【狐火日誌】対岸からのダメ出し

　先日の、バラシの嵐の後、貪欲な私は考えた。小さくても釣り上げたい！

　そこで、一人作戦会議。　パラボリックなロッドで何よりもまず、はじかなくする。掛けたら、きつめのドラグで、とにかく巻く、巻く、巻く。

　河川に到着。上げ潮のため、ゆるーい流れ。水面にベイトの気配少なし。

　とりあえず、上げ潮の合間に流れが速くなる時を狙い、７０ｍｍのシャッドを投げる。はいヒット。ぐりぐりぐりぐり。作戦成功！　　３０ｃｍ・・・

　しばらく、様子をみる。

　すると、対岸１００ｍ程先に、ヘッドライトが二つ。

　そのうちの一人の声がやたらにでかく、話の内容が全部聞こえる。

　職業は大きな声を出すしごとであろうか。あるいは戦場にいた人か。

　　「僕は、ヘッドライトつけっぱなしです。これで大丈夫です。」

　（えっ、そうなの。　過去に、藻屑蟹のカゴを仕掛けるため、ライトで川面を照らしながら、近づいてきたおっちゃんに、「釣れるかい」と聞かれ、「ライトで照らされるから、釣れへんわ」と毒づき、「すまんなあ」と謝罪されるような、大人げない私と比べると、なんと豪胆な人だ。　勉強になるなあ。）

　　「僕が、以前ガイドしたときは８７ｃｍを釣らせてあげました。」

　（なんて、寛大な人なんだ。そんなん、釣らせていただけるなら、ここから泳いで
　対岸行きます。ガイド、してください。）

　　バシャ　バシャ　
　
　　「やったあ。つれましたね。ゆっくり、慌てずに。僕がすくいます。」

　（数投で釣れてるやん。ガイドの「凄腕」ちゃうか。しかも、優しいやん。）

　　「ロッドはアピア！　アピアの竿なら間違いがないですよ。」

　（アピアさん！　ここに、めっちゃ釣り場で声のでかい。コストのかからない営業
　　宣伝マンいますよ。）

　と、２０分程、何もせず、話を聞いて、タバコを二本吸い終わり、対岸に負けじとキャスト。

　一投目でヒット。　　　ぐりぐり。エラ洗い。ぐりぐり。エラ洗い。ぐりぐり。キャッチ。

　どや、俺！　４７ｃｍでも、いや、小さいからこそ、作戦成功！

　（対岸の人、こちらも、釣れましたよぉー。）　

　すると・・・　１００ｍ先にて。

　「あんなに、巻いたらいけません。無理に巻くような奴は、アホです。」

　（ガーーン。　すみません。　今日は本当に、勉強になるなあ。）

　
　六十にして、耳　順（したが）い・・・　（論語　為政編）
　私（孔子）は６０歳になり、人の言うことを素直に聞けるようになり・・・