリース後のティップの振動の振幅をより小さくし、またその振動をより素早く収束させ、スイングの際にロッドを捻らないように真っ直ぐ振り、スイングプレーンの乱れなく一定面内を滑らすようなスイング軌道を心がけ、姿勢の崩れやすいオモリほどスムーズな加速を心がけるなどする必要がある。


リリースするまでのエネルギーのやり取りの末、それらの総和のエネルギーがオモリの運動エネルギーとなり、オモリは放出される。
リリース時のオモリの運動エネルギーが決まれば、あとは飛行中における様々なエネルギーロスの大小により最終的な飛距離が決まる。
このエネルギーロスには、オモリやラインが飛行中に受ける空気抵抗によるエネルギーロス、オモリの飛行姿勢が乱れ運動エネルギーの一部が回転エネルギーに消費されることによるエネルギーロス、リールからラインが引き出される際のスプールエッジ(ベイトリールでいうとレベルワインダー)との摩擦やガイドをラインが通る際の摩擦によるエネルギーロス、飛行中のオモリの運動エネルギーがベイトリールのスプールを回すための回転エネルギーに消費される際のエネルギーロス、過剰なブレーキをかけた際のエネルギーロス、飛行中のオモリの重力ポテンシャルの変化などがある。

結論を述べると、ロッドに対してより多くの仕事を与え、系の持つエネルギーをより大きく上昇させ、そのエネルギーがオモリの運動エネルギーへと変換される際のエネルギーロスをいかに抑え、またリリース後のオモリの運動エネルギーのロスをいかに抑えるかということが、キャスティングの効率を上げて飛距離を伸ばすために大切ということになる。

コメントを見る